ハイブリッドvs オールフラッシュ、どちらを選ぶ?【前編】
SSD導入がお得になる場合、ならない場合
大容量化や価格低下が進み、導入するユーザーが増えたといわれるSSD。HDDと共存する「ハイブリッド型」か? 性能重視で「オールフラッシュ」か? 失敗が許されないシステム変更の結果は、その選択に委ねられている。
SSD(ソリッドステートドライブ)の価格が下がり、多くのベンダーが「オールフラッシュアレイ」を提供するようになっている。だが、オールフラッシュアレイは、フラッシュと回転ディスクを組み合わせた「ハイブリッドストレージアレイ」よりも本当に断然良いのか。
これまで、技術システムの比較では、異なるシステムを同じ条件で比較する目的で“コストパフォーマンス”分析が利用されてきた。ストレージに関しては、SSDの登場に伴ってIT購入担当者は、コストとパフォーマンスのどちらを優先するかの選択を迫られることになった。フラッシュストレージは爆速だったが、容量(Gバイト当たり)単価が非常に高かったからだ。その対極にあるTバイトクラスのHDDは至って経済的だが、ドライブ当たりのIOPS(1秒間当たりのI/O数)がわずか75程度であるため、HDDに格納されているデータを使った作業は、ワークロードの中であまり多くしないのが得策だ。
つまり、HDDは容量単価に優位性を持ち、フラッシュはIOPS単価に優位性を持つというわけだ。
いいとこ取りを目指す“ハイブリッドアレイ”
ハイブリッドアレイは、両者の“いいとこ取り”を目指している。少量(全容量の2~5%)のフラッシュストレージをアレイに追加することでIOPSを倍増させ、読み出し遅延を10ミリ秒(ms)以上から3~5msに短縮できる可能性がある。フラッシュ自体は高価だが、価格が10~20%高いアレイを買って2倍のパフォーマンスが得られれば、かなりお得ということになる。
3~5msの遅延は問題なさそうに思えるが、こうしたばらつきが許容されないアプリケーションが増えている。オールフラッシュアレイは、サブミリ秒(1ms未満)の読み出し遅延とQoS(サービス品質)の保証を実現する。フラッシュではプリフェッチの問題がなく、キャッシュ読み出し時とシーク時で遅延時間に差が出る心配はない。全てのI/Oが実質的にキャッシュ読み出しだからだ。
以上のことから、HDDからハイブリッドへの移行で、遅延の観点から見ると、10msから5msへ改善され、オールフラッシュへの移行では0.5msとパフォーマンスが20倍も向上することになる。ただし、HDDとフラッシュの価格差はかなり縮まっているが、ほとんどの企業は、数百Tバイトのフラッシュを展開する予算はまだ持っていない。このため、フラッシュ技術を賢明に展開することが企業にとって重要なら、ハイブリッドとオールフラッシュの適材適所の使い方を理解することは、管理者が最適な意思決定を行うのに役立つだろう。
ハイブリッドストレージアレイとオールフラッシュアレイのコストパフォーマンス
コストパフォーマンスはストレージを購入する上で大きな判断材料になる。まずこれについて見ていこう。
コストに関しては、従来のHDDアレイでは「購入価格は3年間の所有コストの20%程度」というのが業界の常識となっている。しかし、オールフラッシュストレージアレイはこのモデルに当てはまらない。購入価格が高く、運用コストが低いことなどが理由だ。
例えば、オールフラッシュアレイメーカーの米Nimbus Dataは、同社の製品の消費電力はTバイト当たり8ワットにとどまるのに対し、HDDアレイではTバイト当たり80ワットに上る場合があると推計している。さらにNimbus Dataは、ユーザーはラックスペースをフルに使って同社のアレイを設置し、パフォーマンスの低下を招くことなく、最大90%の利用率を実現できるとアドバイスしている。
つまり、フラッシュの採用により、ストレージの容量当たりのフロアスペースや冷却、電力の利用を抑えられる可能性があることになる。大容量SATAドライブは記録密度が高いが、IOPSや遅延の普通の要件すら満たせないだろう。フラッシュの価格がキャッシュメモリと同様の下降曲線をたどっているだけに、オールフラッシュとハイブリッドストレージのTCO(総所有コスト)の比較は、時間をかけて行う価値がある。
米Hewlett-Packard(HP)は、異なる考え方に基づくコスト指標を提案している。それは「トランザクション単価」だ。この指標は実際のビジネスコストを反映しているのに対し、容量単価やIOPS単価は、購入コストしか反映していない。トランザクション単価という指標は、メディアの種類にかかわらず適用でき、異なる技術間での公平な比較を可能にする。例えば、高トランザクションのワークロードに使用されるため、オールフラッシュアレイの方がトランザクション単価は低くなるかもしれない。一方で、低トランザクション環境で使われるものの、相対的に安価なハイブリッドストレージアレイの方がトランザクション単価は低くなる可能性もある。いずれにしても、指標の値は算出可能であり、明確だ。
“ソフト”コスト(効果を定量化しにくいコスト)と考えられるかもしれないが、IT管理者は、ユーザーエクスペリエンスの価値も考慮しなければならない。ユーザーは、アプリケーションが遅いと感じると、その理由が妥当かどうかにかかわらず、IT部門やITプロバイダーにネガティブなイメージを持ちやすい。「飛行機の乗客が折り畳みトレーにコーヒーの染みを見つけると、エンジンメンテナンスの質を疑問視する」といわれているのと少し似ている。このため、質に対するユーザーからの評判が良くなるように、追加費用を投じるのが理にかなっていそうだ。現在のようなITアウトソーシング時代にはなおさらだ。
データの重複排除と圧縮は、ほぼ全てのストレージシステムの必須機能になっており、容量単価を生の容量に基づく値よりも大幅に改善するためによく使われる。しかし、注意点がある。重複排除とシングルインスタンスストレージ(SIS)は、VMwareや「Microsoft Exchange」用のSIS製品といったOSやアプリケーションのレイヤーで適用されることが増えている。重複排除や圧縮は、同じデータに対して2回実行することはできない。このため、ストレージ管理者は、重複排除をスタックの上位レイヤーで利用する際、期待を下回る容量削減効果しか得られない可能性がある。
ごく最近まで、企業コンピューティングアプリケーションでのストレージの利用では、パフォーマンスに関しては最大IOPSばかりが注目されていた。これは、ストレージアレイが本質的に、特定のQoSを保証できなかったからかもしれない。
オールフラッシュアレイはこの状況を変える。米SolidFireは同社のフラッシュアレイを、“ストレージのQoS提供基盤”と銘打って宣伝している。同社は、ボリューム単位で最小、最大、バーストの各パラメータを設定した上でIOPSのプロビジョニングを行えるようにしている。このスロットリングは動的な調整とともに、ストレージ管理者にとっては、必要に応じて的確なパフォーマンスを提供するための追加的なメカニズムになる。
また、SolidFireは「QoSの保証は“うるさい隣人”の問題を解決する」と説明する。例えば、一般的なハイブリッドアレイでは、複数のアプリケーションがストレージのフラッシュティアにアクセスしようとして競合し、そのためにフラッシュのオーバーサブスクライブが発生して、全てのアプリケーションで最適なパフォーマンスが得られない恐れがある。IOPSをアプリケーションごとに個別に割り当てれば、この問題は解決されるという。
後編では、ベンダー各社が提供する製品の違いや使い分けのガイドラインを具体的に示す。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
2
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
3
「Excel至上主義」の終わらせ方 丸2日の手作業地獄から情シスと現場を救うには
-
4
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
5
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
6
「AI時代の統合基盤・エンタープライズAI管理」に関するアンケート
-
7
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
-
8
本当に安いPCで十分か? “すぐ重くなる”を防ぐノートPC選びの絶対条件
-
9
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
10
Claudeの不可視透かしに批判殺到 著作権消失や誤判定に潜む企業リスク
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー