「孤高のIBM」「社交的なHP」どちらの戦略が優れているのか
ハイパーコンバージド市場のガチンコ勝負、新たなベンダーロックインが始まる
企業間の提携により、それぞれの異なる技術を合わせて製品を開発することがビジネスの主流だった。しかし今、ハイパーコンバージドインフラを提供するベンダーは自社製品の売り上げを伸ばすために躍起になっている。
1990年代後半から2000年代前半にかけて、ビジネスはテクノロジーの価値を見いだし、その恩恵を受けるようになった。各企業が信じ難い速度でテクノロジーを消費し始めた。小規模の店舗でさえ、ITリソースを収納するために独自のデータセンターを構築することもあった。独自のノウハウや経験を持つある大企業は、自社のリソースだけで全てを完結できると考えていた。一方、多くの中小企業は、統合的なITインフラを提供するために提携を結び始めた。
ハイパーコンバージドベンダーの戦いの当初は、各レイヤーの主要なプレイヤーとの提携から始まった。ネットワーク領域では米Cisco Systems、ストレージ領域では米EMCまたは米NetAppと、X86サーバ領域では米Hewlett-Packard(HP)または米Dellのような企業と提携を望んだ。これらは代表的な企業であるだけではなく、完全なデータセンターインフラを顧客に提供するため各社が最大限の協調関係を築いていた。
孤高のIBM、社交的なHP、異なるアプローチ戦略
米IBMと同様、米HPはコンピュータ事業とストレージ事業を展開している。しかし、より多くのサーバを売るため、HPはEMCやNetAppと進んで仕事をしている。一方、IBMは孤高を貫き、コンピュータとストレージのための完全なIBM製品を売り込むクローズドスタンスを取った。EMCとNetAppはストレージ分野でリードしていたため、この戦略はコンピュータのセールスにおいてIBMを傷つけた。対照的に、HPのサーバは全ての規模のデータセンターでありふれたものとなった。企業提携のアプローチは勝つことだが、このような提携ではすぐにひび割れが表面化し始めた。
データセンターにおいて、Ciscoはどの企業も共に仕事をしたがるパーティの華のような存在だった。それは、X86サーバ製品「CiscoがUnified Computing Systems(UCS)」を市場に出すまでのことであったが。UCSは革新性が高く破壊的な新しいテクノロジーで、ITの勢力図とテクノロジー界のパワーバランスに破壊的な影響を与えるほどのものであった。
HPは、EMCやNetAppのようなベンダーとの微妙な関係を気にしながら、ストレージという場所において幾つかの大きな行動を起こした。HPとのストレージ獲得の入札合戦で、DellはEMCとのOEM提携を破棄するというプランを明らかにした。それが本当に実現すると考えた人はほとんどおらず、結果として生じた影響は即座に現れた。DellとEMCの提携は一夜にして解消するように思われたため、Dellは性急に新たな忠誠を尽くすか、その地位を失う覚悟でやる必要があった。
Cisco vs. VMware、EMCやNetAppにも飛び火?
また、ハイパーバイザー分野も忘れてはならない。先述のCiscoのように、VMwareは当初誰もが最初に提携したくなる存在だった。競合企業が出現し、提携相手の関心がもはや自社だけではないとVMwareが悟り始めたとき、決断は下された。VMwareはNiciraの買収に最後に名乗りを上げた。CiscoはUCSでIT業界に衝撃を与えたが、VMwareはNiciraと、その結果として生じるネットワーク仮想化製品「VMware NSX」で衝撃を与えた。両者の本気の戦いが始まった。
Ciscoはすぐに新しいネットワーク仮想化戦略をまとめた。それはCiscoの初めての選択ではなかったかもしれないが、Cisco独自の製品を作り出すためのネットワーキングのノウハウとリソースを確かに持っていた。しかし、なぜネットワークの仮想化で止まったのか。EMCが所有するVMwareの重要なデータで、Ciscoはさらに一歩先を行き、ストレージベンダーとなった。Ciscoによる米Whiptailの買収は、VMwareとの戦いを開始する準備ができているという明確な合図だった。
これに反撃するため、EMCとNetAppは「VMware EVO:Rail」製品の自社バージョンで参入した。こうしてマーケットは、提携を結び計画を協働する場所から、各ベンダーが業界を独占的にコントロールするための戦いの場となった。CiscoやHP、Dellはそれぞれが、ネットワーク、サーバ、ストレージを提供するワンストップショップになった。ユーザーがVMware EVO:Railのハイパーコンバージドインフラストラクチャを検討しているなら、同様のワンストップショップであるEMCやNetAppも検討対象に入れることもできる。
この戦いはどのように展開していくのだろうか。企業は自社製品を売り込むために提携をやめるというIBMの道をたどるのか、それとも市場を動かすために競合企業と提携するというHPの昔の慣習に従うのか。ハイパーコンバージドテクノロジーは、より単一ベンダーの製品に集約され、提供されていくと思われる。
ハイパーコンバージド市場は、今後どうなるのだろうか。各ベンダーは市場全体を炎上させるつもりなのか、それとも新しいテクノロジーが土壇場で介入してくるのだろうか。自分がこの市場のベンダーなら、寝るときも用心を怠らないだろう。
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