EdTechフロントランナー【MetaMoJi編】
タブレット授業に“紙とペン”の良さをもたらす「MetaMoJi Share for ClassRoom」
MetaMoJiの「MetaMoJi Share for ClassRoom」は、書き込み内容の即時同期機能や“あえて変換しない”手書き入力機能を備え、紙とペンの世界をタブレットで再現する。
紙とペンの感覚を、なるべくそのままタブレットで再現したい――。こうした考えの下、手書きにこだわったソフトウェアを開発し続けているベンダーがMetaMoJiだ。そんな同社が2014年11月、教育機関向けに発表した授業支援ソフトウェアが「MetaMoJi Share for ClassRoom」である。
2015年2月末のiOS版に続き、Windows版も同年3月中にリリースされるMetaMoJi Share for ClassRoom。その特徴とは何か。MetaMoJi事業企画部ディレクターの早瀬雅之氏と、法人営業推進部ディレクターの藤田剛史氏に話を聞いた。
MetaMoJi Share for ClassRoomとは:協働学習を支える“デジタル模造紙”
MetaMoJi Share for ClassRoomを一言で表現するなら、「デジタル模造紙」だ。
教育現場では、調べ学習や協働学習の結果を1枚の模造紙などに“新聞”としてまとめることがある。複数の学習者が同じ模造紙に同時並行で記入していると、どうしても隣の学習者の手や体が重なってしまい、作業しにくい。
そこで役立つのが、複数の学習者が互いの作業状況をシェア(同期)しながら作業できる機能だ。製品名の由来でもあるこの機能は、同製品の大きな特徴である。これを使うと、ある学習者が各自のタブレットに記入している内容を、ほぼリアルタイムで他の学習者と同期できる。
個別学習からグループ学習まで、幅広い学習スタイルを支援
MetaMoJi Share for ClassRoomは、さまざまな学習形態で役立つ機能をそろえる。
個別学習に役立つのは、教員向けの管理画面で学習者の作業状況をほぼリアルタイムに表示できる機能だ(画面1)。クラス全員に同一の課題を配布して、一斉に取り組んでもらうといった演習形式の授業/講義に適する。
個別学習とは別に、グループ学習向けの機能も備えている。この場合、ノートの作成状況は同一グループのメンバー間だけで共有される。班員同士が進捗状況を互いに確認し合える一方で、他の班の情報は見えない。なお、各グループの作業状況は個別学習時と同様に、教員向けの管理画面でほぼリアルタイムに確認可能だ。複数の班でグループワークをした後に、班ごとに発表するときなどに最適な機能だといえる。
教員向けの管理画面には他にも、教員から学習者個人またはグループのノートに書き込んでヒントやアドバイスを提供する機能を搭載。個人/グループが作成した成果物を画面に一斉表示し、その中から1つを拡大表示する電子黒板のような操作も可能だ。さらに、学習者の画面を一時的にロックする「先生に注目」機能なども備える。
“こっそりヘルプ”“こっそり指導”も可能に
学習者向け画面には、「問題の解き方が分からない」など教員にヘルプを送信するための機能も設けている。この機能と、前述した教員向け管理画面をうまく生かせば、問題の解答や作業でつまづいている学習者を教員がうまく見つけて、個別指導できるようになる。
ヘルプ送信機能を使うと「他の学習者に分からないように」ヘルプを出せる。学習者自身がヘルプを求めた場合だけでなく、教員からも管理画面で進捗が遅れている学習者を見つけることができる。こうしたときに学習者の画面に赤字でヒントを書き込むんで、こっそりとサポートすることもできる(画面2)。学力の差が付きやすい高学年の学習者や担当教員から喜ばれそうだ。
競合商品との違い:「手書き入力」「パフォーマンス」に強み
MetaMoJi Share for ClassRoomが属する授業支援システムの分野には、実はかなり競合が多い。タブレットと電子黒板の連係で、学習者の作業情報をモニタリングするシステムは、電子黒板ベンダー各社が既に販売している。またSKYの「SKYMENU Pro」やLoiLoの「ロイロノートスクール」に加え、codeTaktが開発する、Webブラウザで動作する授業支援システム「School Takt(旧: RealTime LMS)」なども同様の機能を備える。
こうした競合との差異化ポイントとして早瀬氏が挙げるのが、漢字仮名交じりの手書き入力文字を正しく変換してくれる手書き入力アプリ「mazec」を標準搭載していることと、画面描画の高速さだ。
“あえて変換しない”手書き入力アプリを標準搭載
mazecは、MetaMoJiが2011年2月にリリースしたノートアプリ「7notes」から同社が培ってきた技術の結晶ともいえるアプリだ。「これまでアプリ内課金などで有償オプションとして提供してきたが、標準搭載は初」(藤田氏)だという。
教育機関向けのMetaMoJi Share for ClassRoomに合わせて、mazecも教育機関での利用に配慮して機能をカスタマイズしている。その代表例が、仮名漢字変換の候補をあえて出さない設定を用意にしたことだ。例えば、「おののいもこ」と平仮名で文字を書いても変換候補に「小野妹子」と表示しないが、正しく漢字で書けば変換候補に表示する、といった制御を可能にする(画面4)。
さらに、学年別漢字配当表に合わせて変換候補を絞り込む機能を用意。未履修の漢字を変換候補に出さないようにすることもできる(図)。
