1社当たりの損失額は約2億1900万円
意識調査に見た、日本企業のデータ保護への厳しい自己評価
EMCジャパンが発表したデータ保護に関する意識調査結果からは、日本企業のデータ保護意識の低さや、システム停止・データ損失の国内企業1社当たり損失額が約2億1900万円に上ることなどが明らかになった。
日本企業はデータ保護レベルの成熟度が低い?
EMCジャパンは2015年1月23日、データ保護に関する意識調査「EMC Global Data Protection Index」の結果を発表した。この調査は、米EMCの委託により英市場調査会社Vanson Bourneが2014年8、9月に実施。日本を含む24カ国・地域にある従業員数250人以上の企業、公共機関のIT部門の意思決定権者3300人がオンラインで回答した。日本企業の回答者は125人であった。
EMCジャパン DPA事業本部 本部長の今井 浩氏は「調査の目的は、データ保護に対する課題を明確化すること。データ保護というキーワードに対して、どれくらい関心があり、どのようなIT投資・対応をしているのかを調査した」と説明する。
同調査では、データのバックアップとシステム障害の経験、自社のIT戦略、インフラストラクチャに関して質問した。その回答結果を基に回答企業のデータ保護の進捗状況を「成熟度」(1~100ポイント)で評価。成熟度ポイントを基に以下のカテゴリに振り分けた。
- Laggards(遅れている):1~25ポイント
- Evaluators(評価段階):26~50ポイント
- Adopters(導入済み):51~75ポイント
- Leaders(先進的):76~100ポイント
その結果、日本企業の成熟度における平均スコアは26.9ポイントとなり、92%が下位2層のカテゴリ(「遅れている」と「評価段階」)に位置付けられた。また、国・地域別の成熟度で見ると最下位だった。ここからは、EMCジャパンが発表した日本企業の回答結果を基に、データ保護に関する意識や対策の現状を紹介する。
70%が「データ保護はビジネスに必要不可欠」と回答
「自社ビジネスにとってデータ保護は不可欠な要素であると思うか」という質問に対して、回答者の70%が必要不可欠と回答した。業種別にみると金融サービス業、IT業、製造業で必要不可欠だと回答した割合が高い。
調査企業の年間IT投資平均金額は304億円(※1)で、データ保護対策への投資金額の平均は19億円であった。年間売上金額に占めるIT投資の割合は平均6.83%で、グローバル(平均8.67%)と比べて低い。
※1:掲載金額は全て「1ドル=100円」で算出。
また、IT投資におけるデータ保護への投資割合(※2)は平均6.14%で、グローバル平均の7.70%よりも低い。業種別にみると、国内で投資割合が最も高いのは金融業(平均7.84%)だ。また投資金額が大きいのは、従業員数3000~5000人規模の企業だという。
※2:小数点第3位で四捨五入。
約半数が過去1年間に予定外のシステム停止やデータ損失を経験、損失額は1社当たり約2億1900万円
回答企業の48%が「過去1年に予定外のシステム停止やデータ損失を経験した」と回答。業種別では小売り(54%)、IT(50%)、製造(45%)が高い。特に、従業員数250~499人規模の企業の60%が障害を経験したという。
また、システムが停止した時間の平均は19時間。障害発生の原因としては「ハードウェアの障害」「データの破損」「電力供給の問題」「ソフトウェアエラー」などが多い。
障害発生による影響としては「従業員の生産性の低下」(37%)、「製品開発の遅延」(30%)、顧客からの信用・信頼性の低下」(20%)などが挙がった。障害を経験している企業の多くでビジネスに直接的な影響が出ていることがうかがえる。
調査結果を踏まえて、EMCジャパンは国内企業1社当たりの損失は約2億1900万円になると試算する。システム停止に伴う損失額が1億3500万円、データ損失に伴う損失額は8400万円という内訳になる。
データ復旧対策に自信がない企業が91%、データ損失量は増加傾向
今回の調査では、多くの日本企業がデータ損失後の復旧に自信がないことも明らかになった。「データ損失が発生した場合、全てのプラットフォーム(オンプレミス、クラウド環境含む)について、SLA(サービスレベル契約)に準拠した形でシステム、データを完全復旧できる自信はあるか」という質問には、91%が「自信がない」と回答。業種別で最も自信が高かったのは、金融サービス業で36%。一方、IT業界での自信があるという回答は3%にとどまった。
