【連載コラム】医療ITの現場から
電子カルテの導入だけではペーパーレス化が達成できない理由
電子カルテの導入目的を「ペーパーレス化」に求める診療所も少なくない。ただ、完全ペーパーレス化することがデメリットになる場合もある。その理由とは。
診療所のペーパーレス化は電子カルテとスキャナの組み合わせで
診療所には、カルテをはじめ問診票や検査結果、紹介状、患者同意書、各種伝票、処方せん、診療報酬明細書(レセプト)、参考文献など、さまざまな紙が存在します。このうち、電子カルテの導入でカルテやレセプト、伝票、紹介状、検査結果などがペーパーレス化できます。また、内視鏡やレントゲンなどの検査画像も、医用画像管理システム(PACS)を導入することで電子化できます。さらに、それ以外の紙もスキャナを上手に活用すれば完全ペーパーレスに近づけることが可能です。
| システム | 電子化される紙媒体の例 |
|---|---|
| 電子カルテ | カルテ、レセプト、伝票、紹介状、検査結果 |
| PACS | X線写真、内視鏡、エコーなどの検査画像 |
| スキャナ | 患者同意書、参考文献、その他の文書 |
新規開業と既存開業で異なるペーパーレス化の進捗状況
診療所に取材に行くと、新規開業の診療所ではかなりのレベルでペーパーレスが実現できています。紙がほとんどないため、診察室の整理整頓が行き届いており、雑然とした雰囲気はありません。こうした診療所は、最初からペーパーレスを考えて設計されているため、紙を保管する場所を設けていないようです。
一方、紙がまだ残っている診療所は多いようです。診察机の周りにはさまざまな書類が積み重なり、受け付けにも紙のカルテや伝票など、多くの書類が置かれています。既存の診療所でのペーパーレスの実現を阻害している要因としては、「過去カルテ」「スタッフの運用変更への懸念」があると考えられます。
電子カルテを導入しても過去カルテはなくならない
開業して10年以上診療すると、紙カルテの場合はかなり膨大な過去カルテが存在することになります。電子カルテの導入目的として、「カルテのペーパーレス」を挙げる声もよく聞きます。確かに、電子カルテ導入以降はあらたに紙カルテを使用することはなくなりますが、過去カルテをすぐになくすことはできません。既存の診療所が「電子カルテを導入したのにこんなはずではなかった」と感じる部分の1つです。電子カルテ導入によるペーパーレス効果は、「今後は紙カルテが増えない」という部分に限定されるため、過去カルテの取り扱いについては、スキャナなどで電子化してデータを管理する仕組みが必要となるのです。
問診票の運用
スタッフの運用変更への懸念とは、無理に電子化を進めることでかえってスタッフの手間が増えてしまうことへ不安を意味します。例えば、問診票を電子化するために、事務スタッフが手書きの問診票を打ち直すことで、誤字が発生してしまっては本末転倒です。クライアントPCへの入力が遅ければ、受け付けのスピードダウンにもつながります。これまで通り紙のまま運用し、原紙をスキャナで取り込んで重要な部分だけをカルテに記載する方が効率的なケースもあります。
また、最近ではタブレットの普及に伴い、患者自らが問診票を入力できるようになりました。問診票の運用は、電子カルテ導入の中でも重要であり、スタッフとよく相談して運用を考えていただければと思います。
紙のよいところを残す運用も検討を
また、診療所の電子カルテには「オーダーの実施確認」機能が備わっていないことが多いです。そのため、処置や注射などを行う看護師は電子カルテを確認するという作業に違和感を覚えることもあるようです。そこで、あえてオーダー伝票だけ紙で打ち出し、それに実施済みの赤線を引いているクリニックも存在します。また、メモ書きや付せんなども電子カルテよりも紙のままの方が運用しやすい場合も多いようです。
結局のところ、無理に業務の運用を電子カルテに合わせるよりも、デジタルとアナログの利点を考えて、それらを組み合わせて「ハイブリッド」で運用した方が効果的な場合もあります。電子カルテなどを導入しIT化する場合は、導入前後の業務運用を比較して、異なる点を洗い出して事前にシミュレーションした上で調整するとよいでしょう。
著者紹介
大西大輔(おおにし だいすけ) メディキャスト株式会社 メディプラザ統括マネージャー
2001年一橋大学大学院MBAコース卒業後、同年日本経営入社。2002年に医療機関の“選ぶ”を支援する展示場「メディプラザ」の1号店を東京(神田)に立ち上げ、その後2003年にメディプラザ大阪、2005年にメディプラザ福岡を順次開設。2007年より東京・大阪・福岡の3拠点を統括する統括マネージャーに就任。専門の医療IT分野については、医師会、保険医協会などの公的団体を中心にセミナー講師を多数実施。
【関連サイト】
電子カルテ活用のためのショールーム「メディプラザ」
医師の右腕を育成する「電子カルテ+クラーク養成講座」
医院・クリニックのオフィシャルホームページ制作システム「Wevery!」
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