仮想環境の事業継続製品 選定ポイント【最終回】
【徹底比較】VMware環境でシンプルなDRを実現するには? 主要製品の違いを見る
VMware環境でDR(災害対策)を実現するための最適な推奨構成とは。主要各社のバックアップソフト、重複排除ストレージ、統合バックアップアプライアンスの「機能」を徹底比較した。
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今回は、DR(災害対策)の構成や運用をシンプルにするための推奨構成と各メーカーからリリースされている製品の機能比較を行う。内容は下記の通りである。
- DRを構成する仕組みと方式の一覧
- シンプルなDR基盤を作ろう!(グレード定義)
- 製品機能比較
- 今後のDRのトレンド
DRを構成する仕組みと方式の一覧
本連載「仮想環境の事業継続製品 選定ポイント」で紹介してきたDRを構成する仕組み、DR方式、実装パターンを一覧にまとめていく。適宜、過去の記事を参照いただきたい。
DRはデータレプリケーションとグローバルクラスタで構成される。それぞれの仕組みの概要と特徴は以下の通りだ。
| DRの仕組み | 概要/特徴 | |
|---|---|---|
| データレプリケーション | バックアップデータの遠隔地保管/レプリケーション | DRを構成する際の必須の仕組み。リモートサイトへバックアップデータを保管/複製すること。ローカルサイト障害時にリモートサイトのバックアップデータを復旧に使用できる。ただし、データ量が多いとリストアに時間がかかる。 |
| プライマリデータのレプリケーション | 仮想マシンが使用しているプライマリデータをリモートサイトに複製すすること。リモートサイトにて、リストア不要で(マウントするだけで)使用できるため、復旧時間を短縮できる。ただし、データの整合性が確保しづらく、細かな単位でのリストアには不向きである。 | |
| グローバルクラスタ | プライマリデータのレプリケーションを使用して、リモートサイトにてシステムを自動/半自動で復旧させる仕組み。システム、アプリケーションの切り替えに加え、ネットワークの切り替えや切り替え訓練を行えるものもある。 | |
上記の仕組みを使用したDR方式は大きく分けて3つに分類でき、目的に応じて使い分けるべきである。
| DR方式 | 目的/復旧プロセス | |
|---|---|---|
| DR方式1 | バックアップデータの遠隔地保管/レプリケーション | まずはデータを保護したいという場合に適している。復旧に長期間を要するが、コストを抑えることができる。復旧は、ローカルサイトの機器を再調達後、バックアップデータをローカルサイトへ搬送、または、逆向きにレプリケーションし、その後リストアする。 |
| DR方式2 | バックアップデータのリストアによるサイト間切り替え(プライマリデータのレプリケーションなし) | 復旧時間を短縮させるために、リモートサイトにスタンバイ機を用意する。復旧は、リモートサイトにてバックアップデータをリストアする。 |
| バックアップデータのリストアによるサイト間切り替え(プライマリデータのレプリケーションあり) | さらに復旧時間を短縮させるため、プライマリデータのレプリケーションを行う。復旧は、レプリケーションされたプライマリデータを使用する。データに不整合が発生している場合は、バックアップデータのリストアで対応する。ただ、システムの起動、ネットワークの切り替えは手動で行う。 | |
| DR方式3 | グローバルクラスタによるサイト間切り替え | 最短で復旧させるため、極力自動化を取り入れる。グローバルクラスタの機能で自動/半自動で復旧できる。アプリケーションまたはデータベースのレプリケーション/クラスタ機能が使用できるケースもある。不整合データが一部ある場合は、バックアップデータのリストアで対応する。 |
それぞれのDR方式について、実装パターンを含めて一覧化したものが表3である。グローバルクラスタはプライマリデータのレプリケーションと連係して動作するため、製品組み合わせのサポート状況を必ず確認してほしい。
シンプルなDR基盤を作ろう!(グレード定義)
