ビジネス要件最優先では駄目
なぜ「社長の一押しモバイルアプリ」は現場で使われないのか
多くの企業では、モバイルアプリ開発のアプローチが本末転倒になっており、しかもそのことに気付いていない。経営陣の顔色だけ気にしていても、より良い結果は生み出せない。
一般コンシューマーにとって、モビリティとは単純なことである。お気に入りの端末を使い、特定のタスクを実行したいと思ったときに、それに適したアプリケーションが存在するということだ。一方、多くの企業はまだ、モバイル端末を利用して業務プロセスをどう改善するか模索している。
米コンサルティング会社Sepharim Groupが実施した2014年10~12月期のCIO(最高情報責任者)調査によると、82%の企業がモバイル端末の利用を認めている。ただし、メール以外のアプリを開発あるいは購入した企業は25%未満にとどまる。
企業の経営者たちは、自社のモバイル戦略がなぜうまくいかないのかを理解していないようだ。モバイル戦略を成功に導くには、メールアプリだけでなく、重要な業務プロセスの多くをモバイル化する必要がある。
正攻法のつもりが本末転倒に
モバイルアプリ開発の取り組み方として、自社が達成すべきビジネス要件を最も重視する企業が多い。その結果、自社のビジネス要件に合致してはいるものの、仕事をやりやすくしたいという従業員のニーズには対処できないアプリが開発されるケースが多くなってしまう。具体的には、経営幹部が社内のデスクトップアプリをタブレットに対応させるよう求めたら、その通りのものが出来上がる。すなわち、デスクトップの画面をタブレットに移しただけのアプリだ。
タブレットは、マウスの使用を前提にデザインされているわけではない。デスクトップ用にデザインされたメニューがたくさんあるアプリは、タッチスクリーンでは非常に使いづらい。こうした状況を放置しておけば、従業員はどこかよそでアプリを調達するようになり、企業は目標としていた生産性と管理性の改善が難しくなる。
こうしたシナリオを避けるには、企業は「FUN(Focus on User Needs:ユーザーニーズ重視の)原則」を採用する必要がある。これは「ユーザーは全てコンシューマーだ」と認識する原則だ。今日、職場は使いやすさに配慮したコンシューマー向けアプリであふれ返っている。「アプリは使いやすいのが当たり前」になってしまったのである。
アプリを使うのに、ヘルプや操作説明を読まなくてはならないのでは駄目だ。アプリを使うのは何らかの目的があるからであり、何にも邪魔をされることなくその目的を達成できるアプリが求められている。
FUN原則の下では、企業はアプリの開発と配備の全段階、特にデザイン段階においてエンドユーザーのニーズを盛り込むことが求められる。アプリを実際に使うのは従業員だからだ。ユーザー以外の人にユースケースをデザインさせるのは間違いである。ユーザーが必要とする機能を実行するアプリを開発するには、検証テストに従業員を参加させなければならない。また、ユーザーが必要とするときにアプリを受け取れるようにするには、ユーザーが配備計画に協力する必要がある。
企業がFUN原則の導入で実現できる理想的なシナリオはこうだ。従業員が社内アプリストアを開くと、探していたアプリが見つかる。アプリの内容は分かりやすく説明されていて、どのような業務に適しているかを示すスクリーンショットも付いている。従業員はアプリをダウンロードし、簡単なシングルサインオン(SSO)で認証を済ませれば、ヘルプを参照しなくてもアプリを使い始めることができる。アプリのセキュリティについても心配はない。従業員はアプリを自分のワークフローに組み込み、すぐに新しいやり方に慣れる。アプリの評判は口コミで伝わり、従業員の間でアプリの利用が広がっていく。
FUN原則は、アプリのライフサイクルの中でユーザーが関与する唯一の接点というわけではない。むしろ、優れたユーザーエクスペリエンスを実現する開発手法の一部なのだ。結局、従業員が柔軟かつ俊敏に仕事をこなせるようになれば生産性は向上する。FUN原則は、エンドユーザーと業務全般の両方にプラスになるエクスペリエンスを実現する手法なのである。
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