スマホ、タブレット用のヘルスケアアプリが増大
“モバイル医師”が健康管理の主役に 進む医療分野のデバイス活用
スマートフォンやタブレットなどのモバイル技術は、ヘルスケア分野にも急速に浸透しつつある。特に、医療ITの分野において、ヘルスケアアプリがこれまでよりも主流の役割を担いつつあるという。
「革命(レボリューション)」という言葉は、恐らくあまりにも簡単に多くの技術革新に使われている。だが最近の技術進歩、とりわけモバイルコンピューティング分野における技術進歩は確かに、人々のコミュニケーション方法や情報の収集・活用方法に大きな「革命」をもたらしており、中には、患者の健康状態管理の分野に大きな影響を与えているものもある。
スマートフォンやタブレットなどのモバイルデバイスは、コンシューマー市場に広く浸透しつつある。米Forbes誌の最近の記事によると、米国では国民の80%以上が「携帯電話を所有し、日常的に使用」しており、そうした携帯電話の約50%を「iOSやAndroidなどのOSで動作し、Webを閲覧したりアプリをダウンロードして実行したりできるスマートフォン」が占めているという。
モバイル技術は一般コンシューマー市場だけでなく、ヘルスケア分野にも急速に浸透しつつある。米IT系サイト、InformationWeekに2011年に掲載された記事によると、「スマートフォンまたはタブレットを仕事中に使用」している医師は全体の80%に上り、医療IT分野の国際的な業界団体HIMSS(医療情報管理システム協会)の報告書によれば、「医師の93%は何かしらのモバイル技術を日常的に使用し、80%は患者の治療に直接影響する形でタブレットまたはスマートフォンを使用している」という。
InformationWeekでは、医師の間でモバイルデバイスの人気が高い理由として、「手頃な価格」「使い勝手の良さ」「携帯性」(回診時に持ち歩けば、電子カルテに簡単にアクセスできる)などが挙げられている。世代が進むごとに軽量化や多機能化が図られ、一方で手頃な価格帯が維持されているからこその結果でもある。
高性能なヘルスケアアプリが主流に
医療分野におけるモバイル技術の採用をけん引しているまた別の要因としては、スマートフォンやタブレット向けの多様なアプリの存在も挙げられる。今では、薬剤投与量の計算機からフル機能版の電子カルテまで、考え得るほぼ全ての医療分野のニーズに関して、主要スマートフォンOSのそれぞれにアプリが存在している。興味深いことに、医療従事者の間ではAndroidよりもiOS搭載デバイスの使用率が高いようだ。モバイル医療IT・ヘルスケアアプリ専門の情報サイト、iMedicalApps.comの調査によると、人気の医療アプリ「UpToDate」を使用しているモバイルユーザーの90%をiOSデバイスの利用者が占めている。
InformationWeekによれば、モバイルデバイスの有用性を大きく左右しているのは、ヘルスケアアプリの存在だという。ヘルスケアアプリは、スマートフォンやタブレットを「血液検査の結果や投薬情報、血糖値、医療画像などを取り込める医療機器」へと変え、医師や患者による健康データの管理と測定をサポートする。医療ITの分野において、ヘルスケアアプリがこれまでよりも主流の役割を担いつつあるのは明らかだ。アーリーアダプター(早期採用者)が散発的に利用する段階は既に終わったのだ。
モバイル技術が医師のワークフローを改善
高度な医療システムの普及を推進する私的財団、米CommonwealthFund.orgの記事によれば、医師にとってモバイルアプリの最大の魅力は、「自身のワークフローに容易に統合でき、必要なときに必要な場所にデータを届けられる点」にあるという。「さらに、大半のアプリはさまざまなモバイルデバイスに柔軟に対応しており、多くの場合、医師は手持ちのデバイスを活用できる。この点も大きな魅力だ」と、記事は続く。医療提供者が必要なデータを診察の場に持ち運べるのは、こうした携帯性と柔軟性のおかげであり、これらの特性が医療機関にモバイル技術の採用を促す重要な要因となっている。米ITソリューションプロバイダーCDWの調査では、回答者の84%が「タブレットを使うことで、よりスムーズにマルチタスクをこなせる」と答えている。
今後の成長が確実視される業界にとって、これは喜ばしい調査結果だ。医療従事者・医療IT技術者向けの情報サイト、米Clinical-Innovation.comの調査報告によれば、「モバイル医療(mHealth)の分野では今後、アプリの充実によって、リモート患者モニタリングからモバイル超音波診断まで多種多様なサービスが可能となり、世界のモバイル医療市場は2018年までに207億ドル規模に拡大する見通し」という。さらにこの報告書によれば、ワイヤレス医療市場は向こう5年間で20%以上の成長が見込まれている。
モバイル技術が患者エンゲージメントを支援
スマートフォンやタブレットが役立つのは、医師の臨床ワークフローにおける補佐役としてだけではない。モバイル技術の導入は、医療提供者と患者との相互作用の性質も変えつつある。そうしたメリットの1つとして、ITは患者の生理学的データの他、ライフスタイルや環境面に関するデータを記録した上で、そうした情報を活用して、患者自身による健康状態やライフスタイルの管理を支援し、医療提供者との情報交換を促進できる。
ヘルスケアを提供する場はもはや、患者と医療提供者が直接顔を合わせる場だけに限らない。最新のスマートフォンアプリは、「従来の遠隔医療アプリ」と「最新の生理学的データ追跡アプリやライフスタイル管理アプリ」を統合する方向へと向かっているようだ。実際、スマートフォンを始めとする各種のモバイル技術は、「人々に自身の健康管理とライフスタイル管理に積極的に取り組んでもらうための理想的なツール」といえる。何しろ、そうしたモバイルデバイスは常に電源が入っていて、常にネットに接続し、すぐにデータを収集でき、いつでも手元にある。Clinical-Innovation.comの報告書によれば、モバイルデバイスは「利用者に関するさまざまな変数を収集し、センサーや集計器、ディスプレーとしての役割を果たせるので、患者エンゲージメント(患者が自分の治療に積極的に関与すること)の補佐役として最適」だという。
今後、モバイル技術が進化を続け、より多くの医療機能をサポートし、より広く採用が進めば、さらなる医療改革も期待できる。そこで重要となるのは、技術というよりも、「患者や医療提供者、雇用側など、関係者同士がどのように情報をやりとりすれば、透明性や効率性、信頼性を高められるか」だ。こうした問題をクリアしてこそ、「患者の健康を維持し、最も効率的かつ安全な方法で最も効果的な治療を提供する」という最終目標を実現できる。
本稿筆者のトレバー・ストローム氏は、科学修士およびPMP(プロジェクトマネジメントプロフェッショナル)の有資格者で、臨床医および医療機関リーダーがエビデンス(証拠)を基に意思決定を下すための情報科学・アナリティクスツールの開発を率いる。講演者、著者、ブロガーでもあり、医療分野に特化した開発情報を提供するWebサイト米HealthcareAnalytics.infoの創設者。『Healthcare Analytics for Quality and Performance Improvement』は同氏の著書。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
2
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
3
「Excel至上主義」の終わらせ方 丸2日の手作業地獄から情シスと現場を救うには
-
4
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
5
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
6
「AI時代の統合基盤・エンタープライズAI管理」に関するアンケート
-
7
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
-
8
本当に安いPCで十分か? “すぐ重くなる”を防ぐノートPC選びの絶対条件
-
9
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
10
Claudeの不可視透かしに批判殺到 著作権消失や誤判定に潜む企業リスク
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー