EdTechフロントランナー【ベストティーチャー編】
“世界に1つだけのテキスト”で正しい英語が話せる「ベストティーチャー」
これさえやれば英語が話せるようになる。そんなサービスを作りたい――。こうした思いから生まれたのが「ベストティーチャー」だ。提供元の宮地俊充CEOにその特徴と、教育機関での活用の可能性を聞いた。
「日本の英語教育は何も成し遂げていない」――。こう話すのは、英語学習Webサービス「ベストティーチャー」を運営するベストティーチャーのCEO、宮地俊充氏だ。「『これさえやれば英語が話せるようになる』というサービスを提供し、日本のグローバル化に貢献したい」と宮地氏は宣言する。
英語習得に悩む日本人、そして教育機関に、ベストティーチャーは何を提供しようとしているのか。宮地氏へのインタビューから明らかにする。
ベストティーチャーとは:言いたいことが“正しい英語”で話せるサービス
「いろいろな英語学習方法を試してみたが、この方法が一番だった」。宮地氏は外国人と一緒に働いてきた過去の経験から、ビジネスに通用する英語力を身に付ける最善の方法は、自分が「使いたい」と思い、かつ「正しい」英語のフレーズをなるべく多く頭の中にストックすることだと気が付いた。この方法は、米Google元副社長兼日本法人社長の村上憲郎氏が提唱している英語学習法に近い。
自分の家族の説明や業務に関連した、よく使う便利なフレーズを100種程度ストックできれば、それを起点に「英語はかなり話せるようになる」(宮地氏)という。この学び方をWebの力で容易にしたのがベストティーチャーだ。
英作文と英会話で“自分だけのフレーズ”をマスター
ベストティーチャーの詳細な機能については後述するが、基本的な学びのフローは以下のようになる。フローの最後にある「Skype」の利用にはWebカメラ付きのクライアントPCやスマートデバイスが必要になるが、英作文と添削は全てWebブラウザで完結する。
- 事前に用意された460種以上のシーンやトピック(勤め先や家族、趣味など)の中から1つを選ぶ
- 最初の質問(例えば自己紹介であれば、“What’s your name?”)に対して、自分なりの答えを英作文して送信
- 約30分から6時間(※)で、質問の答えに関連した質問が送られてくる(例えば、“I’m pleased to meet you,(受講者名). My name is (講師名). Can you tell me more about yourself?”といった具合)
- この質問にも同様に自分なりの回答を英作文して送信する。するとまた次の質問が送られてくる
- 同様のプロセスを3~5回繰り返すと、講師がやりとりをまとめて添削済みの英文とその発音例を送ってくれる。その内容が「自分だけの添削と音声付テキスト」になる
- このテキストとSkypeを使い、25分間の英会話レッスンを受講する
※ 実際に試してみると、単純な内容であれば5~20分程度で返ってくるケースが多かった。
上記のフローからも分かるように、ベストティーチャーは英語を書くことと話すことを重視している。学習者ごとにパーソナライズされた正しい英語フレーズを、1回のレッスンで幾つもストックできる。さらに、そのフレーズをSkypeによる英会話レッスンで実際に使ってみるところまでコーディネートされているというわけだ。
この英会話レッスンは、自分が話したいと思った英文を話す場となるので、明確な目標やモチベーションを持って挑むことになる。一般的なSkype英会話サービスにありがちな「他人と同じような自己紹介+α」で終わってしまうことにはなりにくいのがポイントだ。
7割が英語ネイティブの講師、月額税込5000円台で受講し放題
添削や音声の録音、英会話レッスンを担当する講師は15カ国以上から採用しており、「7割が英語ネイティブの国、残りがアジア圏出身」だと宮地氏は説明する。英語は国によって、同じ表現でも発音やアクセントが若干異なる。「さまざまな国のアクセントに慣れる観点から、あえて多様な国から講師を採用している」(宮地氏)と、グローバルなリスニング力育成への配慮も見せる。
気になる料金は、月額5980円(税込、以下同じ)の1メニューのみと非常にシンプルだ。英作文添削と英会話レッスンを全て含み、月に何度も受講しても料金が変わらないことを考えるとお得感がある。英語ネイティブの講師が7割と多いが、「安価で雇えるフィリピンの大学生が講師を務める、一般的なオンライン英会話と同じ月謝でも利益が出せる」と宮地氏は明かす。
その他、日本語で記述した内容を英語に翻訳し、音声ファイルと共に提供する「テーラーメイドレッスン」というメニューも用意しており、こちらは1レッスン1050円のオンデマンド課金だ。初めて利用するユーザーのために、5回分の作文添削とSkype英会話が1セット無料で体験できる「無料体験」も提供している。
競合との違い:2014年春より「リアル書籍」との連携も開始
ベストティーチャーの競合としては、「レアジョブ」に代表される“格安Skype英会話サービス”が挙げられるだろう。英作文添削については、世界中の登録ユーザー間で投稿した文章を翻訳しあうSNS「Lang-8」のようなサービスが競合になり得る。ただし、英作文添削と英会話レッスンをセットで取り扱うような直接的な競合は存在しない。こうした事情も手伝い、企業が英語の研修用プログラムとして採用する事例が既に数十社あり、「売り上げは順調に伸びている」(宮地氏)という。
注目すべきは、2014年春から大学生・社会人向け教育コンテンツ販売のZ会CA(静岡県三島市)とのパートナーシップを締結し、同社が出版する松本 茂監修の書籍『会話がつづく! 英語トピックスピーキング』との連動サービスがスタートしたことだ(画面1)。具体的には、同書籍の購入者向けに、ベストティーチャーの仕組みで書籍に掲載されているシーンを学習できるサービスを提供開始した。「英語学習に対する考えがZ会CAとマッチしたことが、パートナーシップ締結のきっかけになった」と宮地氏は言う。
会話がつづく! 英語トピックスピーキングはシリーズ化されており、2014年3月に登場した第1弾は日常会話、同年5月に発売された第2弾はビジネス会話といった具合に、シーン別にラインアップをそろえている。ベストティーチャー側では、同書籍の内容に合わせた会話シーンを各巻の発売に合わせて100種ずつ追加。「書籍そのものも“会話”の引き出しを増やせるように非常に良く考えられているが、ベストティーチャーとの組み合わせで、さらに魅力的な学習環境が実現できる」と宮地氏は自信を見せる。
もちろん、英作文の仕方次第では「書籍の内容に沿うだけでなく、少しずつ内容から離れていくこともできるので、自分だけの“英語トピックスピーキング”を作ることもできる」(宮地氏)という。このスキームはかなりの反響があったそうで、Z会CAと一緒に本を携えて企業への共同法人営業も開始しているそうだ。
ユーザーを支えるさまざまな支援ツール
ベストティーチャーの中核は「自分だけのテキスト」をWebブラウザで作る作業にある。この作業をサポートするために、ベストティーチャーはさまざまな機能を備えている。
英作文を支える機能の充実が、その一例だ(画面2)。入力ボックスはスペルチェック機能が常時稼働している他、Web英和辞典の「Weblio辞書」が画面内にコンパクトに呼び出すことができる。画面の右側には、同じシーンで他の学習者がどのようなやりとりをしたかが表示されており、これを参考に自分なりの表現を組み立てることができる。
今後の展開:教育現場への浸透に本腰
ベストティーチャーがこだわっているのは、「学習者に何となく“習い事”として続けてもらうことではなく、学習者の目的を達成してもらうことだ」と宮地氏は語る。こうした観点から今後は、ユーザーの裾野を広げていこうと考えているようだ。
その1つが学校教育現場での利用拡大だ。「現時点ではビジネスパーソンの利用が圧倒的に多いが、学校などの教育機関での本格的な導入も模索していきたい」と宮地氏は意気込む。特に昨今では、文部科学省がグローバルリーダーを育成する指定校制度「スーパーグローバルハイスクール」や「スーパーグローバル大学創成支援」といった事業を進めており、受験英語に傾倒しない“実践的な英語力”を指向する教育機関からの引き合いがあるという。
さらに、以下の目的を実現するためのツールとして、教育機関がベストティーチャーに関心を示すケースも増えてきているそうだ。実際に、導入の検証を進めている塾や学校などもあるという。
- 英作文を課す高校や大学の受験対策
- 「TOEFL」やベネッセコーポレーションの「GTEC」といった「読む」「書く」「聞く」「話す」の4技能が問われる英語試験の対策
- 英語の特定領域の学習
こうした動きも考慮し、先の書籍の事例のようなパートナーシップと絡めて「例えば、医療や会計など特定の領域や、TOEFL、『TOEIC』、『IELTS』などの資格試験に特化したコースも提供していきたい」と、宮地氏は広範囲の英語学習をカバーする意欲を見せる。
「日本語学習」にも意欲
スクール開校から3周年を迎える2014年5月にはバージョン5.0をリリース。続いてリリースするバージョン6.0では、iOS向けのクライアントアプリケーションを用意するという。現時点では英作文とその添削はクライアントPCなどの比較的大きい画面に最適化されており、スマートフォンなどの小さな画面では使いづらい部分もある。この辺りはユーザーのニーズに応える形でデザインしていくとのことだ。こうした工夫や改善を重ね、まずは「株式上場ラインに乗る『アクティブ有料会員1万5000ユーザー以上』に持っていきたい」と宮地氏は考えている。
将来的には「提供国や提供言語を広げることも考えて行きたい」と宮地氏は語る。前者は当然、アジアなど英語の学習意欲が強く学習人口も多い地域への進出をにらんでのことだが、後者については意外にも「日本語」にフォーカスすることを考えているようだ。「海外で日本語を学んでいる人は少なくない。そういう人たちのための学びのプラットフォームになれれば」と宮地氏は理想を描く。
「何も成し遂げていない」日本の英語学習を変える
一般に語学習得には「読む」「書く」「聞く」「話す」の4要素が必要であり、この中で日本人は「書く」と「話す」が苦手な傾向にあるといわれる。とはいえ、仕事で英語を使う際には、この2つの能力は極めて重要だ。英語を適切に書いたり話したりできなければ、意見の主張ができずに非常に不利になってしまう。実際に、その必要に迫られて英会話スクールなどに駆け込んだビジネスマンも多いのではないだろうか。
しかしながら、国内の学校英語教育は一斉授業形式が主流で、どうしても1人当たりの英作文や英会話の練習時間は不足しがちだ。しかも英会話能力については、大学受験などでもあまり問われていないために、対策も後手に回ってしまう傾向がある。コミュニケーションにおいて最も重要な「話す」の要素のケアが足りない事実こそが、冒頭の「日本の英語教育は何も成し遂げていない」という宮地氏の問題提起の根拠なのだ。
英作文や英会話は、正しい表現かどうかを第三者に評価してもらう必要があり、独習し難いという課題もある。ベストティーチャーであれば、オンラインで待機している講師陣の添削が英文の正しさを担保し、その英文を使ったコミュニケーションが成立するかどうかを英会話レッスンでチェックできる。発音も文法も表現も正しいことが担保されているので、学習者は自信を持って英文を話すことができるだろう。そして実際の英会話でも「はっきりと正しい英語が伝わっているという実感が得られる」(宮地氏)はずだ。
今までなかなか1人ではできなかった英作文や英会話を、Webの力で身近にしたベストティーチャー。語学はコミュニケーションの手段であり、相手に伝わることで初めて効果を発揮するといっても過言ではない。英語をもっと「話せる」「使える」日本人を増やすべく、宮地氏はベストティーチャーを改善し続ける考えだ。
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