表3「DR方式と実装パターン一覧」の全パターンを使いこなす必要はない。また、必ずしも1つのみの方式で設計する必要もなく、最低限の方式を組み合わせ、シンプルな基盤を作るべきである。
まずは、下記については最初に確認するべきである。
- バックアップデータの遠隔保管のみか、サイト間切り替えも行いたいか
- サイト間切り替え先は、クラウド環境か、オンプレミスか
- DR対象は、小規模環境か、中大規模環境か
- DR対象は、パブリッククラウド環境か
当面はバックアップデータの遠隔地保管のみを実施したい場合でも、将来的にサイト間切り替え行う可能性がゼロでないのであれば、バックアップソフトまたは統合型バックアップアプライアンスを使用したバックアップデータのレプリケーションを実施するとよいだろう。また、クラウドに構築できるバックアップ製品を選択することで、クラウド環境をサイト間切り替え先にすることが可能になる。
中大規模環境のサイト間切り替えを行いたい場合、「VMware vCenter Site Recovery Manager」(SRM)が必須となる。仮想マシンの数が多くなると、手動で「VMware vCenter Server」(vCenter)へインベントリ登録を行うことは非常に手間が掛かるからだ。一方、小規模環境の場合、「VMware vSphere Replication」を使用することも可能だ。それにより、リモートサイトのストレージにローカルサイトとは異なるメーカーのストレージを使用することや、レプリケーション機能を持たない安価なストレージを選択でき、コスト削減につながる。
DR対象のシステムがパブリッククラウド環境の場合、バックアップ、HAクラスタ、DRを構築するには、プライベートクラウド環境で実施するより困難になる。パブリッククラウドでは、vCenterやVMware ESXiサーバ、ストレージ基盤へアクセスすることが許可されていない場合が多く、物理環境と同じ手法を仮想マシン上で構築する必要があるからだ。バックアップ、HAクラスタ、DRがサービスメニューとして用意されているパブリッククラウドを選択する方が賢明である。サービスを利用する場合は、データの整合性やリストア単位などサービス内容を必ず確認していただきたい。
ここで、実運用を想定したグレード定義に話を移そう。方式は1つに限定するのではなく、グレードを定義し、それぞれの仮想マシンのシステム管理者に選択してもらうのがよい。整合性が不要なファイルサーバなどのデータについては、ストレージのレプリケーション機能のみでバックアップすることで、リストア時間/復旧時間の短縮やバックアップ製品のライセンス費用を下げることにもつながる。しかし、整合性が必要で柔軟なリストアが必要な仮想マシンのOS領域、アプリケーション/データベースのデータはバックアップ製品を使ってしっかり保護するべきである。仮想マシンのOS領域は、ストレージのコピー機能、バックアップ製品の両方で保護しておくと、ローカルサイトでの細かな単位のリストア、リモートサイトでの迅速な復旧の両方に対応できる。
| グレード | DR方式 | 実装パターン | 適用例 |
|---|---|---|---|
| グレード0 | DRなし | ローカルサイトでのバックアップ、HAクラスタのみ | 重要度の低いシステム |
| グレード1 | バックアップデータのレプリケーション | 統合型バックアップアプライアンスによるバックアップレプリケーション | システム全般 |
| グレード2 | プライマリデータのレプリケーションのみ | プライマリストレージのレプリケーション | ファイルサーバ |
| グレード3 | サイト間切り替え(アプリケーションまたはDBのレプリケーション機能) | アプリケーションまたはDBのレプリケーション機能 | 重要度の高いアプリケーション、DB |
| グレード4 | グローバルクラスタによるサイト間切り替え | 統合型バックアップアプライアンスによるバックアップレプリケーション+プライマリストレージのレプリケーション+SRM | システム全般 |
コラム:バックアップデータのレプリケーションは単なる保険か?
