TechTargetジャパン編集部 メルマガコラム
“かっこいいだけ”から脱皮した「未来の電動車いす」
先進的なデザインながら、操作性には少々難あり――。開発版ではこうした印象だった電動車いすが、市販された製品版ではどう生まれ変わったのか。TechTargetジャパン編集部のコラムをお届けします。
東京・お台場の日本科学未来館で先日開催された「DIGITAL CONTENT EXPO」で、2014年9月に市販された電動車いす「WHILL Model A」が展示されていました。当日は試乗もでき、手すり部分にあるレバーを動かしたい方向に軽く倒すだけで、スムーズに移動できることに驚きました。当たり前といえば当たり前なのですが、開発中だったWHILLの操作感とは、全く異なるものだったからです。
2012年1月のコラムでも紹介したWHILL。以前のWHILLは、まさに“未来の乗り物”といった先進的なデザインが目を引きました。車輪のカバー部分から伸びる手すりを軽く傾けるだけで動くなど、操作も直感的かつ先進的。「健常者と障害者が同じ目線でコミュニケーションするきっかけになる“パーソナルモビリティ”を作りたい」という、WHILLのCEOである杉江 理氏の思想が、そこかしこに反映されていました。
一方で、試乗すると気になる点も多く見つかりました。開発中のWHILLに試乗する機会があったのですが、左右への移動がしにくかったり、路上の凹凸で操作感覚が大きく変わるなど、操作性はお世辞にもよいとはいえなかったのです。手すりが前面を覆っているので、乗る際に大股にならないといけない点も気になりました。「見る分にはいいが、普段使いには厳しいのでは」と、当時は思ったのが正直なところです。
市販されたWHILL Model Aは、こうした問題を一掃していました(WHILL公式サイト)。デザインは以前の先進的なイメージからは少し落ち着いたものの、操作性は格段に向上。前面を覆っていた手すりも無くなり、普通のいすに腰掛ける感覚で楽に乗れるようになりました。まさに「普段使いができる、かっこいい乗り物」に生まれ変わっていたのです。
改善をもたらした最大の要因は、設計の変更にあります。以前のWHILLは、既存の車いすに装着するアタッチメントとして開発されていました。WHILL Model Aはこれを止め、電動車いす全体を開発することに舵を切ったのです。アタッチメントでもパーソナルモビリティを体現するデザインは実現できますが、操作性はどうしても元の車いすに縛られてしまいます。そもそも一般的な車いすの車輪や筐体は、電動車いす用に設計されているわけではないのです。
WHILL Model Aでは、前輪2個と後輪2個による4輪駆動で、芝生や砂利道でも安定した走行を実現。前輪は24個の独立したタイヤを設け、左右の移動をスムーズにしています。価格は95万円(非課税)と、40万円程度から購入できる電動車いすの中にあっては多少高価です。ただ、おとなしめになったとはいえ、思わず「乗ってみたい」と思える先進的なデザインは健在。提供元のWHILLにも「こんな電動車いすが欲しかった」という車いすユーザーの声が届いているとのことです。
デザインだけでなく、操作性にも磨きを掛けたWHILL。今後利用がどのように広がるかに注目したいです。
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