実用段階にきたSSD
SSDはHDDよりも高くて速いはウソ? SSDをめぐる5つの誤解(1/2 ページ)
今日のフラッシュストレージをめぐっては大きな誤解が幾つかある。なぜそういった誤解が生じたのか、またその背後に隠された現実を探った。
かつてはストレージベンダーの差別化手段となるくらいニッチなストレージ製品だったフラッシュ(SSD:ソリッドステートドライブ)。急速な進歩を遂げ、今ではすっかり一般的な技術になった。フラッシュストレージが成功した最大の原因は、基幹業務アプリケーションで求められる速度を提供したからだ。
本稿ではフラッシュベースのストレージをめぐる5つの大きな誤解を取り上げるとともに、その背後に隠された現実について述べる。
誤解その1:ハイブリッドアレイあるいはオールフラッシュアレイは、ストレージ関連のパフォーマンス問題を全て解決する
データストレージ業界では、ハイブリッドアレイやオールフラッシュアレイが花盛りだ。例えば、フラッシュベースのストレージは数十万~数百万IOPS(1秒間当たりのI/O数)を提供するのに加え、スループットも大幅に改善する。だがこうしたアレイがストレージ関連のパフォーマンス問題を“全て”解決するのかといえば、その答えはノーだ。
問題は遅延時間(レイテンシ)だ。ストレージアレイに高性能なフラッシュSSDを詰め込むと、ストレージコントローラーとドライブメディアの間の遅延が大幅に(一般的に数桁単位で)増大する。だがアプリケーションサーバ(物理/仮想サーバ)とストレージアレイとの間の遅延に対しては何の効果もない。
アプリケーションサーバとストレージアレイとの間の遅延とは、データパケットがサーバのメモリからストレージブリッジを介してPCIe(PCI Express)コントローラー、ファイバーチャネル/イーサネット/InfiniBandアダプター、トランシーバ、ケーブル、トランシーバ、スイッチ(または複数のスイッチ)、ケーブル、ストレージアダプター、PCIeバス、PCIeコントローラー、ブリッジ、メモリ、そしてCPUに到達した後で、今度は、逆方向に戻るのにかかる時間である。これは大きな遅延であり、フラッシュSSDのパフォーマンスによって改善されない。加えて、フラッシュSSDはストレージコントローラーの性能的限界の制約を受ける可能性がある。
できるだけ低い遅延がアプリケーションのパフォーマンスにとって望ましい場合(頻繁なトレーディング、シミュレーション、メディア/エンターテインメント、流体解析、モデリング、3D CAD/CAMなどのアプリケーションの場合)、アプリケーションサーバのDIMMスロットまたはPCIeスロットに装着したフラッシュSSDを直接利用すれば、SSDのパフォーマンスを最大限に発揮できる。上記の遅延の大部分を排除できるからだ。
誤解その2:フラッシュドライブはサーバよりもアレイに組み込む方がよい
多くの誤解がそうであるように、この誤解にも少しの真実と多少の誇張が含まれている。アレイベンダー各社は、製品のテストとバーンイン(通電負荷試験)を行い、アレイ内のドライブの故障、メンテナンスコスト、ダウンタイム、データ消失が最小限になるようにしている。それはそれで良いことだ。だがフラッシュSSDとHDDとは全く別物だ。HDDのバーンインでは、欠陥のあるHDDを出荷前に除外できる。だがSSDのバーンインは一般に、短時間でSSDのパフォーマンスを安定状態まで下げるというメリットしかない。
アレイベースの誤り訂正符号(ECC)は、SSDのECCよりも有用性が高いという意見もある。
また技術的には、SSDは外部アレイに組み込んだ方がやや有利だ。だがこの2点だけで、SSDをハイブリッドアレイあるいはオールフラッシュアレイに搭載した方がサーバに組み込むよりもよいといえるのだろうか。これは主観的な判断であり、必ずしも事実に基づくものではない。
誤解その3:SSDはHDDよりもはるかにコストが高い
最初のSSDが市場に登場して以来ずっと、こうした認識が一般的であり、これにはさまざまな要因が絡んでいる。基本的には取得コストである。フラッシュベースのストレージの価格は急速に下がっているのに対し、HDDの価格の低下は極めてゆっくりだ。NANDフラッシュメーカー各社がムーアの法則通りにNANDチップの小型化を進めるのに伴い、Gバイト当たりの取得価格が急激にダウンした。さらにフラッシュSSDメーカー各社は、ECCとウェアレベリングの改良によってエンタープライズマルチレベルセル(eMLC)チップとMLC NANDチップを強化しており、これに伴ってGバイト当たりの価格がさらに低下した。また、3D NANDがフラッシュSSDで採用されることで、今後Gバイト当たりの取得コストが再び大きく下がるとみられる。
これは、SSDとHDDとの比較において何を意味するのだろうか。実際、高性能な1万5000rpmや1万rpmのHDDは市場から消えつつある。SSDとHDDの取得価格が同レベルになったのに対し、運用コストはSDDの方がずっと低い。米IBMは最近、「SSDは同等の高性能HDDよりも取得価格が11%低く、TCO(総所有コスト)は28%低い」との見解を明らかにした。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣 -
製品資料
[サイボウズ株式会社] AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
3
【漫画付き】ひとり情シス協会が明かす、RAG導入でしくじる企業「2つの共通点」
-
4
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
5
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
6
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
7
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
-
8
BMWも導入 78兆円市場に化ける「フィジカルAI」の衝撃
-
9
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
10
「AI活用を前提とした業務PCへの移行」に関するアンケート
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー