【連載コラム】医療ITの現場から
多くの患者が選ぶクリニックとは? 鍵を握るスマホ時代のマーケティング戦略
「患者は医療機関に何を望んでいるのか」「再訪したくなるのはどんな医療機関か」など、多くの患者に選ばれるクリニックになるために役立つ医療機関向けマーケティング戦略を解説する。
「患者(消費者)に対して医療(サービス)を提供する」という観点から、医療分野でもマーケティング活動を進める動きがあります。マーケティングの定義や手法には諸説ありますが、医療分野に限って言えば「患者が必要なときに自院を選んで来てくれる仕組みを作る活動全般を指す」と表現できます。
従来、医療機関のマーケティング活動では、人づてに伝聞する「口コミ情報」を最も重視してきました。しかし、口コミ情報の伝達手段も時代によって変化しています。本稿では、伝達手段の変化とともに変わるマーケティング手法を解説します。
テレビ時代の法則「AIDMA」
マーケティング活動では、「AIDMA(アイドマ)」という考え方が以前よく用いられていました。AIDMAとは、
- Attention(注意)
- Interest(興味)
- Desire(欲求)
- Memory(記憶)
- Action(行動)
の頭文字を取ったものです。広告宣伝に対する消費者心理のプロセスを示した略語で、このプロセスは主にテレビCMを意識した言葉です。例えば、新発売の飲料のCMを流して注意を引くことで、消費者に商品を知ってもらい、興味や欲求を生み出し、「飲みたい」と記憶に刷り込むことで実際の行動(購入)につなげるというものです。
インターネット時代の法則「AISAS」
一方、インターネットが普及する過程で「AISAS(アイサス)」という考え方が提唱されるようになりました。AISASとは、
- Attention(注意)
- Interest(興味)
- Search(検索)
- Action(行動)
- Share(情報共有)
の頭文字を取ったもので、インターネット時代の購買行動プロセスを示した略語です。AIDMAが消費者心理を表現するのに対して、AISASは実際の購買行動の過程を表しています。
Googleなど検索サービスが普及して「ググる」という言葉が誕生したように、現在はまずはインターネットで検索するという行為が購買行動の中心になりました。そのため、商品やサービスを提供する側は「ネット検索結果の上位にいかに表示されるか」を重視するようになっています。
SNSの普及で「情報共有」がより重要に
また、「Twitter」「Facebook」に代表されるSNSが普及することで、Share(情報共有)することが誰にでも簡単に、そしてスピーディにできるようになりました。
例えば、昨今話題になっている異物混入事件。SNSによって広く知れ渡り、企業の業績を大きく左右する事態にまで発展しています。この事件によって「悪い(うわさなどの)情報は、良い情報の共有が広まる速度以上に急速に広まる」「自院にとって良くない情報が拡散しないようにすることが重要である」ことなどが分かるでしょう。
2人に1人が外出先ではスマホでインターネット
現在、情報伝達手段としてスマートフォン(スマホ)が急速に普及しています。総務省の調査「平成25年通信利用動向調査」によると、2013年末時点でのスマホの世帯保有状況は62.6%で、対前年度比で13.1ポイント上昇(2012年末時点は49.5%)するなど急速な伸びを示しています。また、家庭外のインターネット利用端末としてはスマホが43.4%となり、「自宅以外のクライアントPC」の25.2%を大きく上回っています。スマホがクライアントPCに取って代わる時代を迎えているといえるでしょう。
スマホ時代の法則「ASIASS」
スマホ時代の医療消費行動はどのような傾向があるのでしょうか。患者の行動から考えてみましょう。
例えば、外出先で突然腹痛に襲われたとします。病院で診察してもらうためにすぐにスマホを取り出し、近隣の病院を検索します。検索キーワードに「神田、病院」あるいは「神田、病院、腹痛」と入力すると、すぐに周辺の医療機関の情報を表示します。
検索後に表示されたリストから「良い病院はどれか」「今すぐ受診できる病院はどれか」と各病院のWebサイトを吟味。条件にあった病院が見つかれば、すぐにその病院に向かいます。病院で受診後、病状が無事治まれば「良い病院だった」と満足し、口コミ投稿サイトに投稿するかもしれません。もし、受診時に長く待たされたり、対応が良くなかったりすれば、病院にとって良くない情報を投稿することもあります。
飲食店に比べると、医療機関の口コミ投稿サイトはそれほど普及していません。投稿する条件としては、サービスが「極端に良い」か、サービスが「極端に悪い」かのどちらかの場合が多いと考えられます。しかし、今後医療機関の口コミ投稿サイトが普及すると、いずれはその情報が医療の消費行動を大きく左右することになるでしょう。
この医療における消費行動を先の理論に当てはめると、
- Attention(注意)
- Search(検索)
- Interest(興味)
- Action(行動)
- Satisfaction(満足)
- Share(情報共有)
となります。いわば「ASIASS」の法則だといえます。
患者満足度をどう高めるかがより重要
今後はインターネット接続の主端末がクライアントPCからスマホへのシフトが進むことは確実で、より幅広い世代にスマホが普及すると考えられます。口コミ投稿サイトを利用するような消費行動を取る患者も増えると予想されます。
医療機関は患者受診時に十分満足できるサービスを提供することに加えて、スマホで検索した際に上位に表示されたり、見やすく分かりやすいWebサイトを提供することも重要になると考えられます。
また、発信先がインターネットに代わることで、口コミ情報自体をより広く発信しやすい時代を迎えます。今後の医療機関には、口コミの元となる患者満足度を高めるサービスの提供がこれまで以上に求められるでしょう。
著者紹介
大西大輔(おおにし だいすけ) メディキャスト株式会社 メディプラザ統括マネージャー
2001年一橋大学大学院MBAコース卒業後、同年日本経営入社。2002年に医療機関の“選ぶ”を支援する展示場「メディプラザ」の1号店を東京(神田)に立ち上げ、その後2003年にメディプラザ大阪、2005年にメディプラザ福岡を順次開設。2007年より東京・大阪・福岡の3拠点を統括する統括マネージャーに就任。専門の医療IT分野については、医師会、保険医協会などの公的団体を中心にセミナー講師を多数実施。
【関連サイト】
電子カルテ活用のためのショールーム「メディプラザ」
医師の右腕を育成する「電子カルテ+クラーク養成講座」
医院・クリニックのオフィシャルホームページ制作システム「Wevery!」
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