新人IT担当者のためのネットワーク機器入門【最終回】
迷ったらここから ネットワークの「技術」と「製品」の総まとめ
これまでの連載で取り上げたポイントを総ざらい。各レイヤー別に技術と代表的な製品について、もう1度復習しておきましょう。
これまで9回にわたってお送りしました「新人IT担当者のためのネットワーク機器入門」ですが、今回をもって終了です。ネットワークは使用する技術や機器がレイヤーごとに決まっているだけに、とても学習しやすい世界です。まずは、本連載で取り上げたポイントを押さえ、そこから樹枝状に派生して学習していくと、効率的なステップを踏むことができるでしょう。今回はこれまで各レイヤーで押さえてきたポイントをまとめておさらいします。まずは、本連載で取り上げたポイントを右の表で確認しましょう。
ネットワークの基本は「OSI参照モデル」として説明されるということは連載の最初で書きました。表はこのOSI参照モデルを表したものでもあります。以下、下位のレイヤーから順に、関連する技術と製品を見ていきましょう。
連載:新人IT担当者のためのネットワーク機器入門
- 第1回:ネットワークの基本「OSI参照モデル」とは何か?
- 第2回:まず、「イーサネット」から理解しよう
- 第3回:L2スイッチの要点「MACアドレステーブル」と「VLAN」を理解しよう
- 第4回:これだけ押さえておけば十分 レイヤー3のパケット転送を担う「IP」のこと
- 第5回:「ルータ」を理解するツボ、ルーティングテーブルの作り方とルールについて
- 第6回:即時性か信頼性か、レイヤー4のプロトコル「TCP」と「UDP」
- 第7回:レイヤー4の代表的製品「ファイアウォール」基礎の基礎
- 第8回:Webを支える技術『HTTP』のエッセンス
- 第9回:「負荷分散装置」はどこでどのようにネットワークの負荷を分散しているのか
- 連載インデックス
レイヤー1(物理層)とレイヤー2(データリンク層)
レイヤー1は物理的なもの全てを定義するレイヤーです。また、レイヤー2は物理層の信頼性を確保するレイヤーです。レイヤー1は物理的な要件を定義しているだけで、信頼性までは担保していません。その欠点を補完しているのがレイヤー2です。これら2つのレイヤーは密接に関わって存在するものなので、合わせて理解した方が効率的でしょう。
レイヤー1とレイヤー2の技術
レイヤー1とレイヤー2で押さえておかないといけない規格が「イーサネット」です。今あるほとんどのネットワークはイーサネットを使用していると考えてよいでしょう。イーサネットのポイントが「MACアドレス」です。MACアドレスは48ビットで構成されていて、8ビットずつハイフンやコロンで区切って、16進数で表記します。
MACアドレスは、上位24ビットと下位24ビットで異なる意味を持ちます。上位24ビットはIEEE(米電気電子技術者協会)がベンダーごとに割り当てた「ベンダーコード」です。ここを見ると、ネットワークインタフェースカード(NIC)のベンダーが分かります。下位24ビットはベンダーがNICごとに割り当てた「ベンダー内コード」です。
NICに割り当てるMACアドレスは、IEEEによって一意に管理されている上位24ビットと、各ベンダーによって一意に管理されている下位24ビットの2つの組み合わせによって定義します。そのため、各NICのMACアドレスは世界で1つのものになります。
レイヤー1とレイヤー2の機器
レイヤー1とレイヤー2で押さえておかないといけない機器が「L2スイッチ」です。L2スイッチのポイントが「MACアドレステーブル」と「VLAN」です。MACアドレステーブルは、スイッチを流れているフレームの「送信元MACアドレス」と「ポート番号(インタフェース番号)」を管理しているメモリ上のテーブル(表)です。L2スイッチは受け取ったフレームのポート番号と送信元MACアドレスを学習し、余計なポートに余計なフレームを投げないことによって、フレーム転送の効率化を図っています。
「VLAN」は1台のL2スイッチを複数のL2スイッチのように見せる技術です。ポートにVLANの識別番号となる「VLAN ID」という数字を設定し、異なるVLAN IDが付いたポートにはフレームを転送しないようにします。
レイヤー3(ネットワーク層)
レイヤー3はレイヤー2で作ったネットワークをつなげて、端末と端末の通信を確保するためのレイヤーです。
レイヤー3の技術
レイヤー3で押さえておかないといけないプロトコルが「IP(Internet Protocol)」です。イーサネットと同じく、今あるネットワークのほとんどがIPを使用していると考えてよいでしょう。
IPのポイントが「IPアドレス」です。IPアドレスはネットワークそのものを表す「ネットワーク部」と、端末そのものを表す「ホスト部」の32ビットで構成されていて、8ビットずつドットで区切って、10進数で表記します。ネットワーク部とホスト部の目印になるのが「サブネットマスク」です。「1」がネットワーク部、「0」がホスト部を表します。
レイヤー3の機器
レイヤー3で押さえておかないといけない機器が「ルータ」と「L3スイッチ」です。ルータとL3スイッチは似て非なるものですが、ネットワークをつなぎ、パケットを転送するという役割を担う点では同じです。L3スイッチは、複数台のL2スイッチとルータを1台に組み込んだものだと、ざっくり考えてよいでしょう。そこで、まずは「ルータ」を押さえます。
ルータのポイントが「ルーティングテーブル」です。ルーティングテーブルは宛先IPアドレスの参照元となる「宛先ネットワーク」と、そのパケットを転送すべきIPアドレス「ネクストホップ」を管理しているメモリ内のテーブル(表)です。ルータは受け取ったパケットの宛先IPアドレスをルーティングテーブルと照合し、マッチするエントリ(行)があったら、ネクストホップに渡します。
レイヤー4(トランスポート層)
レイヤー4は、ネットワークとアプリケーションの架け橋になっているレイヤーです。レイヤー3で確保したルートでコネクションを制御し、アプリケーションの識別を行っています。