筆者もiPadでmazecを利用しているが、漢字、平仮名、数字が混じった手書き文字を高精度で認識してくれるので、打ち合わせ時のメモに使っていたBluetoothキーボードの出番が目に見えて減った。
MetaMoJi社長の浮川和宣氏が「クライアントPCやiPadの初心者で、ローマ字入力を覚えるだけで一苦労だという人でも、mazecであればちょっとした説明をすればすぐ使える」と説明するように、mazecはタブレットでの文字入力のハードルを大きく下げる効果を持っているといえるだろう。
クライアントアプリならではのパフォーマンスも訴求
MetaMoJi Share for ClassRoomのもう1つの差異化ポイントである画面描画における遅延の小ささ。それを支えるのが、端末にインストールするクライアントアプリの存在である。
授業支援アプリの中には、前述のSchool TaktのようにWebブラウザのみで動作し、タブレット側に専用クライアントアプリを必要としないWebサービス形式のものもある。導入のしやすさでは、こうしたクライアントソフト不要のアプリに軍配が上がる。
ただし、Webサービスのネックとなるのが画面描画の遅延である。最近はハードウェアの進化やHTML/JavaScriptエンジンの高速化もあって、Webサービスの画面描画はスムーズになりつつあるものの、クライアントアプリには及ばないのが現状だ。MetaMoJi Share for ClassRoomがクライアントアプリを採用したのは、スムーズな利用感を優先した結果だといえる。
筆者は2014年2月に開催したワークショップで、MetaMoJi Share for ClassRoomと同じ仕組みを持つ通常版の「MetaMoJi Share」を使った経験がある。iPad50台でMetaMoJi Shareを利用し、接続環境は一般的な100Mbpsの光回線に、Appleのコンシューマー向け無線LANアクセスポイント「AirMac Extreme」と、決して潤沢な環境ではなかった。それでも、来場者全員が同時に書き込んだ際も画面描画はスムーズで、支障なくワークショップを進めることができた。
こうした画面描画の早さは、「インターネットに抜ける必要がない通信はLAN内に留めたり、新たに描画された線だけを差分更新して通信するデータ量を減らしたりといった工夫の積み重ね」(早瀬氏)で実現しているという。「クライアントアプリでなければこのパフォーマンスは出ない」と同氏は断言する。
学校からの“想定外”の支持で製品化
リアルタイム同期をはじめとするMetaMoJi Share for ClassRoomの基本機能は、前身である通常版のMetaMoJi Shareで既に実現していた。MetaMoJiでは同アプリをベースに、企業がiPadを使ったデジタル会議をするシーンを想定して、企業版である「MetaMoJi Share for Business」も開発・販売している。
このMetaMoJi Share for Businessは、企業利用を想定していたにもかかわらず、蓋を開けてみると予想以上に教育機関からの引き合いが多かったという。MetaMoJiはこうした状況を踏まえ、MetaMoJi Share for Businessに教育機関向けの機能を追加実装および一部機能の集約を実施し、MetaMoJi Share for ClassRoomを生み出した。
mazecについても、前述の通りMetaMoJi Shareや「MetaMoJi Note」といった既存製品の有償オプションとして提供していたが、同社の想定以上に教育分野で支持されてきたため標準搭載に踏み切ったという。「特に小学校教員のmazecユーザーからは『正しく漢字を書かないと変換候補が出ないようにしてほしい』という声を多く受けていた」(早瀬氏)。こうした声を踏まえ、MetaMoJi Share for ClassRoomでは“あえて変換しない機能”をはじめとする教育機関向け機能を盛り込んだ。
大人であっても、コンピュータでの文字変換に慣れてしまい、漢字がすぐに思い浮かばなくなったという人は少なくない。MetaMoJiは、小学校など教育機関へのタブレット導入が進む際に顕在化する「手で字を書く機会の減少」、さらに低学年における「キーボードやローマ字入力の壁」といった課題を、手書き入力と変換制御との組み合わせで解消しようと考えている。
提供形態と価格:クラウド版は同時接続数課金 オンプレミス版も用意
MetaMoJi Share for ClassRoomは、管理サーバの機能をWebサービスとして提供する「クラウド版」と、管理サーバを教育機関の拠点に構築する「オンプレミス版」の2種類をそろえる。特に同社が推奨するのがクラウド版であり、価格設定の柔軟さが強みだという。
クラウド版の場合、ライセンスはユーザー数やデバイス数ではなく、最大同時接続数でカウントする。例えば、学習者は200人いるがタブレットは40台しかない教育機関の場合、仮に全学習者に個別IDを発行しても、同時に利用できるタブレットは最大40台なので、課金契約は最大でも40ライセンス分で済む。一部のタブレットでしか利用しないのであれば、ライセンス数をさらに抑えることも可能だ。
クラウド版の料金(税別)は、初年度ライセンス費用が導入費用と20ライセンス分込みで22万4000円、1ライセンス当たりの年額利用料金は1200円(月額換算100円)で、1ライセンス当たり1Gバイトまでのデータ転送量と2Gバイトのストレージ利用権を含む。ストレージは、ライセンス数×2Gバイト分の容量を全員で共有することになるが、不足するようであれば有料で20Gバイトずつ追加できる。
