新人IT担当者のためのネットワーク機器入門【第3回】
L2スイッチの要点「MACアドレステーブル」と「VLAN」を理解しよう
ネットワークと関連機器に関する「今さら聞けない」基礎知識をこっそりおさらいしようというこの連載。今回は「L2スイッチ」について解説します。
前回の「まず、『イーサネット』から理解しよう」では、レイヤー1とレイヤー2の代表的な技術「イーサネット」について説明しました。そこで動作する機器で代表的なものといえば、やはり「L2スイッチ」でしょう。大きな家電量販店や会社の机の上などで、LANポートをたくさん搭載したネットワーク機器を見たことがありませんか? あれが「L2スイッチ」です。有線LAN環境であれば、大抵の場合、クライアントPCはLANケーブルを経由してL2スイッチにつながっていると考えてよいでしょう。
連載:新人IT担当者のためのネットワーク機器入門
L2スイッチのポイントは「MACアドレステーブル」
L2スイッチは、イーサネットヘッダの「送信元MACアドレス」と「ポート番号」を管理することによってフレーム(イーサネットでカプセル化したデータ)の転送先を切り替え、通信の効率化を図っています。このフレームの転送先を切り替える機能のことを「L2スイッチング」といいます。また、「送信元MACアドレス」と「ポート番号」を管理するテーブルのことを「MACアドレステーブル」といいます。L2スイッチは、このMACアドレステーブルがポイントです。
L2スイッチは、どのようにしてMACアドレステーブルを作り、どのようにしてL2スイッチングをしているのでしょうか。AというクライアントPCとBというクライアントPCがフレームを送り合うことを想定して説明します。
- 1. AはBに対するフレームを作り、ケーブルに流します。このとき、送信元MACアドレスはAのNICのMACアドレス(図1以降の図中にあるMAC A)、宛先MACアドレスはBのNICのMACアドレス(図1以降の図中MAC B)です。この時点では、まだL2スイッチのMACアドレステーブルは空っぽです。
- 2. Aのフレームを受け取ったL2スイッチは、フレームの送信元MACアドレス(MAC A)と、フレームを受け取ったポート番号(Gi0/1)をMACアドレステーブルに登録します。
- 3. L2スイッチは、Bがどのポートにいるか分かりません。そこで、Aのフレームのコピーを、Aが接続されているポートを除く全てのポートに送信します。この動作を「フラッディング」といいます。「誰宛てか分からないから、取りあえず皆に投げちゃえ!」的な動作です。ちなみに、ブロードキャストのMACアドレス「FF-FF-FF-FF-FF-FF」は、送信元MACアドレスになることがないため、MACアドレステーブルに登録されることがありません。従って、ブロードキャストはいつもフラッディングされることになります。
- 4. コピーフレームを受け取ったBは、Aに対する返信フレームを作り、ケーブルに流します。AとBの通信に関係のない他のクライアントPCも同じくフレームを受け取りますが、自分に関係のないフレームだと認識して破棄します。
- 5. Bのフレームを受け取ったL2スイッチは、フレーム内の送信元MACアドレス(MAC B)とポート番号(Gi0/2)をMACアドレステーブルに登録します。
- 6. これで、L2スイッチはAとBがどのポートに接続しているかを認識できました。そして、これ以降はAとB間の通信を直接転送します。3のようなフラッディングは行いません。
- 7. L2スイッチは、A、あるいはBが一定時間通信しなくなると、MACアドレステーブルの中で関連する行を削除します。削除するまでの時間は機器によって異なりますが、任意に変更することも可能です。例えばCisco Systems(以下、Cisco)のL2スイッチ「Cisco Catalyst」の場合、デフォルトで5分です。
VLANでブロードキャストドメインを分ける
L2スイッチでよく使用するもう1つの機能が「VLAN(Virtual Local Area Network)」です。VLANは1台のL2スイッチを複数のL2スイッチのように見せる技術です。
VLANの仕組みは極めてシンプルです。ポートにVLANの識別番号となる「VLAN ID」という数字を設定し、異なるVLAN IDが付いたポートにはフレームを転送しないようにしているだけです。VLANの設定方法には「ポートVLAN」と「タグVLAN」の2つがあります。ここでは、例を用いて説明します。
ポートVLAN
ポートVLANは、1ポートに1つのVLANを割り当てる設定方法です。例えば、図4のようにGi0/1とGi0/2にVLAN1、Gi0/3とGi0/4にVLAN2を設定していたとします。1台のL2スイッチの中にVLAN1のL2スイッチとVLAN2のL2スイッチができたとイメージすればいいでしょう。この場合、VLAN1のポートに接続しているAとBのクライアントPCは互いにフレームを交換することができます。しかし、VLAN1のポートに接続しているAとVLAN2のポートに接続しているCは直接フレームを交換することができません。
ここでMACアドレステーブルに注目してみます。VLANを設定すると、MACアドレステーブルにあるVLAN列を含めて通信を制御します。MAC AとMAC BはVLAN1のMACアドレスとして登録されます。また、MAC CはVLAN2のMACアドレスとして登録されます。MAC AからMAC Cへ通信しようとしても、VLAN1にはMAC Cは存在しないため、通信はできません。
タグVLAN
タグVLANは、その名の通り、VLANをタグ付けする設定方法です。ポートVLANは1ポートに1VLANという絶対的な約束があり、あるL2スイッチをまたいで同じVLAN内のノードが通信できるように設定する場合、ポートとケーブルをVLANの数だけ用意する必要があります。これではいくらポートとケーブルがあっても足りません。そこで、タグVLANを使用します。
基本的なタグVLANの処理プロセスを見ていきましょう。
まず、L2スイッチはポートからフレームを送出するときに「VLANタグ」というVLAN IDの情報を付加します。そのフレームを受け取る側のL2スイッチは、VLANタグを外して必要なノードへ渡します。VLANタグによって、どのVLANのフレームなのかを識別できるので、ケーブルもポートも1つで済みますし、配線もシンプルになります。タグVLANを使用するときは、接続する両L2スイッチで同じVLAN IDの情報を識別する必要があるので、両方で設定するVLAN IDは必ず合わせないといけません。
コラム:触って試せばより深まるL2スイッチの理解
どのレイヤーの技術においてもいえることだと思いますが、ネットワークを扱う人はまず、自分が得意とするベンダーを1つ作っておくといいでしょう。そして、それはできれば、その分野におけるデファクトスタンダードのベンダーにしておくことをお勧めします。
例えば、今回の対象だったL2スイッチの場合を考えてみましょう。会社のLANやサーバサイトにおけるL2スイッチのデファクトスタンダードは、CiscoのCatalystです。Cisco以外のベンダーのL2スイッチも、Catalystと類似したコマンドラインを採用していることが多いため、取りあえずCiscoのコマンドラインを知っていれば、ある程度応用が利きます。
Catalystのコマンドラインは、ネットワーク資格の登竜門「CCNA Routing and Switching」を通じて学んでいくエンジニアが多いような気がします。学習方法は人それぞれなので、資格試験を通じて机上で覚えていくのも悪くはないと思います。ただ、その場合は、一方で機器を設定して動作を確認しつつ学習を進めることをお勧めします。実際の動作を確認した方が、感覚的な理解も進み、その後の学習にも大きく役に立ちます。大事なのは経験です。私の場合、中古の機器をオークションで購入しては、自前の自宅ラックに入れて、いろいろな設定を試していました。以前は10台くらいの実機が常時稼働していたため、冬は暖房いらずでしたし(逆に夏は冷房も効きませんでしたが)、電気料金の請求は目の玉が飛び出るほどでした。最近でもCatalystはオークションで多く出品されています。安いときに、うまくゲットしてみてください。
どうしてもお金を掛けたくない場合は、フリーのエミュレーターソフトを使用するのも1つの手でしょう。エミュレーターソフトを使用することで、ソフトウェアで仮想的な機器を設定して、仮想的なネットワークを構築することができます。Ciscoのエミュレーターソフトでは「GNS3」が有名です。GNS3は、Catalystをサポートしているわけではありませんが、L2スイッチモジュールを使用することで、ある程度の機能と動きを確認することができます。実際に設定し、動作しているところを見るのはとても楽しいものです。ぜひとも活用してみてください。
今回は、レイヤー1とレイヤー2で動作する機器「L2スイッチ」について説明しました。L2スイッチについては「MACアドレステーブル」と「VLAN」の2つだけおさえておけばよいでしょう。次回は、レイヤーを1つ上げて、レイヤー3の技術「IP」について説明します。
執筆者紹介
みやたひろし
大学と大学院で地球環境科学の分野を研究した後、某システムインテグレーターにシステムエンジニアとして入社。その後、ネットワーク機器ベンダーのコンサルタントに転身。設計から構築、検証に至るまで、ネットワークに関連する業務全般を行い、今日もどこかで自己研さんを積んでいる。CCIE(Cisco Certified Internetwork Expert)。F5 Certified Technology Specialists。著書に『インフラ/ネットワークエンジニアのためのネットワーク技術&設計入門』『サーバ負荷分散入門』(いずれもSBクリエイティブ)
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