仮想環境の事業継続製品 選定ポイント【第3回】
VMware環境に最適なDR製品の選び方 ~サイト間切り替え(バックアップリストア)編
代表的な3つのDR(災害対策)方式のうち、「サイト間切り替え(バックアップリストア)」の実装パターン、製品選定のポイントについて解説する。
前回の記事(VMware環境に最適なDR製品の選び方 ~バックアップデータの遠隔地保管編)では、下記のDR方式のうち「DR方式1:バックアップデータの遠隔地保管」について説明した。
- DR方式1:バックアップデータの遠隔地保管
- DR方式2:サイト間切り替え(バックアップリストア)
- DR方式3:サイト間切り替え(グローバルクラスタ)
サイト間切り替えは2つに分かれる。リモートサイトにレプリケーションされたバックアップデータをリストアして手動で切り替える方式と、レプリケーションされたプライマリデータとグローバルクラスタの仕組みを使用して切り替える方式である。今回は「DR方式2:サイト間切り替え(バックアップ)」の概要、実装パターン、製品選定のポイントについて解説する。
DR方式2:サイト間切り替え(バックアップリストア)
サイト間切り替えを行うためには、第2回で説明したバックアップデータの遠隔地保管に加え、リモートサイトにスタンバイ機を用意する必要がある。ローカルサイトでのサービス継続が不可能と判断された際は、リモートサイトにてバックアップデータをスタンバイ機にリストアし、システムを復旧させる。リストアするためには、リモートサイトにバックアップサーバが必要である。
下記のような、リモートサイトにて短時間で復旧できる機能、バックアップ運用を迅速に再開できる、機能を有しているかどうかが製品選定のポイントとなる。
- 複製(レプリケーション)されたバックアップデータの自動認識
- リストアのスケジュール設定
- VADPバックアップデータからの仮想マシン起動
- ローカルサイト障害時、リモートサイトでオペレーション無しでバックアップ運用が継続可能
複製(レプリケーション)されたバックアップデータの自動認識
バックアップソフトと重複排除ストレージの組み合わせを選択した場合、組み合わせによっては、バックアップとレプリケーションが別々の管理となる。重複排除ストレージの機能でリモートサイトに複製されたバックアップデータをバックアップソフトの管理下に取り込まなければリストアに使用できず、リストア時のオペレーションが複雑になる。最近ではバックアップソフト/統合型バックアップアプライアンス(※1)がレプリケーション機能を備えており、リモートサイトに複製されたバックアップデータを自動で認識でき、いつでもリストアできる状態になっている。このような製品を使用することで、バックアップソフトと重複排除ストレージの組み合わせを選択するより、サイト間切り替え時のリストアをシンプルに実施することが可能である。
※1 「統合型バックアップアプライアンス」とは、バックアップサーバとバックアップストレージの役割を兼ね備えたアプライアンス製品である。一方、重複排除ストレージのように、別途バックアップサーバが必要な製品を「ターゲット型バックアップアプライアンス」と呼ぶ。
リストアのスケジュール設定
システムの規模が大きくなるほど、ローカルサイト障害時、リモートサイトでのリストアに時間を要し、復旧に長時間を要する。リモートサイトでのリストアをスケジュール設定できるバックアップソフトであれば、日々リモートサイトでリストアを自動実行することが可能になる。それにより、障害時のリカバリ時間を短縮できる。スケジュール設定できない製品でも、コマンドでリストアが可能であれば、リストアをスクリプトで作り込むことも可能である。
VADPバックアップデータからの仮想マシン起動
VADPのバックアップデータから直接、仮想マシンを起動できるバックアップ製品がある。そのような製品の場合、大容量の仮想マシンでも数分程度で起動できサービスを復旧することができる。その後、サービスを行いながら、バックアップストレージからプライマリストレージへVMwareの「Storage vMotion」によってオンラインで移行できる。
本機能を有する製品にも2種類あり、バックアップデータから仮想マシンを起動後、バックアップストレージへ読み書きを行う製品と、読み込みはバックアップストレージから行うが、書き込みはプライマリストレージの一時領域を使用する製品がある。後者の方がデータ更新の多い仮想マシンでもパフォーマンスに影響が少ないといえる。
また、本機能により一度に多くの仮想マシンを同時に起動することはお勧めできない。ただ、バックアップ製品自体に同時起動数の制限がある場合があり、復旧手順を作成する際には注意が必要だ。
ローカルサイト障害時、リモートサイトでオペレーション無しでバックアップ運用が継続可能
ローカルサイト障害時、リモートサイトにてバックアップ運用を継続するために、バックアップサーバのサイト間切り替えや設定変更が必要な製品がある。一方、DRに最適な製品は、独立したバックアップサーバがサイト間でお互いにバックアップデータをレプリケーションでき、片方のサイトに障害が発生しても、もう一方のサイトで特別なオペレーションを実施することなくバックアップ運用を継続できる。後者の製品を選択することで、サイト間切り替え時のオペレーションを軽減することができる。
プライマリデータのレプリケーションの実装パターン
ここで少し話を変えて、プライマリデータのレプリケーションについて考えてみよう。プライマリデータのレプリケーションを実施することで、バックアップデータからのリストア量を減らすことができ、リカバリ時間を短縮できる。プライマリデータのレプリケーションをローカルサイトのバックアップ用途にも使用したい場合は、ローカルサイトで同一ストレージ筐体内、または別のストレージ筐体間にレプリケーションした後、リモートサイトへレプリケーションすることを推奨する。ローカルサイトのデータ復旧のために、リモートサイトからWAN越しに逆向きのレプリケーションをすることは時間を要するからだ。
プライマリデータのレプリケーションの実装パターンは、下記のように分類できる。それぞれの実装パターンの特徴と製品選定時のポイントを下記に記す。
- プライマリストレージのレプリケーション機能
- vSphere Replication
- 仮想マシン上のレプリケーション製品
- 仮想マシン上のアプリケーションのレプリケーション機能
- CDP(Continuous Data Protection)レプリケーション
- アクティブ/アクティブのボリュームミラーリング
1.プライマリストレージのレプリケーション機能
仮想化基盤のプライマリストレージが統合されている場合に、プライマリデータ全体のレプリケーションを一括して行うことができる。ただ、同一ストレージ機種間でのみレプリケーションが可能である。一般的には仮想マシンのOSやアプリケーションデータの整合性を確保することが難しく、整合性を担保しなくてよいファイルサーバなどの領域に向いている。VMwareや仮想マシン上のアプリケーションと連係しデータの整合性を確保できるソフトウェアを提供しているストレージベンダーもあり、VMwareやアプリケーションのサポートバージョン、可能なリストア運用(ファイル単位のリストア、仮想マシン単位のリストアなど)について確認したい。
「【徹底比較】VMware環境に最適なバックアップ製品の機能を大解剖」の「ストレージのコピー機能とVMware連係ソフトの機能比較」も合わせて参照していただきたい。
レプリケーションデータを使用してサイト間切り替えをするためには、ストレージの操作で書き込み可能な状態にし、リモートサイトのESXサーバからマウントし、さらに仮想マシンを「VMware vCenter Server」にインベントリ登録する必要がある。仮想マシンの台数が多くなると手動での実施が困難になるため、SRMの導入を検討していただきたい。
2.vSphere Replication
「vSphere Replication」は、VMwareのハイパーバイザーのレプリケーション機能である。仮想マシン単位で変更ブロックのレプリケーションを行うことができる。レプリケーション機能を持たないストレージで構成された小規模な環境でもDRを構成可能である。また、Windows仮想マシンであれば、VSS(Volume Shadow Copy Service)に対応したアプリケーションデータの整合性を保つことができる。サーバのシステムリソースを使用するが、特別なストレージは必要なく、異なる形式のデータストア間(異なるベンダー間、NFS/SANデータストア間)でもレプリケーションが可能になるため、費用を抑えたい中小規模環境に適しているといえる。
3.仮想マシン上のレプリケーション製品
パブリッククラウド上など、仮想基盤のvCenter Serverや「VMware ESX/ESXi」サーバ、プライマリストレージなどの操作が許可されていない場合や、レプリケーション対象データが少ない場合に有効である。ゲストOSが認識しているフォルダ/ファイル、またはボリューム単位でレプリケーションを行う。ローカルサイトとリモートサイトで起動している異なる2台の仮想マシン間でレプリケーションを行う。
4.仮想マシン上のアプリケーションのレプリケーション機能
仮想マシン上のアプリケーションのレプリケーション機能は、「仮想マシン上のレプリケーション製品」と似ているが、ゲストOS内のデータベースやアプリケーションの整合性が保証される方式である。アプリケーション自体がレプリケーション機能を持つため、整合性を取るためのスクリプトを作り込む必要がない。ストレージ機種に依存しないが、アプリケーションごとに運用方法が異なることになる。アプリケーションの種類が多いと、運用が複雑になる可能性がある。重要度が高く、確実にデータの整合性を担保する必要がある場合に使用することを推奨する。
5.CDP(Continuous Data Protection)レプリケーション
CDP(Continuous Data Protection)レプリケーションには2種類の製品がある。仮想マシンにエージェントをインストールし、読み書きした全てのブロックをCDP製品に転送するホストベースの製品と、ストレージやFCスイッチと連係し仮想マシンにエージェントが不要なストレージベースの製品がある。仮想マシンにエージェントをインストールする製品は、保護対象の仮想マシンが増えると、CDP装置への書き込み処理がボトルネックとなり、サービスを行っている仮想マシンのパフォーマンスに影響を与える可能性がある。ホストベースの製品の採用を検討する場合は、本番環境を想定した負荷試験が必須になる。また、ストレージベースの製品はパフォーマンスの課題は少ないが、データの整合性についてはきちんと検討する必要がある。仮想マシンやアプリケーションの整合性を確保するための仕組みがあるかは重要なポイントだ。そのために、プリ/ポスト処理のスクリプトを組み込める製品もある。
CDPというと任意のリカバリポイントに戻すことができるとイメージしがちであるが、アプリケーションデータの整合性が確保されているのは、明示的に整合性を確保した限られたリカバリポイントのみである。
6.アクティブ/アクティブのボリュームミラーリング
複数のストレージ装置を1台に見せる仮想化技術を導入し、アクティブ/アクティブのボリュームミラーリングや無停止でのストレージメンテナンスやリプレースを実現できるストレージ/レプリケーション製品である。サイト間で共有ストレージを構成でき、ローカルサイト内のESXサーバ間のようにVMwareのクラスタを構成できる。それにより、サイト間をまたいで「vSphere HA」「vSphere vMotion」で仮想マシンを切り替えることが可能なる。しかし、製品よってレプリケーションが同期型/非同期型に対応しているか、またそれぞれがVMware環境をサポートしているかは確認が必要だ。同期型は100キロ以内での使用が一般的なため、DR構成のサイト間距離の要件を満たせない場合がある。
今回は、DR方式「サイト間切り替え(バックアップリストア)」の実装パターンとそれぞれの製品選定のポイントについて紹介した。DRに最適なバックアップ製品、リモートサイトでの復旧時間を短縮するためのプライマリデータのレプリケーションについてご理解いただけたとと思う。次回は、3つ目のDR方式である「サイト間切り替え(グローバルクラスタ)」について紹介する。
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仮想環境の事業継続製品 選定ポイント
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