仮想環境の事業継続製品 選定ポイント【第2回】
VMware環境に最適なDR製品の選び方 ~バックアップデータの遠隔地保管編
DR方式は3つに分類でき、各方式を構成するデータレプリケーションとグローバルクラスタにも複数の実装パターンがある。「バックアップデータの遠隔地保管」の実装パターン、製品選定のポイントについて解説する。
第1回「VMware環境のBCP/DR対策で陥りやすい失敗」では、災害対策(DR)の検討で陥りやすい失敗と、DRを構成する2つの仕組み(データレプリケーションとグローバルクラスタ)を解説した。
まず、DRの仕組みついておさらいしよう。前回の繰り返しになるが、守るべきものはデータである。そのためには、「(1)バックアップデータの遠隔地保管」が必須となる。それに加え、リモートサイトに「(2)スタンバイ機」を用意し、「(3)プライマリデータのレプリケーション」「(4)グローバルクラスタ」を導入することで、リカバリ時間(RTO)を短くすることが可能となる(図1)。(1)は必須、(2)~(4)はサービスの復旧時間を短縮するためのオプションと理解すると分かりやすい。また、復旧手順の概要については、「失敗しないVMware環境に最適なバックアップ製品の選び方(重複排除編)」のポイント3を参照していただきたい。
プライマリデータのレプリケーションを行うことで、バックアップデータのレプリケーションが不要になると思われがちであるが、そうではない。バックアップデータのレプリケーションが必須で、プライマリデータのレプリケーションがオプションである。
ここで、プライマリデータのレプリケーションをストレージで行う場合について考えてみよう。SANストレージの場合、サイト間の距離が100キロを超えると非同期レプリケーションとなり、ローカルサイトのデータがリモートサイトに完全に複製されていることは保障されない。NASの場合でも、ストレージの機能だけで仮想マシンやアプリケーションデータの整合性を担保することは難しい。また、リストアがLU(論理ユニット)/ボリューム単位となり、仮想マシン、ファイル、アプリケーションデータを選択しての細かな単位のリストアが困難である。さらに、リストアでプライマリストレージを操作すること自体にリスクがある。このことからも、バックアップデータのレプリケーションが必須であることは理解いただけると思う。
ただ、プライマリストレージのレプリケーションは高速なバックアップ/リストアが可能なことに加え、複製されたLU/ボリュームをマウントするだけで利用可能(リストア不要)である点は、リモートサイトでのリカバリ時間短縮に向いているといえる。
ここで、DRの構成検討で最初に考慮するべきことが「サイト間切り替えを行いたいか?」「バックアップデータの遠隔地保管のみか?」である。災害時に、復旧に数週間以上かかっても問題なく、コストを抑え、まずはデータを守りたいという場合は、バックアップデータの遠隔地保管のみを選択する場合が多い。一方、数日以内にサービスを復旧させたい場合は、バックアップデータの遠隔保管に加え、サイト間切り替えを検討していただきたい。
仮想環境における3つのDR方式
DR方式は下記の3つに分類でき、それぞれの方式を構成するデータレプリケーションとグローバルクラスタにも複数の実装パターンがある。
- DR方式1:バックアップデータの遠隔地保管
- DR方式2:サイト間切り替え(バックアップリストア)
- DR方式3:サイト間切り替え(グローバルクラスタ)
今回は1つ目のDR方式「バックアップデータの遠隔地保管」の概要、実装パターン、製品選定のポイントについて解説する。残り2つの方式は次回で紹介する。
DR方式1:バックアップデータの遠隔地保管
バックアップデータの遠隔地保管は、全てのDR方式の基礎となる。バックアップデータをリモートサイトに保管または複製し、災害からデータを保護する。ローカルサイトで大規模な障害が発生した際の復旧は、ローカルサイトでサーバ、ストレージなどの機器を調達した後、リモートサイトのバックアップデータをローカルサイトの機器に対してリストアする。
バックアップデータの遠隔地保管の実装パターンは、下記のように分類できる。
それぞれの実装パターンの特徴と製品選定ポイントを下記に記す。図中のバックアップサーバは、バックアップソフトで構築したバックアップサーバと、バックアップサーバおよびバックアップストレージの役割を兼ね備えた統合型バックアップアプライアンスの両方を指す。
1.テープの遠隔地保管
テープは近年高速になっており、容量単価が安価で省電力という良い面もあるが、運送時に盗難/紛失する可能性もある。コンプライアンス(法令順守)でデータを長期間保存する目的や、企業の方針によりテープでバックアップデータを保存することが確定している場合でも、リストアの確実性を高めるために、以下に挙げる他の実装パターンと併用することを推奨する。また、どうしてもテープに保管したい場合は、リモートサイト側でテープへの複製を行うとテープの運送が不要となるため、盗難/紛失のリスクが減る。
2.遠隔地バックアップ
遠隔地バックアップは、小規模な多拠点のバックアップに適している。バックアップクライアント(エージェント)で重複排除を行い、リモートサイトのバックアップサーバに直接バックアップデータを格納する。ローカルサイトのバックアップ管理が不要になり、運用/監視が簡素化できる。ただ、リストアの際は、重複排除が復元された状態でバックアップデータがWAN越しに転送されるため、一度に大容量データのリストアを実施すると時間を要する。また、リモートサイトのバックアップサーバをクラウド上に構築することで、クラウドへのバックアップとしても構成可能である。注意点として、クライアントでの重複排除が可能なバックアップソフトでもWAN越しの遠隔地バックアップがサポートされているかは確認する必要がある。
