デバイスへのデータ保存なしでより安全に
iPhoneでAndroidアプリが動作、「仮想モバイルインフラ」は使いものになるか?
仮想モバイルインフラ(VMI)を使用すると、データセンターでモバイルOSをホストして、ほぼ全ての端末にOSを配信できるようになる。だが、VMIが成功するにはインターネット接続が必要など幾つかの課題がある。
仮想モバイルインフラ(VMI)は、リモートデスクトップテクノロジーと似た概念の新しいテクノロジーだ。懐疑的な見方をされることも少なくないが、現在このテクノロジーには多くの注目が集まっている。
仮想デスクトップインフラ(VDI)と同様、VMIはデータセンターでOSをホストし、ユーザーは各種端末からリモートでOSにアクセスできる。VDIと異なるのは、ホストするのがデスクトップOSではなくモバイルOSであることだ。VMIのクライアントはモバイルアプリで、VMIのリモートディスプレープロトコルはタッチ入力とモバイル接続の処理に特化して設計されている。VMIを使用すると、データセンターでホストしているモバイルアプリを任意のプラットフォームを搭載したモバイルデバイスに配信できる。
OSはデータセンターで実行されるため、企業のデータがモバイルデバイス上に存在することはない。そのため、セキュリティレベルの高い環境、規制の厳しい業界、BYOD(私物端末の業務利用)プログラムにとってVMIは理想的なテクノロジーだ。また、データセンターでホストされているモバイルアプリは、企業のリソースと物理的に近い距離で実行され、同じネットワーク上にあるという点を活用できる。つまり、モバイルアプリはクライアントデバイスでスムーズに動作する。
既存のVMI製品は全て米Googleの「Android」をホストOSとして使用している。それは、米Appleが同社の「iOS」を、他のメーカーのハードウェアで動作させることを許可していないためだ。だが、全てのプラットフォーム用のVMIクライアントアプリを開発することは可能だ。VMI製品を提供するベンダーには、米HYPORI、米Raytheon、米Remotium、トレンドマイクロ、イスラエルのNuboなどがある。
VMIを試す理由
VMIのアプリは、物理キーボードやマウスではなく、モバイルインタフェース用に開発されている。そのため、モバイルデバイスでは、VMIの操作性はVDIより優れている。また、エンタープライズアプリの開発も簡略化する。ユーザーは、どのデバイスからでもAndroidベースのVMIにアクセスできる。これには、Appleの「iPhone」、米Microsoftの「Windows Phone」、カナダBlackBerryの「BlackBerry」、任意のタブレットも含まれる。そのため異なるモバイルOS用に個別のアプリを作成する必要はない。また開発者は、自分でセキュリティ機能を構築しなくても、VMIの特性を利用してアプリやデータを保護することができる。
それに加えて、VMIに用意されている手法を利用すると、業務用とプライベート用のアプリを分離することが可能だ。この手法には、他のモバイルアプリケーション管理(MAM)テクノロジーに見られる制限はない。例えば、アプリのラッピングやソフトウェア開発キットといったMAMの手法を利用できるのは特定のアプリに限られる。また、デバイスベースのMAMでは、スマートフォンとタブレットのサポートに制限がある。VMIを利用すると全てのアプリをどのデバイスでも管理できるため、どちらのトレードオフも回避できる。
VMIの道のりは平たんではない
VMIにはネットワーク接続が不可欠という明らかな課題がある。VMIをオフラインで利用するという選択肢はない。モバイル接続による遅延と忠実度に懐疑的な見方を示す人も多いが、VMIはオンライン専用のテクノロジーとして開発されている。ローカルで実行されていると勘違いすることはないだろうが、多くのVMI製品はWi-Fiと4G接続で非常に優れたパフォーマンスを発揮する。
VMIベンダーが乗り越えなければならない重大な障害は他にも幾つか存在する。どのベンダーも「Android Open Source Project」は自由に利用できるが、多くのアプリで使用されているGoogleの「Google Mobile Services」(GMS)はオープンソースではない。これが1つ目の障害だ。GMSにアクセスするデバイスはGoogleから承認を得る必要がある。多くのAndroid搭載の主要タブレットとスマートフォンにとって、この状況は問題にならない。だが、VMIベンダーはデータセンターでホストするAndroidの承認を得るべく今もなお取り組んでいる。
データセンターでAndroidをホストするには技術的な障害もある。VMIベンダーは、Androidのインスタンスをホストする何らかのハイパーバイザまたはLinuxコンテナシステムを用意しなければならない。また、このシステムが適切に拡張できることを保証し、エミュレーター上でx86互換バージョンのAndroidを使用するのか、標準的なARMバージョンのAndroidを使用するのかを決めなければならない。それから、Androidのインスタンスを作成および管理して、Androidのインスタンスにアプリを配信および構成する方法も必要だ。
VMIはユーザーに便宜を図らなければならない。VMI製品には、プッシュ通知のようなOSの機能をVMIのクライアントアプリにリダイレクトする方法が必要だ。さらにAndroid用のリモートプロトコルでサポートされる必要があるのはタッチ操作のイベントや表示だけではない。堅牢な操作性を実現するには、オーディオ、位置データ、画面サイズ、回転制御、カメラなどもサポートされる必要がある。
VMIは、デスクトップ仮想化と同じ方法でレガシーアプリケーションをモバイルデバイスに拡張することはできない。モバイルアプリの中には、他のプラットフォーム用にスムーズに変換できないものもある。そのため、顧客は依然として基幹業務アプリケーションのモバイル版を開発または調達しなければならないことがある。
多くの場合、エンタープライズモビリティのユースケースでは、今でもローカルのネイティブアプリが最善のアプローチである。だが、VMI固有の特徴により、VMIを後押しする効果的なユースケースも少なくない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
“攻撃者優位”なサイバーセキュリティ、全ての「穴」をふさぐ方法とは? -
製品資料
実際に悪用される脆弱性は4%前後 優先的に対処すべき脆弱性を把握するには? -
製品資料
HubSpotの機能を拡張する法人データ活用法 -
製品資料
面倒で非生産的な「名寄せ」作業 高精度&高効率に実施するには? -
製品資料
名刺管理には「その先」がある 成果のでない営業活動から脱却する秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
ISMSの“コンサル丸投げ”が招く数千万円の無駄 NTTドコモビジネスの脱出劇
-
2
「Microsoft 365」が乗っ取られる 跡形もなくMFAを破る手口
-
3
Netflixのバックエンドは「ほぼJava」 3000超のアプリを支える開発基盤の裏側
-
4
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
5
IT製品の導入に関するアンケート「サーバ&ストレージ」編
-
6
月額91.3万円のAIエンジニア システムアーキテクト級に並んだ単価の中身
-
7
ストレージへの高い投資対効果を目指す「ETERNUS DX S2」シリーズ
-
8
「IoT通信環境の構築・運用」に関するアンケート
-
9
IT業界で相次ぐ人員削減の“隠された理由”
-
10
ライオンが挑む「守りのIT」脱却:Google Cloudで加速させるデータ駆動型経営
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
2
財務・会計はAI活用でどう変わる? 調査で見えた変革の道筋
-
3
AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
-
4
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
5
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
-
6
「結局、一部の人しか使わない」 AI活用が業務に定着しない根本的な理由
-
7
コスト分析で見る「デバイス復旧」の代償 損失額から導きだされた投資戦略とは
-
8
Macの安全神話は崩壊? 最新の脅威動向から見えた攻撃のトレンドと有効な対策
-
9
ゼロトラストにおける「IDaaSの課題」と補完すべき重要機能とは?
-
10
情報セキュリティ対策早分かりガイド:25の自社診断で弱点と解決策を理解
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー