【連載コラム】医療ITの現場から
電子カルテ買い替え時に注意すべき点
電子カルテを導入済みの医師から、他メーカー製品への買い替えについての相談が増えている。しかし、悩んだ末に現在使用している電子カルテを再度リースする場合が多い。その理由とは?
1999年にカルテの電子化が法的に認められ、医療機関における電子カルテの導入が始まりました。その後、厚生労働省が2010年に診療データの外部保存に関するガイドラインなどを改正したことで、クラウド型電子カルテの使用も認められています(関連記事:クラウドコンピューティングが変える医療の未来)。現在、電子カルテはさまざまな面で進化しています。周辺機器との多彩な連動などが可能となり、操作性や利便性なども向上しています。
既に電子カルテを導入している医師から「電子カルテを買い替えたい」という相談が、最近増えてきています。その内容は「製品のバージョンアップなどメーカー側の対応が気になる」「今一番シェアが高いものに買い替えたい」などさまざまです。しかし、あれこれと悩んだ末、現在使用している電子カルテを再度リースで使用するというケースが多いようです。
多くの医師にとって、自身の診療を支援する電子カルテに対する「慣れ」や「愛着」があるようです。そのため、よほど機能面や操作性に差が出たり、現在のシステムに不満がない限り、幾つかの製品を検討しても結局は現行のメーカーのまま買い替えない場合が多いようです。
また、異なるメーカーの電子カルテに買い替える際に必要な作業も移行の障壁となっています。電子カルテ間でコード体系などの規格の標準化が遅れているため、使用中の電子カルテからのデータ移行に手間が掛かったり、運用が難しくなることもあります。古い電子カルテ内の移行できないデータを新しい電子カルテにあらためて入力したり、古い電子カルテと新しい電子カルテを当面の間、並行運用している医療機関も存在します(関連記事:「地域医療連携」を活用したビジネスモデルの創出)。
5、6年ほど電子カルテを使用していると、その間に多くの製品がバージョンアップしています。そのため、操作性や処理速度などが向上するなど、電子カルテの性能面に関する不満が解消されることもあります。また、サポートやメンテナンスなどでメーカーとのやりとりを通して、お互いの信頼関係が深まることもあるでしょう。
その一方で、電子カルテの操作性が合わないまま我慢して使い続けている医師もいるようです。電子カルテを比較的早く導入された医師の中には、各社の電子カルテを十分に比較しない(できない)まま導入を決めたケースも多くあります。このような場合、「使いづらいと感じているが、既に多くのスタッフが慣れていて変えられない」「データ移行への作業やリスクを聞いた」などという声も上がっています。
医療のIT常設展示場「メディプラザ」では、電子カルテの選定ポイントとして以下の5点を挙げています。
電子カルテの選定ポイント
- 操作性:操作感を実際に体験して確認
- 機能:診療科別に異なる必要な機能を確認
- サポート:トラブル時、改定時、通常時の3つのサポートを確認
- 実績:診療科別、地域、全体と3段階の実績を確認
- 価格:初期導入と運用コストを押しなべて月額費用で確認
中でも、「操作性」が最も重要だと考えています。電子カルテの操作性については、実際に製品を使用してみることをお勧めしています。
電子カルテは比較的高額な製品ですから、一度も製品を使用せずに購入するのは危険です。また、電子カルテ選びは「伴侶選び」に似ていると話す場合もあります。その真意は、製品との相性を大切にした方が、結果的に自身の診療に最適で長く使える製品を探すことができると考えているからです。
現在、政府が推進している「どこでもMY病院の構想」や「シームレスな地域連携医療」の構想の中では、地域の医療機関の間で診療情報などを相互参照可能な「地域医療連携ネットワーク」の普及が示唆されています。その情報源となるのが、各医療機関の電子カルテです。そうした展開を考えると、今後さらに電子カルテの重要性が高まることが予想されます(関連記事:「単なるIT化は医師の負担が増えるだけ」 日本版EHR研究班が指摘)。
地域医療連携ネットワークが本格的に普及した際、自分に合わない電子カルテを使い続けることは電子化の利点を生かしきれない可能性も考えられます。電子カルテの導入や買い替えを検討される場合は、ぜひ実際に操作性などを確かめた上で納得した製品を選んでいただければと思います。
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