3.クラウドへのバックアップ
3-1.クラウドストレージへの直接バックアップ
本構成は、クラウドストレージに直接バックアップを格納できるバックアップソフトを使用することで可能である。使用するバックアップソフトの国内クラウドストレージサービスへの対応状況や、日本リージョンへの対応状況は必ず確認したい。クラウドストレージは低コストだが、バックアップソフトのライセンスコストについても考慮する必要がある。また、遠隔地バックアップと同様にクラウドストレージからのリストアは非常に時間を要する。そのため、ローカルサイトにバックアップデータを保管した上での複製先として利用や、リストア頻度が少ない長期間保管が必要なバックアップデータの保管先としての利用を推奨する。
3-2.クラウドゲートウェイ
クラウドゲートウェイを使用することで、クラウドストレージに直接書き込むことができないバックアップソフトでも、クラウドストレージへバックアップを格納できる。クラウドゲートウェイがバックアップサーバとクラウドストレージの仲介役を果たす。動作としては、バックアップサーバがCIFS/NFS/iSCSIなどでクラウドゲートウェイへ書き込み、その後、クラウドゲートウェイがRESTなどのプロトコルでクラウドストレージにデータを書き込む。技術的に動作するかに加えて、バックアップソフト、クラウドゲートウェイ、クラウドストレージのそれぞれの接続サポート状況を確認する必要がある。また、他の実装パターンに比べ構成が複雑になる。
4.バックアップレプリケーション
4-1.バックアップソフト+重複排除ストレージ
バックアップソフトと重複排除ストレージの組み合わせにより、できること/できないことが異なるので、製品選定には注意が必要である。「重複排除済みデータのレプリケーション」「バックアップソフトからのレプリケーション管理」「複製されたバックアップデータの自動認識」が可能な製品を選択することで運用がシンプルになる(参考:失敗しないVMware環境に最適なバックアップ製品の選び方(重複排除編))。また、重複排除ストレージは複数種類のバックアップソフトからの書き込みや、クライアントからCIFS/NFSで直接、書き込むことができ、それら全体で重複排除をかけることが可能である。それにより、既存環境を生かしたままDRを構成可能である。
4-2.バックアップソフト/アプライアンス
バックアップソフト/アプライアンスでは、バックアップサーバまたはバックアップアプライアンスが、バックアップと重複排除レプリケーションの両方を実行する。基本的に「重複排除済みデータのレプリケーション」「バックアップソフトからのレプリケーション管理」「複製されたバックアップデータの自動認識」が可能で、サイト間切り替えにも適している製品が多い。バックアップサーバがリモートサイトにも存在するため、リモートサイトでリストアを実施することが可能である。そのため、最初はバックアップデータの遠隔地保管から始め、後にサイト間切り替えを行う方式への移行/拡張も容易である。実装パターンに迷った場合は、本パターンを選択することを強く推奨する。また、リモートサイトのバックアップサーバをクラウド上に構築することも可能である。
その他の全体的な注意点/考慮点は下記の通りである。
リモートサイトへ複製したバックアップデータをローカルサイトへ逆向きにレプリケーションすることや、WAN越しにリストアするには時間を要する。そのため、ローカルサイトの復旧は、まず、リモートサイトのバックアップサーバ/ストレージまたはバックアップデータを可搬媒体でローカルサイトに運送することを検討した方がよい。バックアップデータをローカルサイトに運送できると、リカバリ時間を短縮できる場合がある。
また、ローカルサイトからリモートサイトへの初回レプリケーションは時間を要するため、リモートサイトの機器をローカルサイトに持ち込んで、レプリケーションを実施する方法がよく取られる。しかし、リモートサイトの機器が運用中である場合は、移動させることができない。また、移動は手間が掛かるため、可能であれば避けたい。そこで、バックアップ対象のデータをリモートサイトへコピーし、そのデータをリモートサイトでバックアップすることで、WAN越しにレプリケーションを行うより短時間で作業を完了できる可能性がある。ただ、この方法はリモートサイトにバックアップサーバが存在する場合に可能である。
さらに、バックアップデータを重複排除して効率良くレプリケーションできたとしても、ローカルサイトの週末フルバックアップが非効率で24時間以上費やした場合、RPO(目標復旧地点)は24時間以上となってしまう。DRを検討する際は、ローカルサイトのバックアップの効率化/高速化を実現するため「VADP永久増分バックアップ」の機能を有する製品を推奨する。バックアップの所要時間が短くなれば、1日に2回以上のバックアップおよびレプリケーションを実行できる可能性がでてくる(その結果RPOが24時間から12時間になる)。
今回は、DR方式の1つ「バックアップデータの遠隔地保管」の実装パターンとそれぞれの製品選定のポイントについて解説した。次回は「サイト間切り替え」について同様に解説する。
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仮想環境の事業継続製品 選定ポイント
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