安いだけじゃないそのメリット
キーパーソンが語る「クラウドERPを選ぶ理由」
ユーザー企業の間で勢いを増す「クラウドERP」。クラウド業界のキーパーソンがそのメリットを語った。
「ERPベンダーも知らないうちに、ユーザーがERPをクラウドに乗せている。クラウドに乗り遅れてはいけないという強い危機感がある」。2014年4月に開催されたスーパーストリームのパートナー総会で同社 マーケティング企画部 部長の山田 誠氏はこう訴えた。オンプレミスが当然だったERPにクラウドの波が来て数年。ユーザー企業にとってクラウドERPは当然の選択肢になりつつある。クラウド業界のキーパーソンが語ったクラウドERPのメリットを紹介する。
基幹系システムにもメリット
クラウドERPは従来、決まった構成のアプリケーションを使うSaaS(Software as a Service)型が多かった。しかし、ビジネスに合わせた構成変更が難しいSaaSのERPでは、ユーザー企業のニーズに答えることが難しい。そのため独自の業務プロセスを持つことが多い中堅以上の規模の企業に広がりにくかった。それが変わり始めたのは「Amazon Web Services」(AWS)をはじめとするIaaS(Infrastructure as a Service)の登場がきっかけだ。IaaSの低価格化と信頼性向上、メニューの多様化などによってクラウドERPの使いやすさが一気に増した。パブリッククラウドでありながら自社の専用環境のように使うことができる「仮想プライベートクラウド」や国内データセンターが用意され、企業が安心してERPを運用できる環境も整ってきた。ERPの既存のライセンスをクラウドに持ち込むことも可能で、企業は純粋にインフラコストとその運用管理コストを下げることができるようになった。
スーパーストリームのパートナー総会には、アマゾン データ サービス ジャパンの技術本部 技術本部長 玉川 憲氏が登壇し、AWSを使ったクラウドERPの現状を説明した。
玉川氏は、「AWSはインフラを素早く用意できるので、スタートアップ企業や中小企業など、新しいビジネスを迅速に立ち上げる必要がある企業に一番向いていると思われていた。われわれもそう思っていた」とAWSの提供開始当時を振り返る。ただ、クラウドの信頼性が評価されて、大企業の基幹系システムでも次第に使われるようになってきた。「大量のインフラが用意され、複数のデータセンターで運用するので冗長化も容易。ハードウェアの保守切れを心配することがない。クラウドは実は基幹系システムにもメリットのあることが分かってきた」
AWSでは、基幹系システムの中でも特にERPでの利用が多いという。国内では既にスーパーストリームの「SuperStream-NX」の他、SAPジャパンの「SAP ERP」やワークスアプリケーションズの「COMPANY」など多数のERPの本番稼働実績があり、“ERP on AWS”はユーザー企業にとって有効な選択肢になったといえる。「基幹系の中でも“F1”のような存在のERPが動くならどうして他のビジネスアプリケーションが動かせられないのかと、他のアプリケーションをAWSで稼働させるケースも増えている」
クラウドERPの利用が進む一方で、企業の情報システム構築をこれまで担ってきたシステムインテグレーター(SIer)はそのビジネスモデルの変更が迫られている。ただ、玉川氏は「AWSはインフラという手間の掛かるところを担当する。一方、上位のアプリケーションやミドルウェア、OSの実装はAWSではできない。顧客が求める実装を行うにはSIerの存在が非常に重要」と述べ、パートナー企業との協力を強調した。
「今までITはコスト削減や手順の自動化という文脈で語られることが多かったが、クラウドが出てきたことで、スーパーコンピュータの高い計算能力や、リアルタイム解析などのITの能力をユーザー企業が得られるようになった。これまでITの制約でできなかったことができるようになるとユーザー企業が気付きつつある。そのブルーオーシャンをパートナー企業と一緒に開拓したい」
重要になるクラウドインテグレーション
同じく登壇したセールスフォース・ドットコム 専務執行役員の保科 実氏は、「クラウドはCRMなどのフロントのアプリケーションから使われはじめたが、この波は明らかにERPまで押し寄せてきている」と話した。
加えてSIerについては「クラウドを否定することはできない。必ず来るものと受け入れて、自分たちがどこに進むかを真剣に考えるべき時代になっている」と指摘した。「(SIerは)クラウドをどう活用するかというクラウドインテグレーションや、ビジネスコンサルティングの分野にシフトしつつある」
スーパーストリームは既にパブリッククラウド(SaaS)、プライベートクラウドでのSuperStream-NXの提供を始めている。パートナー総会では加えて、SalesforceとマッシュアップしたSuperStream-NXのデモを披露した。オンプレミスとのデータ連携は同社の「Connect」を活用。「夏までにはいろいろと案内ができる」(山田氏)として、積極的にクラウド化を推進する方針を強調した。
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