一方のオンプレミス版は買い切り型で、標準価格(税別)はサーバと20台の生徒用ライセンスで46万円、追加ライセンスが1ID当たり3000円だ。有償オプションの保守サポートは年額10万円。ただし、価格は導入規模や条件によって変動する。
オンプレミス版は、教育機関や教育委員会の独立したネットワーク内にサーバを設置し、閉じた環境で利用する。ライセンス面での同時利用数の上限は特に設けておらず、大規模利用の際は相応の処理能力を備えたサーバや通信回線を調達することになる。
クラウド版を推奨しつつオンプレミス版を併売するのは、授業や講義では学習者が特定できる顔写真などの個人情報を扱うこともあり、それがベンダーのデータセンターに格納されることについて「慎重な自治体や教育機関が多い」(早瀬氏)ことが理由だという。
なおmazecは、iOS 8以降向けの単独アプリとしてもリリースされている。Appleのアプリケーションマーケット「iTunes」における執筆時点での価格(税込)は900円だ。
今後の展開:授業を縛る「著作権」「場所」のハードルを越える
上述の通り、2015年2月末のiOS版に続き、同年3月にはWindows版もリリースされるMetaMoJi Share for ClassRoom。Android版も要望が多ければ数カ月で開発できる体制を確保しているなど、マルチプラットフォーム化を見据えて開発を進めている。
MetaMoJi Share for ClassRoomの将来について、早瀬氏と藤田氏は「コンテンツとのセット提供」「遠隔授業への活用」を描く。
1つ目のコンテンツとのセット提供については、例えば映像など各種教材を持つ企業と連携し、良質な素材を用いた作品作りや協働作業ができる形にしていきたいという。
デジタル教科書をはじめとするデジタル教材を活用する教育機関は今後増えると考えられるものの、デジタル教材の二次利用には「著作権」の壁が立ちはだかり、利用の幅が制限されてしまうのが現状だ。MetaMoJi Share for ClassRoomで著作権問題をクリアしたデジタル教材を気軽に利用できるようになれば、学習プラットフォームとしての価値が増すこともあり、筆者としてはぜひとも実現してほしいと考える。
2つ目の遠隔授業への活用については、MetaMoJi Share for ClassRoomが備える教員向け管理画面が大きな鍵となる。
同一空間内での授業であれば、学習者の机を巡回する机間巡視をすれば、学習者の作業状況は十分に把握できる。だが離島や海外の姉妹校と連携授業をしたり、病気の学習者に自宅や病院から授業に参加してもらうなどの遠隔授業では学習者の様子が直接見えず、教員が個々の学習者の状況や理解度を把握するのが難しくなる。
そこで役立つのが、MetaMoJi Share for ClassRoomの教員向け管理画面が持つ、学習者の作業状況をリアルタイムに把握できる機能である。遠隔地にいる学習者を、ツールを通して“机間巡視”できるので、遠隔授業に大いに役立つはずだ。
さらにMetaMoJi Share for ClassRoomは、「Google ハングアウト」「Skype」といったビデオ会議/音声通話アプリとの並行利用も可能だ。実際、MetaMoJiが2014年11月に開催した発表会では、都内から徳島県にいる開発チームに音声通話アプリで通話をしながら、MetaMoJi Share for ClassRoomで作業をするデモも披露した。ビデオ会議/音声通話アプリとの組み合わせで、低コストかつ臨場感のある遠隔学習環境が構築できる。
文部科学省は高等学校を対象に、遠隔授業でも一定要件下で単位を認定する方針を示している。単位認定のための生徒評価については、執筆時点では「遠隔地から授業をする教員が実施することが適当」との判断がなされている。遠隔授業において生徒の理解度を適切に判定するには、学習者の作業状況が客観的にモニタリングできるMetaMoJi Share for ClassRoomのようなツールが必須になってくるだろう。
手書きとリアルタイム性にこだわった授業支援アプリの期待の新星、MetaMoJi Share for ClassRoom。間もなくリリースされる本製品が、2015年の教育ITにどのようなインパクトを及ぼすか、期待しながら見守っていきたい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
2
「Excel至上主義」の終わらせ方 丸2日の手作業地獄から情シスと現場を救うには
-
3
「Microsoft 365のセキュリティ運用」に関するアンケート
-
4
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
5
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
6
「Salesforceのテスト自動化ツール」に関するアンケート
-
7
IT製品の導入に関するアンケート「サーバ&ストレージ」編
-
8
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
9
「AI時代の統合基盤・エンタープライズAI管理」に関するアンケート
-
10
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー