Device Guardで信頼できないアプリをブロック
「Windows 10」の生体認証機能でパスワードいらずの世界がすぐそこ
米Microsoftの次世代OS「Windows 10」には、生体認証機能「Windows Hello」とハードウェア技術を用いたセキュリティ機能「Device Guard」が新たに搭載される。2つの機能の詳細と新たな課題を解説する。
米Microsoftが開発を進める次世代OS「Windows 10」では、生体認証機能とハードウェアベースのアプリケーションホワイトリスト機能をサポートする。IT部門などがデバイスのロックダウンを可能にする。データセキュリティにとって前向きな取り組みである。
しかしながら、これらのセキュリティ機能を利用するには、多くの場合において、ハードウェアの更新が必要になるだろう。また、アプリケーションホワイトリスト機能については、IT部門にとって負担となるかもしれない。
Windows 10に搭載される新機能「Device Guard」は、信頼できないアプリの実行をブロックすることで、マルウェアやAPT攻撃からデバイスを保護する。特定のソフトウェアベンダーやWindows Store、IT部門によって署名されたものが、信頼されたアプリとして扱われる。未署名のUniversal Apps(あるいはWin32アプリ)については、署名用のツールが提供される。
アプリケーションホワイトリストの方式を通じて、Windowsはアプリが信頼できるかどうかを判断し、信頼できない場合はユーザーに通知する仕組みとなっている。Device Guardは、ハードウェア技術と仮想化技術を用いることによって、OSから隔離された状態で判定機能を実行し、攻撃者やマルウェアがシステムにアクセスできないように保護している。
「Windows PhoneやWindows RT、米AppleのiOSをはじめとするロックダウンされた強固なプラットフォームは、多くの種類のエクスプロイトに対する優れた防御策となる」と独立系調査企業の米Directions on Microsoftでアナリストを務めるウェス・ミラー氏は述べる。
最近では、ウイルス対策ソフトウェアやシグネチャベースのセキュリティ製品だけでは対処できない攻撃やマルウェアが出回っている。そうした状況があり、企業のIT担当者は、Device Guardを次期Windowsのセキュリティを高めるものとして好意的に捉えている。そう語るのは、米Rhode Island Blood Centerでシステムマネジャーを務めるデビッド・レイノルズ氏だ。
Device GuardでマルウェアとAPTの問題解決となるか
Microsoftによると、Device Guardは従来型のウイルス対策製品や、「AppLocker」「Bit9」のようなアプリケーションコントロール技術よりも優位な点があるという。Device Guardの管理面について同社はコメントを拒否しており、IT担当者は同機能のカスタマイズ性や柔軟性について懸念を抱いている。
「ウイルス対策ソリューションが、リモートコントロールソフトウェア『VNC』などの正規のプロセスをマルウェアと誤判定したことが前にあった」と米エネルギー関連企業のITマネジャーであるマット・コシュト氏は話す。
デジタル署名を付与したり、未署名の実行ファイルを有効にしたりするツールは役に立つが、企業のIT部門は多くの作業を抱えることになるかもしれない、と同氏は指摘する。
「100個のレガシーアプリケーションを処理しなければならないとすれば、作業の効率化のために多くの投資が必要になるだろう」(コシュト氏)
同氏はまた、ウイルス対策ソフトウェアではAPT脅威対策に「全く不十分」であるため、OSの中核とハードウェアにセキュリティ対策を施すことは得策であると考えている。だが、Device GuardがAPT攻撃の阻止に効果的かどうかについては懐疑的だ。
米Intelは自社プロセッサにプログラムの不正実行を防ぐ「Intel Execute Disable(XD) Bit」機能を搭載し、Microsoftは「Windows XP SP2」と「Windows Server 2003」以降のOSで「Data Execution Prevention」(データ実行防止:DEP)をサポートした。
「われわれは、これらのテクノロジーがAPT攻撃の阻止に対して効果的でないことが分かっている」(コシュト氏)
Device Guardは、こうしたアプローチの進化系であり、一連のテクノロジーの他に仮想化技術が加えられている。しかしながら、全く新しいものというわけではない。米Bromiumの「vSentry」といった製品もハードウェアベースの隔離技術を既に提供している。
Microsoftはウイルス対策ベンダーを追いやろうとしているわけではない。実際、同社では、Device Guardが従来のウイルス対策やアプリ管理技術を置き換えるものではないと主張している。既存のセキュリティ製品は、Device Guardと連係することで、実行ファイルあるいはスクリプトベースのマルウェアをブロックしたり、Device Guardのカバーしない領域を保護したりすることができる。例えば、従来型のウイルス対策ソフトウェアなら、JavaやFlash、Microsoft Office、Acrobatなどのプラットフォームを標的とするペイロードを悪用した攻撃を検出可能である、とミラー氏は話す。
現在、Device Guardのサポートを表明しているハードウェアベンダーは中国Lenovo、米Hewlett-Packard、台湾Acer、富士通、東芝となっている。
ハードウェアの更新が必要なWindows 10の生体認証機能
Device Guardに加えて、Microsoftは生体認証システム「Windows Hello」を2015年3月に発表した。
Windows Helloを使うと、ユーザーは顔、虹彩、指紋などを利用して、デバイスやネットワークサーバにパスワードを保存することなく、アプリケーションや企業コンテンツにアクセスすることが可能になる。
顔認証は確かに革新的なログオン技術かもしれない。だが、まだ初期段階にある。
「顔認証は他の大半の技術と同様に成熟していくだろう。顔認証に関しては、ユーザーが日焼けしたり、頭髪で顔が隠れたり、眼鏡を掛けていたりすると、精度が落ちる可能性がある。また、指紋認証システムを導入したものの、うまくいかずにユーザー名とパスワードの認証方式に戻したという失敗例も多い」(ミラー氏)
Windows Helloには、指紋読み取りなどの生体センサーが必要になる。指紋センサーに関しては、既に一部のデバイスに搭載されており、Windows Helloで利用可能になっている。顔認証については、「Intel RealSense 3D Camera」に限定されているわけではないが、Microsoftは同カメラのサポートをアピールしている。
現在、Intel RealSenseを搭載するノートPCは、「Dell Inspiron 15 5000 Series Touch」(Dell.comで749.99ドルから)、「HP ENVY - 15t Touch RealSense Laptop」(HP.comで649.99ドルから)、「Lenovo B50 Touch」(Lenovo.comで849.99ドルから)となっている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣 -
製品資料
[サイボウズ株式会社] AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
3
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
4
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
5
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
-
6
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
7
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
8
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
-
9
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
10
【漫画付き】ひとり情シス協会が明かす、RAG導入でしくじる企業「2つの共通点」
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー