【連載コラム】医療ITの現場から
クラウドコンピューティングが変える医療の未来
医療分野でもインターネットの活用が急速に広まりつつある。今後、この技術は医療にどう貢献していくのだろうか?
医療のIT常設展示場「メディプラザ」を立ち上げ、医療分野におけるIT化の普及啓発活動を行っているメディキャストの大西大輔氏。同氏は長年、医師向けの医療ITセミナーや企業向けの医療IT人材の研修などを通して、医療ITの現場に携わってきた。医療を取り巻く現状は、同氏の目にはどう映っているのか? 本連載コラムでは、医療ITに関するさまざまなトピックを大西氏が解説する。【編集部】
急速に広まりつつある医療のネットワーク化
東日本大震災では、広い範囲で携帯電話が通じない状況が続き、安否確認において「Twitter」や「mixi」「Facebook」などのSNSが活躍しました。
私が暮らしている関東地方でも、スマートフォンを使いSNSを通じて連絡を取り合う姿を多数見掛けました。インターネット上で無限に広がる「ネットワークの有用性」をあらためて認識しました。
インターネットの活用は「医療」の世界にも急速に広まりつつあります。厚生労働省が2010年2月に実施した、「診療録等の保存を行う場所について」の一部改正と「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第4.1版」の改定を受け、民間企業のデータセンターにおける電子カルテなどの診療情報の保有が認められました。事実上、クラウドコンピューティング(以下、クラウド)を利用した医療機関同士の情報共有が可能になりました(関連記事:なぜ、医療クラウド市場は急速に拡大しているのか?)。
医療分野におけるクラウドの解禁によって、医療機関内にサーバを置かなくてもよくなり、企業が提供するセキュリティレベルの高いサーバを地域で共同利用することが可能となります。また、コスト面やセキュリティ面ともに効果があり、これが引き金になって地域連携が進むのではないかと考えられています。
また、2010年5月の米アップル「iPad」の発売、さらにその後、続々と登場したタブレットPCやスマートフォンなどが医師にも広く普及しています。その勢いを見ても、それらがクラウド時代を意識した情報端末として、医療の世界でも大いに期待が寄せられていることがうかがえます(関連記事:スマートフォンの利用で患者治療の効率はどう改善されるか)。
クラウド上で医療情報をやりとりする仕組みは、政府が掲げる医療IT化政策の1つである「どこでもMY病院」の中に盛り込まれています。そして、今後はこれまで以上に“どこにいても誰もが医療情報にアクセスできる仕組み”の構築が求められるのではないでしょうか。
どこでもMY病院の構想は「全国どこでも自らの医療・健康情報を電子的に管理・活用することを可能にする」とされており、政府が日本版PHRを構築したいという考えが見られます。この考えに基づけば、医療機関は早急に電子カルテなどのIT化を進め、この構想に参加するための準備が必要になると思われます(関連記事:PHR実現をけん引する携帯端末向け健康情報管理サービス)。
また、全国各地で地域医療連携の取り組みも報告されています。2011年1月28日、東京医科歯科大学で開催された「地域医療福祉情報連携協議会発足記念シンポジウム」でも、Web型電子カルテにおける医療機関間の情報連携など、さまざまな事例が報告されました。
その中でも、長崎県の「あじさいネット」の取り組みでは、これまで実現できていなかった異なるメーカーの電子カルテの診療情報を情報共有できる、新しい地域連携の仕組みが構築されています。電子カルテメーカーの垣根を越えたこの事例は、将来的には各地域の地域医療連携の進展およびその地域医療連携間の統合までを視野に入れた取り組みの一歩になると感じています。
1999年に医療IT化の象徴ともいえる「電子カルテ」が法的に認められてから、12年が経ちました。電子カルテ、そして地域連携ネットワークへと次々につながる医療IT化の潮流が今、本格化を迎えています。
ネットワークによる情報連携が求められる中で、私も医療のIT化推進に今まで以上に貢献していきたいと思います。
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