モバイルアプリ管理(MAM)の可能性
スマホ用“わがままアプリストア”導入のススメ
モバイルの浸透が進む中、企業のIT部門は、セキュアで使い勝手が良く、わがままの言えるアプリ管理の方法を模索している。エンタープライズアプリストアの導入やプライベートクラウドベースの活用は有力な選択肢だ。
モバイルデバイスが職場に浸透しつつある中、IT部門は、従業員が仕事に必要とするアプリケーションやサービスを提供し、管理するための方法を確立する必要に迫られている。
企業の中には、米Dropboxのファイル管理共有サービスなど、既存のコンシューマーサービスを利用してビジネスニーズに対応しようとしているところもある。その場合、従業員は米Googleの「Google Play」や米Appleの「App Store」、あるいは他のパブリックマーケットプレースにアクセスし、モバイルデバイスに「Dropbox」アプリをダウンロードするだけでよい。ただし、このアプローチには難点がある。機密性の高い企業データをリスクにさらすことになるだけでなく、従業員が実際に業務でアプリをどう利用しているかについてIT部門は十分に管理、監視できない。実際、コンシューマーサービスの中にはエンタープライズレベルの代替サービス(「Dropbox for Business」など)を提供しているところもある。だが、そうしたサービスでさえ、セキュリティや管理面におけるIT部門の懸念を解消できてはいない。
こうした理由から、モバイルアプリの配布、サービスの提供や管理に関して、多くの企業は、エンタープライズアプリストアの導入や、プライベートクラウドベースのモバイルサービス、Webベースのアプリ構築、あるいは仮想モバイルデスクトップの実装など、さまざまなアプローチを検討している。
わがままが言えるアプリストア
エンタープライズアプリストアは、ユーザーがIT部門に認証されたアプリを選び、ダウンロードできるモバイルアプリ配布プラットフォームだ。しかし、アプリストアは単なるオンラインカタログではない。エンタープライズアプリストアは一般的に、IT部門がアプリの安全性を確保し、コンプライアンスやデータガバナンス、一括購入やライセンスに関する問題を監視するなど、より大きなモバイルアプリケーション管理(MAM)戦略の一端を担うものとなる。また、エンタープライズアプリストアは、コンシューマーアプリストアと同じようにユーザーのフィードバックや品質管理のためのフォーラムも提供する。
もっとも、プライベートアプリストアの構築は、簡単なことではない。こうしたアプリストアは、モバイルアプリの配布から利用状況の追跡、古いアプリの削除、バージョン管理まで、アプリケーションのライフサイクル全体を制御し、監視しなければならない。こうしたシステムの実装および保守には膨大なリソースが必要になる。
一方、条件次第では、企業もパブリックアプリストアに依存することは可能だが、その場合、ある程度制約を受けることになる。例えば、AppleのApp StoreはiOSデバイスしかサポートしていないし、IT部門が自社システムと同等の制御レベルを求めることはできない。いずれにせよ、プライベートアプリストアでも、もしパブリックアプリストアのサービスが必要ならば、プライベートとパブリックのアプリストアを連係しておかなければならない。
エンタープライズアプリストアの導入には、幾つかの選択肢がある。まずは、米StrongLoopの「StrongNode」や米Appceleratorの「Titanium Studio」など、どの開発ツールを利用するか。次に、アプリストアをホスティングする場所を社内にするか、それともPaaS(Platform as a Service)をホスティングするクラウドプロバイダーに任せるか。
一方、出来合いのMAMツールを購入して、社内でホスティングするか、またはPaaSプロバイダーを利用することも可能だ。米Symantec、米MobileIron、米App47がMAMソフトウェアパッケージを販売している。これらの3社は、企業が仮想プライベート型エンタープライズアプリストア(VPEAS:Virtual Private Enterprise App Store)を構築できるクラウドサービスも提供している。他にも、米Apperian、米BMC Software、米FullArmor、米Salesforce.comなど、実に多くの企業がVPEASサービスを提供している。
モバイルアプリサービス向けのプライベートクラウド
IT部門が直面する課題は、モバイルアプリを従業員のデバイスに配布することだけではない。ビジネスアプリから企業リソースにアクセスすることも多く、システムはそうしたアプリからのアクセスを適切にサポートする必要がある。
ビジネスアプリが既存のシステムとやりとりできる場合もある。例えば、CRM(顧客関係管理)製品などだ。その場合、アプリは単に利用可能なAPIを使って既存のインフラを利用しているだけにすぎない。
しかし、企業は、従業員にモバイルアプリを配布するだけでなく、それらのアプリをサポートするサービスを提供するシステムも導入する必要がある。ユーザー側は、クラウドと同じやり方でデータを扱えることを期待する。複数のデバイスからデータにアクセスでき、あらゆるデバイスを使ってデータを更新でき、それらの更新がデバイス間で自動的に同期されることを望む。また、そうしたデータを他の同僚と共有し、そのデータを使って共同作業ができることも期待するだろう。
多くのコンシューマーアプリが既にそうした機能を提供しており、それがプライベートクラウドの目指すところでもある。プライベートクラウドは、パブリッククラウドサービスにつきもののリスクを避けながら、ユーザーがコンシューマーアプリで求めてきたデータの扱い方を実現する。
企業がプライベートクラウドを導入する場合、自社開発する方法と米Hewlett-Packard(HP)や米Microsoftなどのベンダーから購入する方法があるが、もう1つの選択肢は、米Amazonの「Amazon Elastic Compute Cloud(Amazon EC2)」など、近年急速に台頭してきた多様なPaaSサービスの1つを選び、仮想プライベートクラウドを構築する方法だ。
ただし、どの導入方法を選んだとしても、企業にはそれなりに大きな投資が必要になる。PaaSの採用が少なくとも当初は簡単、あるいは経済的にみえる。だが、その場合、機密性の高いデータを置く場所と保管方法を企業はコントロールできなくなる。
サービスを自社開発するのであれば、IT部門のコントロールをより強く働かせることは可能だ。しかし、それには複数のモバイルプラットフォームにまたがるシステムの開発、実装、設備、保守に膨大なリソースを投じなければならない。
一方、コストは掛かるものの、クラウドサービスを利用してモバイルアプリをサポートすれば、高い柔軟性を維持しながら、中央のアクセスポイントから業務を遂行、管理できる。
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