今なお現役のテープストレージ
従来型バックアップの時代は終わった? データ保護の今とこれからを読み解く
サーバ仮想化やクラウド、フラッシュストレージなど、企業のデータ保護を取り巻く状況は変化を続けている。従来型のバックアップ製品や手法は今でも有効なのだろうか。その実態を探る。
特定のテクノロジーが終わったと宣言するのは、自社製品に注目を集めるために多くのベンダーが採用してきた昔ながらの手法だ。エンタープライズバックアップもその1つだ。
例えば、ディスクストレージのサプライヤーは、テープストレージが過去のテクノロジーだと長年にわたって主張してきた。だが、このような主張がなされているにもかかわらず、テープの販売は今も順調だ。
同様に、フラッシュストレージの出現によって、HDDはデータセンターで使われなくなるという見方をする人もいる。だが、HDDベンダーは研究開発に巨額を投じて、これまでにないほど高密度なディスクドライブを開発している。また、電源効率の向上にも取り組んでいる。
新しいデータ保護のパラダイム
サーバ仮想化のバックアップを手掛ける一部のベンダーは、従来のエンタープライズバックアップ製品は終わったと宣言している。また、仮想マシン(VM)の保護には、全く新しいデータ保護のパラダイムが必要だと主張している。このような主張にも一理ある。だが、これは現在のデータセンター環境の大半が仮想化されているという前提の発言だ。
さまざまな調査により、データセンターのサーバリソースのうち仮想化されているのは半数であることが明らかになっている。つまり、40~50%のアプリケーションは依然として物理サーバで実行されているのだ。
データセンターの環境において、仮想化技術と親和性の高いバックアップ製品が必要であるのは紛れもない事実だ。その一方で、物理環境と仮想環境が混在した状態でアプリケーションのワークロードを管理できるバックアップテクノロジーは依然として必要だ。
今も現役で活躍するテープ
仮想環境のバックアップテクノロジーは、テープでのバックアップに適していない。
スイスVeeam Softwareの「Veeam」シリーズは、エンタープライズバックアップの分野に進出している仮想環境のバックアップ製品だ。テープへの保存機能をサポートしたことで、エンタープライズバックアップの分野に進出している。テープへの保存の要件が厳しくない環境であれば、この製品で問題ないだろう。だが、大量のデータをテープに書き込むように最適化されているバックアップ製品が必要な大企業にとっては不十分かもしれない。
財務資料や医療データなど特定の記録は、情報を長期保持することが法規制によって義務付けられている。「LTFS」(リニアテープファイルシステム)などのオープンテープテクノロジーにより、テープはデータの長期保存メディアとして広く普及している。従来のエンタープライズバックアップ製品は、テープデバイスに対してデータの書き込みと読み取りを行うように最適化されている。そのため、多くの企業では、テープデバイスにあるデータ資産の管理に従来のエンタープライズバックアップテクノロジーが必要になるのが実情だ。
従来のバックアップ製品と仮想環境のバックアップ製品の収束
従来のバックアップソフトウェアベンダーの多くは、自社製品に仮想化モジュールを追加している。その目的は、データセンター環境で混在する物理ワークロードと仮想ワークロードのデータ保護を管理できるようにすることだ。実際、従来のバックアップ製品の中には、仮想環境専用のバックアップ製品でしか利用できなかったバックアップ機能を搭載しているものもある。
例えば、従来のバックアップ製品には、VMのゲストレベルでバックアップするオプションを提供しているものもある。また、ハイパーバイザーに埋め込まれているデータ保護APIと直接連携しているものもある。このような機能により、仮想環境のバックアップベンダーがセールスポイントとして強調するバックアップの効率化と運用上のメリットが得られる。
バックアップテクノロジーのモジュール化
バックアップベンダーは、テクノロジーのモジュール化を進めている。その目的は、エンドユーザーが、最善のアプローチを使用できるようにしながら、単一のバックアップ管理プラットフォームから仮想環境と物理環境のバックアップワークロードを管理できるようにすることだ。例えば、米EMCは、顧客のニーズに合わせて、同社のデータ保護テクノロジーを上手く組み合わせられるようにしている。具体的には、「EMC Avamar」の「NDMP」アクセラレーションテクノロジーを「EMC NetWorker」のバックアップ環境で個別のモジュールとして使用することが可能だ。この2つを組み合わせることで、NASシステムのバックアップをほぼ瞬時に行えるようにしている。
NetWorkerとAvamarは、この2つの製品で提供する機能の数を増やすために一部統合されている。例えば、NetWorkerのユーザーは、AvamarのVMイメージレベルのバックアップ機能を利用することができる。必要な作業はNetWorkerの新しいリリースにアップグレードするだけだ。同様に、Avamarのユーザーはデータをテープにエクスポートできる。この機能が実現した背景にはNetWorkerのテープ管理コードがAvamarに移植されたことが挙げられる。
多くの企業は、混在するワークロードの要件を満たすためにハイブリッドなアプローチを必要としている。具体的には、従来のエンタープライズバックアップ製品と仮想環境のバックアップ製品の機能を組み合わせたものだ。いずれEMCや米Dell Softwareなどのベンダーが、これらの機能を1つの製品に統合するようになるだろう。このような製品を実現すると思われるベンダーの特徴は、各社の製品ラインアップに従来のバックアップ製品と仮想化専用のバックアップ製品を持っていることだ。だが、そのようなときが来るまで、従来のエンタープライズバックアップテクノロジーには大きな需要がある。
クラウドは従来のバックアップテクノロジーの息の根を止めるのか
最も一般的なパブリッククラウドストレージの用途は「バックアップ」と「災害復旧」だ。オンプレミスでのバックアップインフラの構築に投資を行わずに、バックアップデータをクラウドに保存している企業も存在する。米Avere Systemsなどのベンダーが提供するクラウドNAS製品を使用することで、企業はプライベートクラウドのストレージリソースと安価なクラウドストレージの間でバックアップデータを移動できるようになる(安価なクラウドストレージは米Amazonなどのプロバイダーが提供している)。その結果、企業はデータを管理するための段階的なストレージのアプローチを手に入れることができる。
エンタープライズバックアップの進化にクラウドテクノロジーが長期にわたってかかわることは間違いない。だが、今日、企業統制のためのデータポリシーと法規制により、多くの企業は一部のデータセットをオンプレミスに保存することを余儀なくされている。例えば、データポリシーでは、機密性の高いIPアドレスを常時オンサイトで維持する必要があることなどが規定されているだろう。また、法規制では、データの保管に関して厳しい要件が課されている。さらに、バックアップのコピーがオンプレミスにあると、WAN経由でデータを転送する必要がなく、よりタイムリーにデータを復元できるというメリットがある。
エンタープライズバックアップは終わったのではなく、進化しているのだ。
多くの仮想環境バックアップベンダーの売り上げは、ここ数年で増加している。一方、従来のバックアップ製品のベンダーは、市場で高いシェアを維持している。これは、従来のバックアップテクノロジーの需要が企業に根強く残っていることを示す動かぬ証拠だ。
従来のバックアップ製品、仮想環境専用のバックアップ製品、クラウドバックアップ製品は収束するだろう。各企業のデータ保護要件に合うさまざまな選択肢が提供されるため、エンドユーザーにとって最善の結果となることが予想される。
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