バックアップ製品によっては、バックアップデータのレプリケーションを実施していることで、サイト間切り替え後もリモートサイトで永久増分バックアップが実施でき、短時間でフルバックアップが可能である。バックアップデータのレプリケーションを実施していない場合、有事の際のサイト切り替え後に、リモートサイトにてフルバックアップを長時間かけて実施する必要がある。サイト間切り替えは、サービスや業務を行うシステムの切り替えに注力し、バックアップやDRの基盤については手間と不安がない構成にしたいものである。
ここからは、DRの構成を実装する各社製品の機能を比較する。
バックアップソフト+重複排除ストレージ
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本稿の「比較表1 主要バックアップソフトと重複排除ストレージの組み合わせの機能比較(2014年11月時点、筆者調べ)」はPDFで提供しています。「比較表:VMware環境に最適な『DR(災害対策)』製品」からダウンロードしていただけます。
比較表1は、バックアップソフトと重複排除ストレージの組み合わせの機能を比較したものだ。「Symantec NetBackup」は、各社の重複排除ストレージと「Symantec OpenStorage」(OST)というAPIで連係できる。また、「EMC Data Domain」は幾つかのバックアップソフトと「Data Domain Boost」(DD Boost)という機能で連係が可能だ。NetBackupとData Domainの組み合わせは、機能の面で最も進んでいるといえる。また、同一メーカーのバックアップソフトと連係可能な重複排除ストレージもある。その他の組み合わせでは連係できず、バックアップと重複排除、レプリケーションが別管理になり、運用に手間が掛かる。
バックアップソフト/統合型バックアップアプライアンス
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本稿の「比較表2 主要バックアップソフトと統合型バックアップアプライアンスの機能比較(2014年11月時点、筆者調べ)」はPDFで提供しています。「比較表:VMware環境に最適な『DR(災害対策)』製品」からダウンロードしていただけます。
統合型バックアップアプライアンスを使用すると、単体の製品でバックアップとレプリケーションができるため、シンプルな運用が可能になる。比較表2には、リモートサイトでのリストア自動化を念頭にした比較項目(リストアのスケジュール設定、コマンドによるリストア実行)を含めている。ただし、RTO(目標復旧時間)を短くするためにリストアの自動化を検討するのであれば、プライマリデータのレプリケーションを検討した方がよい。
プライマリストレージのレプリケーション
一般的に、プライマリストレージ選定の判断要素はレプリケーション機能ではない。NAS、SANストレージのレプリケーション機能にそれほど大きな差はないと思われるからだ。
ただし特筆すべき点は、「NetApp」とNetBackupを併用した際の連係である。これはNetBackupの「Replication Director for VMware」という機能で、現在はNetAppにのみ対応している。NetAppのストレージスナップショット/レプリケーション機能がベースになっているが、NetBackupがデータの整合性確保と柔軟なリストア運用を実現する。つまり、ストレージ機能とバックアップソフトの良い面を兼ね備えたソリューションだ。RPO(目標復旧時点)/RTOの短縮が可能になり、バックアップ格納先のストレージが不要になるため、DR基盤のコスト削減につながる。「CommVault Simpana」にも同様の機能があるが、Windows/Linux両方の仮想マシンの整合性を取り、ファイル単位のリストア、アプリケーションデータのリストアが可能なNetBackupの方が一歩リードしている。
プライマリストレージには仮想マシン、アプリケーションの整合性を確保してスナップショット、レプリケーションを実行するソフトウェアが提供されている。ただし、SRMで切り替えた後、整合性がとれたスナップショットに手動のストレージ操作で戻さないといけない。
CDPレプリケーション
SRMは通常、NAS、SANストレージのレプリケーションの最新の状態を使用し、サイト間切り替えを行う。仮想マシンやアプリケーションの整合性が確保されたストレージのスナップショットが存在していたとしても、それを指定してサイト間切り替えをすることはできない。
だが、「EMC Recover Point」は唯一、SRMの管理画面でリカバリポイントを指定してサイト間切り替えが可能である。整合性の確保されたリカバリポイントが明確な場合はそれを指定することができる。SRMの切り替え後にストレージの操作を行わなくて良いため運用負荷が下がる。ただ、アプリケーションや仮想マシンの整合性を取るためには、プリスクリプト/ポストスクリプトで処理を作り込む必要がある。
仮想マシン上のグローバルクラスタソフト
仮想マシン上にインストールし、グローバルクラスタを構成できる製品は、「Symantec Veritas Cluster Server Global Cluster Option」(VCS GCO)、NEC「CLUSTERPRO」、サイオステクノロジー「LifeKeeper」などがある。対応しているプライマリデータのレプリケーション機能を必ず確認してほしい。
ただ、群を抜いて、さまざまなレプリケーション機能に対応しているのがVCS GCOだ。UNIX/Linux/Windowsにも対応し、仮想マシン上のレプリケーション製品である「Veritas Replicator」との併用も可能である。その上、ローカルサイトの本番環境に影響を与えない切り替え訓練機能(ファイアドリル)も備え、物理環境含めワールドワイドでの実績も豊富である。
アクティブ/アクティブのボリュームミラーリング
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本稿の「比較表3 アクティブ/アクティブのボリュームミラーリング(2014年11月時点、筆者調べ)」はPDFで提供しています。「比較表:VMware環境に最適な『DR(災害対策)』製品」からダウンロードしていただけます。
ボリュームミラーリングができる製品で、サイト間距離が100キロを超える環境での非同期型レプリケーションが可能な製品は少ない。また、現状、非同期型の場合、VMwareとの組み合わせがサポートされていない。本方式でDRの構成を検討される方は今後のサポート状況に注目してほしい。
今後のDRのトレンド
どのような種類の製品を選定する場合も同じことがいえるが、メーカー/システムインテグレーター(SIer)の話やカタログの内容はうのみにしないように心掛けていただきたい。DRを構成する仕組みを理解し方式を想定した上で、製品/ソリューション説明を聞くことが重要である。さらに、マニュアルを読み、評価機や評価ライセンスを使用して検証し、要件に合うか、機能/パフォーマンス比較をすることも時には必要である。製品の機能については、メーカーの新バージョンリリース説明会などで把握することができる。新機能や新製品を学ぶことで、最新技術を学べ、知識を習得することができる。ただ説明を聞くだけではなく、しっかり質問し、今までの技術と何が違い、どんな課題が解決するのかを理解するべきである。
今後のトレンドとして、「VMware Virtual Volumes」(VVOL)という言葉を目にしたことがある方も多いと思う。VSANに名前が似ているが、VVOLはVSANのようにvSphereだけで動作する機能ではなく、各社のストレージと連係するAPIである。ストレージ機能のクローンやスナップショット、レプリケーション、圧縮、重複排除などが仮想マシン単位で実行できるようになるといわれている。ただ実装はストレージメーカーに任せられているため、同じVVOL対応のストレージでも各メーカーで機能差が出てくると思われる。また、VVOL環境も引き続きVADPバックアップが対応するともいわれている。VADPもバックアップ製品メーカーで機能差があるが、VVOL+VADPとなるとストレージとバックアップ製品の組み合わせによって、多様な機能差が出てくると予想される。
本連載では、バックアップデータのレプリケーションとプライマリデータのレプリケーションの併用(要はバックアップ製品とストレージ機能の併用)を推奨してきたが、VVOLの対応が進んでくると、データ保護製品がVVOLのAPIで各社ストレージと連係できているような世界が近いうちに来るかもしれない。ベースはストレージの機能で動作しているため、高速にバックアップができ、復旧の際はリストアが不要で使用できる。バックアップ製品のように、VMwareやアプリケーションの整合性を確保しながら、利便性の高いリストア運用(仮想マシン、ファイル、アプリケーションデータ単位のリストア)が可能になるかもしれない。今後はVVOLに注目だ。
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仮想環境の事業継続製品 選定ポイント
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