社内リソースよりも便利なAWS
クラウドを用意するのは誰? Amazonに太刀打ちできない社内IT部門
Amazonに代表されるクラウドプロバイダーが登場した結果、社内のIT部門がその攻勢に太刀打ちできない企業が出てきた。さらに、IT管理者の業務(予算)を奪う事態にもつながっているという。
仮想化技術のおかげで、ハードウェアのプロビジョニングよりも容易に新しいリソースを追加できて、ダウンタイムも最小限で済むようになった。だが、ビジネスが求めるものとIT部門が提供できるものとの間に断絶が存在することが多い。
「仮想マシン(VM)を20分で配備可能」といった派手な宣伝文句を掲げるベンダーは少なくない。ただ残念なことに、現実にはその通りにはいかないことが多い。VMを配備するのに長い時間がかかるのが普通だ。承認を取り付けたり、コストを配分したりするなどの煩雑な作業を伴うからだ。ベンダーの約束通りにならなかった場合、ビジネス部門のリーダーたちの不満はIT部門に向かうことになる。
エラスティックコンピューティングモデル(一般にはクラウドコンピューティングと呼ばれる)は、こうした問題に対処するために、短時間でVMのプロビジョニングを行う必要性から生まれた。この分野にいち早く参入した米Amazonは、同社のエラスティックコンピューティングモデルで業界に大きな変革をもたらした。このモデルでは、企業は使用した容量とリソースの代価を払うだけでよい。
※エラスティック(英語のelastic):順応性のある、伸縮性のある、という意味。コンピューティングの分野では、拡張性や障害復旧能力を有することもいう。
VMwareやMicrosoftによる“Amazon包囲網”も
Amazonのような企業への対抗を目指す米VMwareや米Microsoftなど数社のベンダーは、それぞれ独自のプライベートクラウドあるいはハイブリッドクラウド製品と管理ソフトウェアを開発した。VMwareは2012年に米DynamicOpsを買収し、同社の製品を「VMware vCloud Automation Center(vCAC)」というブランドに変更した。vCACには2つのコンセプトがある。
第1のコンセプトは、企業(IT部門だけに限らない)がビジネスの要求に合わせた効率的な方法で、定義済みのサーバをオンデマンドでプロビジョニングすることを可能にすることだ。もう1つのコンセプトは、リソースの割り当てをオンデマンドで調整できるエラスティックコンピューティング方式により、総合コストの削減に貢献するというものだ。
拡大・縮小が可能な真のエラスティック環境では、VMを使い捨てできる。VMに障害が起きれば、それを廃棄して新たに構築すればいいのだ。真のエラスティック環境では、新たなインスタンスを作成するよりも仮想マシンを修正する方がはるかに時間がかかる。
VMwareなどの企業が提供するエラスティック環境を利用するには、ステートレスなアプリケーションを作成する必要がある。ステートレスなアプリケーションとは、動作中にデータをサーバに一切残さないアプリケーションである。VMがダウンした場合は、新しいVMを引き出して作業を継続できる。
vCACで特に注目すべき点はハイパーバイザーの種類に依存しないことであり、米Citrix Systemsなど他の数社のメーカーのハイパーバイザーにも対応する。多数の改善と新機能を盛り込んだvCACの新バージョンは早いペースでリリースされている。
では、vCACのどこがすごいのだろうか。簡単にいえば、vCACは“ビジネス部門用のクラウド”を作成できることだ。ビジネス部門が求めるものとIT部門が提供できるものとの間の断絶を取り除くのである。要するに、ビジネス部門がサービスの配備、およびコストとハードウェアの管理に関与できるようになるということだ。
vCACは、「ワークフローの設定を通じてVMが増殖する」という従来の問題にも対処する。ワークフローは各VMに対して監査証跡を作成するため、ビジネスマネジャーはワークフローを使って各VMを承認できる。さらに重要だと思われるのは、vCACは単独で機能するため、管理者やサーバ、承認ワークフローおよびネットワークを各業務部門が独自に置けるということだ。すなわち、各業務部門は仮想化された専用のエラスティックコンピューティング環境をいつでも利用できるのだ。
だがこのエラスティック性は無料ではない。その広範な普及には幾つかの障害がある。1つは価格だ。加えて、非常に複雑な製品でもある。自社の業務環境に適合するようにセットアップするには何カ月もかかる可能性がある。
エラスティックコンピューティングはIT部門にとって痛しかゆしだといえる。うまく導入すれば、IT部門はビジネスニーズに柔軟に対応できるようになる。だが、既にオンデマンド型エラスティックコンピューティング環境を完成させたAmazonなどのクラウドプロバイダーに社内のIT部門が太刀打ちできない理由でもある。
大企業では、「ITの即応性を高める必要があり、新しいサーバのプロビジョニングに何週間も待たされるのはおかしい」ということをようやく理解し始めた段階だ。Amazonなどのクラウドプロバイダーは、わずか数分で実稼働インスタンスをセットアップできる。とはいえ、社内にIT環境があるというのは、ビジネス部門が必要に応じて用途を変更できる専用のリソースを持っているということでもある。
企業はそのうち、「エラスティックコンピューティングが必要かどうか」よりも、「社内のIT部門がそれを提供できるか(あるいはすべきか)」を考えるようになるだろう。ITマネジャーは自社がその段階に達する前に、vCACのようなエラスティックコンピューティングモデルを配備することを検討しなければならない。さもないと、IT予算(さらには自分の仕事)がパブリッククラウドプロバイダーに奪われることになりかねない。
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