自信があると回答した割合は、EMCジャパンが2012年に結果を公表した同様の調査よりも2ポイント低い。また、2014年の国内企業が損失したデータ量の平均は4.62Tバイトとなり、2012年調査の624Gバイトと比べて増加している。今井氏は「IT環境が肥大化、複雑化している現状が背景にある。データ損失の発生件数は減少傾向にあるが、1件当たりのデータ損失量は激増している」と現状を指摘する。
バックアップ/レプリケーションがデータ保護対策の中心
実際のデータ保護への対策状況はどうなっているのか。データ保護のために実施している対策としては、「バックアップ」(37%)と「レプリケーション」(36%)が多く挙げられた。
一方、「継続的なバックアップを全く行っていない」という回答が約6割(62%)を占めた。データ保護の成熟度が高い企業では、何らかのデータを継続的にバックアップしている割合は70%だが、下位カテゴリに位置付けられた企業では29%にとどまる。
また、アプリケーションやシステム、データの可用性対策としては「クラウドへの自動バックアップ」「ディスクベースのバックアップとリカバリ」「テープによるバックアップ」(自社施設、第三者施設)を導入しているという回答が多かった。各企業が多様な対応策を取っていることがうかがえる。
「データ保護インフラストラクチャに複数のベンダーのテクノロジーを利用しているか」という質問に対して、58%が複数のデータ保護ベンダー(平均2社)の製品・サービスを利用していると回答した。特に、小売り・製造では約6割が複数ベンダーの製品・サービスを利用していることが分かった。
今回の調査では、データ保護対策で利用するベンダー数が多いほど、データ損失を経験した割合が高くなる傾向にあることも分かった。単一ベンダーのみを利用している企業は14%、2社のベンダーを利用している企業は26%、3社以上のベンダーを利用している企業の約3分の1(32%)がデータ損失を経験している。EMCジャパンでは「管理対象が増えることで、管理が難しくなったことが背景にある。また、混在するバックアップ環境の責任分解点の切り分けが難しくなるなど、マネジメント観点でのリスクがコスト増につながっている」と分析する。
クラウドにおけるデータ保護の責任問題
今後のデータ保護戦略として、クラウドサービスの導入意欲が高まっていることが分かった。データ保護クラウドサービスの導入率および導入予定を聞いたところ、クラウドを活用するリカバリサービスである「Recovery as a Service」を利用中とする企業が34%(導入予定 35%)で、クラウドを活用するアーカイブサービスである「Archive as a service」を利用中とする企業が30%(導入予定 34%)、クラウドを活用するバックアップサービスである「Backup as a service」を利用中とする企業が23%(導入予定 37%)だった。
その一方で、ビッグデータやモバイル、ハイブリッドクラウドなど新しい技術・トレンドの台頭によって、データ保護に関する新たな課題が生まれている。今回の調査では、回答者の50%が「ビッグデータやモバイル、ハイブリッドクラウドのデータ保護は難しい」と回答。特にデータ保護環境への可視性と管理性を求める傾向にあるという。
また、パブリッククラウド環境のデータ保護対策の責任の所在については、「自社IT部門」(70%)、「クラウドサービスベンダー」(43%)、「社内の各事業部門」(15%)に責任があると回答するなど意識の差が見られる。今井氏は「特にクラウド環境でデータ損失やシステム障害が発生した場合、問題の所存のグレーゾーンが発生する可能性がある。利用に当たってはステークホルダー間で共通認識を持つことが大事である」と説明する。
データ保護への圧力は変わらない
海外に目を向けると、データ保護の成熟度については中国(42.5ポイント)やインドネシア(41.7ポイント)などが高い。自己申告がベースとなる意識調査では、国民性の違いが反映されていることも考慮する必要があるが、日本企業の成熟度は平均26.9ポイントであることを考えると、多くの日本企業が自社のデータ保護環境を厳しく評価しているといえる。また、EMCジャパンでは「レガシーシステムが多い日本では、それが足かせとなって新しい技術の導入が遅れている」と考察。データの爆発的な増加と新しい技術・トレンドによって、データ保護への圧力は今後も変わらないと説明する。
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