【連載コラム】医療ITの現場から
紙カルテから電子カルテへの移行は、その導入時期を熟慮すべし
これまで紙カルテで運用していた診療所が新たに電子カルテを導入する場合、その導入準備期間は新規開業の場合よりも1、2カ月は長めに見ておいた方がいい。その理由を解説する。
新規開業時に導入する場合とは異なり、既に開業している診療所の電子カルテ導入には幾つかの注意点があります。まず「日々行われている業務の流れが大幅に変わってしまう」こと、「電子カルテを導入しても、過去の紙カルテやフィルムが残る」こと、「既存のレセプトコンピュータ(以下、レセコン)からのデータ移行が生じる」ことなどです。
1.既存レセコンからのデータ移行
レセコンは電子カルテよりも導入率が高いITシステムです(関連記事:前年比2倍以上の普及率、レセプト請求オンライン化の現状)。既存の診療所ではレセコンを既に導入しているケースが多いでしょう。その場合、既存のレセコンと新しく購入する電子カルテとの連携に注意する必要があります。2つのシステムのデータ連携が可能な条件として、現在は「レセコンと電子カルテが同じメーカー」であり、「電子カルテとの接続が可能な比較的新しいバージョンのレセコン」であることが必須条件となります。そのため、新たに電子カルテを導入する場合、既存のレセコンを廃棄してリプレースしなければならない可能性もあります。
レセコンには、これまでに来院した患者データが入っています。このデータを電子カルテに移行できない場合、全ての患者データを新患登録する作業が必要になります。こうしたデータ移行作業は、既存レセコンからデータを取り出すことから始めます。しかし、取り出せるデータの種類は「IDナンバー」や「氏名」「生年月日」「保険情報の一部」など、いわゆる頭書きデータに限定されてしまうことがほとんどです。
取り出したデータは電子カルテにそのまま登録できるので、ほとんど手間が掛かりません。しかし、全くデータを取り出せない機種もあります。また、一部の必要な情報が取り出せず、その情報だけ新たに手入力しなければいけないケースもあります。こうした一連の移行作業は、新規導入する電子カルテのメーカー側がサポートする場合が多いようです。その際の作業費用は、各社の考え方や作業量によって異なりますが、数十万円というのが1つの目安になります。
2.残った過去の紙カルテの取り扱い
電子カルテを導入しても、過去の紙カルテは法定保存期間である5年間は最低でも保管しなければなりません。そのため、院内が完全にペーパーレスになることはあり得ません。また電子カルテ導入後、しばらくの間は過去の情報については紙カルテに頼ることになります(関連記事:効率的な紙カルテのデジタル化がペーパーレスを成功に導く)。
電子カルテを導入した医師に聞いたところ、紙カルテを併用しながら診療を行う期間はおおむね3カ月程度のようです。それ以降は、前回の受診記録が電子カルテの中にも保存されるため、紙カルテを出す機会が大幅に減るようです。
もちろん、頻繁に来院される患者のカルテだけでもスキャンして、画像データとして電子カルテに取り込んでおけば、導入当初から紙カルテを出す必要はありません。このデータスキャニングは外注業者に任せることもできますが、これも作業費用との兼ね合いを考慮することになるでしょう。
紙カルテを出さずに診療可能になれば、もはや受付の近くに紙カルテを置いておく必要はなくなります。スペース的に余裕がない場合は、診療上使用頻度が高いと思われるカルテのみをピックアップして診察室内に保管し、その他のカルテは別の場所に移してしまうのも1つの方法です。
3.導入のポイント
開業中の診療所が電子カルテを導入する場合、その導入時期にも注意する必要があります。紙カルテから電子カルテに移行すると、どんなにPC操作に慣れた医師でもしばらくの間は入力に手間取ることになるでしょう。
それは事務スタッフも同様です。作業に手間取ってしまうと、1日に診られる患者数が減ってしまう可能性が高くなります。開業中の診療所が電子カルテを導入する場合、1年を通して最も患者数が少なくなる時期に電子カルテを稼働させるようにスケジュールを組むのが一般的です。
そして、入力時間を少しでも短くするために、頻繁に来院される患者については、定期処方や前回処方などの情報を事前に電子カルテに登録しておくのもポイントです。これによって、電子カルテが得意とする「Do処方」機能を利用し、短時間でのカルテ入力が可能になります。また、よく使うオーダーセットを全て登録しておくことは必須条件でしょう。この点は、導入実績が多い電子カルテメーカーであれば、かなりのノウハウを持っているようです。
4.導入スケジュール
新規開業の場合、一般的な電子カルテ導入準備期間は2、3カ月程度だといわれています。しかし、既存診療所の場合、既存レセコンからのデータ移行作業が必要となり、また日々の忙しい診療の中で導入準備や操作研修の時間を確保するのが難しいということもあります。そのため、新規開業の場合よりも1、2カ月は長めにみておく必要があるでしょう。
例えば、患者数が減る時期が8月であれば、3、4月に導入製品を決定してその導入準備に入る必要があります。また、導入準備期間中はスタッフの出勤体制の増強や残業なども念頭に置いておいた方がよいと思われます。
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