レイヤー4の技術
レイヤー4で押さえておかないといけないプロトコルが「UDP(User Datagram Protocol)」と「TCP(Transmission Control Protocol)」です。アプリケーションはこの2つを使い分けることによって、コネクションを制御しています。
アプリケーションが即時性(リアルタイム性)を求める場合にはUDPを使用します。UDPは送信側が受信側の状態や状況を気にせずどんどん送り続けるため、即時性が高まります。それに対して、信頼性を求める場合にはTCPを使用します。TCPは送信側と受信側が「送ります」「届きました」を確認しながらデータを送るため、信頼性が高まります。
レイヤー4が持つもう1つの役割がアプリケーションの識別です。ネットワークの世界ではアプリケーションの識別に「ポート番号」を使用しています。このポート番号がレイヤー4のポイントです。ポート番号はアプリケーションにひも付いていて、宛先ポート番号を見れば、どのアプリケーションのデータなのかが分かります。その数字を見て、どのアプリケーションに渡すかを判断します。
レイヤー4の機器
レイヤー4で押さえておかないといけない機器が「ファイアウォール」です。ファイアウォールは、IPアドレスとポート番号を使って通信を制御する機器です。あらかじめ設定したフィルタリングルールに従って「この通信は許可、この通信は拒否」というように通信を選別してシステムを守ります。
ファイアウォールのポイントが「コネクションテーブル」です。コネクションテーブルは、ファイアウォールを経由するコネクションの情報を管理しているメモリ内のテーブル(表)です。ファイアウォールは受け取ったパケットの情報を見て、戻り通信のフィルタリングルールを作り、必要最低限の通信のみ許可するようにすることによって、セキュリティを確保しています。
レイヤー5(セッション層) ~ レイヤー7(アプリケーション層)
レイヤー5からレイヤー7はアプリケーションそのものを表すレイヤーです。レイヤー4で確保したコネクションでアプリケーションデータをやりとりします。
レイヤー5 ~ レイヤー7の技術
レイヤー5からレイヤー7におけるプロトコルの動作は、使用するアプリケーションによって大きく異なります。アプリケーションの数は無数にありますが、まず押さえるべきプロトコルは「HTTP」です。恐らく現時点で最も世の中に流通しているアプリケーションプロトコルでしょう。HTTPをネットワークの側面から見たときのポイントは「バージョン」「HTTPリクエスト」「HTTPレスポンス」の3つです。
バージョンは現時点では「HTTP/1.0」と「HTTP/1.1」の2つです。HTTP/1.0はコンテンツごとにコネクションを作っては壊すという手順を繰り返すのに対し、HTTP/1.1は幾つかのコネクションを作って、そこで幾つかのコンテンツをやりとりします。
HTTPリクエストはWebブラウザなどのHTTPクライアントからHTTPサーバへ送信する要求のことです。HTTPクライアントは、リクエストメッセージ(アプリケーションデータ)の最初に記述する「リクエストライン」で、やりたいことをHTTPサーバに伝えます。
HTTPサーバは、受け取ったHTTPリクエストを処理し、その結果をレスポンスメッセージとして返します。レスポンスメッセージの最初には「HTTPバージョン」「ステータスコード」「ステータスコードの説明」で構成された「ステータスライン」が記述されていて、処理結果の概要がざっくり分かるようになっています。
レイヤー5 ~ レイヤー7の機器
このレイヤーで押さえておかないといけない機器が「負荷分散装置」です。負荷分散装置は最近では「ADC(Application Delivery Controller)」として、アプリケーションレベルまで処理範囲を広げています。負荷分散装置としてのポイントが「宛先NAT」です。負荷分散装置は、負荷分散装置上に作った「仮想サーバ」でパケットを受け、その宛先IPアドレスを複数の負荷分散対象サーバに変換します。そしてサーバやコネクションの状態に応じて、変換するIPアドレスを動的に変えることによって、コネクションを割り振っています。
ADCのポイントが「アプリケーションスイッチ」と「オフロード」です。アプリケーションスイッチは、アプリケーションレイヤーの情報で割り振りを行う機能のことです。より複雑な要件に対応することができ、より柔軟な負荷分散を行うことができます。一方のオフロードはサーバの処理を肩代わりする機能のことです。SSL処理やTCP処理など、サーバが行っているいろいろな処理を肩代わりすることによって、サーバの負荷を軽減することができます。
ネットワークの世界は結局のところ「プロトコル」という決めごとの集まりです。最初は、1つひとつの技術の意味を深く理解していくよりもポイントだけ「こういうものだ」と割り切って学習した方が、吸収は早いと思います。まずは、ポイントだけを割り切って理解し、そこから樹枝状に知識を身に付けていきましょう。割り切っていたはずのポイントが必ずどこかでつながります。「おお、だからそうなったのか!」と腑に落ちたときの感動は何ものにも変えられません。この連載がそんな感動のきっかけになることができたなら、執筆者として幸いです。
執筆者紹介
みやたひろし
大学と大学院で地球環境科学の分野を研究した後、某システムインテグレーターにシステムエンジニアとして入社。その後、ネットワーク機器ベンダーのコンサルタントに転身。設計から構築、検証に至るまで、ネットワークに関連する業務全般を行い、今日もどこかで自己研さんを積んでいる。CCIE(Cisco Certified Internetwork Expert)。F5 Certified Technology Specialists。著書に『インフラ/ネットワークエンジニアのためのネットワーク技術&設計入門』『サーバ負荷分散入門』(いずれもSBクリエイティブ)
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