2014年「データストレージ技術」番付(前編)
次世代SSDがついに登場、標準規格と3Dフラッシュで進化
2014年、6つのデータストレージ技術が多くの企業のIT環境にインパクトを与えそうだ。その筆頭は、躍進が予想されるソリッドステート技術である「NVMe(Non-Volatile Memory Express)」と「3Dフラッシュ」の2つだ。
毎年、米TechTargetでは「ホットなデータストレージ技術」の予測を発表している。読んだことがある人はご存じのように、われわれが取り上げるこれらの技術には、原則として“絵に描いた餅”のプロジェクトは含まれない。今後1年間に企業のIT環境にインパクトをもたらすと見込まれる、新しい、あるいは最近注目され始めたストレージ技術にフォーカスしている。
もっとも、こうした技術の中には、研究所から最近送り出されたばかりのストレージ技術が含まれることもある。しかし、それらは非常に有望な技術であり、すぐに存在感を発揮するようになると考えている。それが今日のストレージ市場の特徴だといえる。以前は技術が進化して支持を獲得するまでに何年もかかっていたが、最近では、短期間でたちまち人気を博する技術も出てきている。その好例が、急速に台頭している「ソリッドステートドライブ(SSD)」だ。
実際、今回の予測では、活発な開発が続いているフラッシュストレージが取り上げられている。具体的には、躍進が予想されるソリッドステート技術である「NVMe(Non-Volatile Memory Express)」と「3Dフラッシュ」の2つだ。2014年の予測でホットな技術として焦点が当てられているのは、これらに加え、ついに対応製品が充実してきた「プライマリストレージの重複排除」、ストレージと各種技術要素が統合された「コンバージドシステム」、導入が簡単な「バックアップアプライアンス」、台頭する「OpenStackストレージ、クラウドストレージとオンプレミスストレージの境界を曖昧にするハイブリッド技術」だ。
1. 次世代SSD
SSDは業界で人気を集めている。新興企業もレガシーシステムベンダーも、ソリッドステート/ディスクベースのハイブリッドシステムや、オールSSD(ソリッドステートドライブ)アレイ、サーバフラッシュを提供している。しかし、幸先の良いスタートだったものの、ソリッドステート技術の継続的な発展を妨げる障害が顕在化している。例えば、ネットワーク相互運用性を実現するための業界標準の欠如や、現在のNANDフラッシュ技術の物理的な限界などだ。
IT企業80社以上が加盟する業界コンソーシアム「NVMe Work Group」は、業界標準のPCIe(PCI Express)ホストコントローラーインタフェース規格としてNVMeの策定を行っている。ストレージシステムにおけるPCIeフラッシュデバイスと他のコンポーネントのやりとりを最適化することが目的だ。
「NVMeは、PCIeフラッシュアダプター、つまりフラッシュをマシンに組み込むためのカードが、CPUやアプリケーション、OSとのやりとりを標準化する」と、米ESG Labsの副社長を務めるブライアン・ギャレット氏は説明する。
NVMe規格がないと、ベンダーのPCIeアダプターごとに固有のドライバが必要になるため、PCIeフラッシュカードのメンテナンスや構成の手間が大変になる。NVMeの仕様はホストコントローラーのインタフェースを標準化し、マルチコアアーキテクチャ、エンドツーエンドのデータ保護、暗号化、セキュリティなどをサポートする。
NVMe 1.0の仕様は2011年3月に発表され、NVMe 1.1の仕様は2012年11月にリリースされた。だが、ギャレット氏によると「NVMeの採用は、業界の通常のパターンをたどっている。これは、規格策定とOEM製品のライフサイクルを反映している」という。「仕様が完成し、対応デバイスが提供されるようになっても、システムOEMがデバイスを選択して検証してソリューションに組み込み、機能させるのを待たなければならない」(ギャレット氏)
米ニューハンプシャー大学相互運用性研究所は、NVMeの相互運用性テストに合格したデバイスとプラットフォームのリストを公開している。その中には、米PMC-SierraのNVMeフラッシュコントローラー、韓国SamsungのNVMe PCIe SSD「XS1715」、米Western Digital Technologiesの「NVMe PCIe SSD」などが含まれる。2014年にはさらに多くのNVMe対応デバイスが出回りそうだ。
一方、半導体やストレージデバイスのベンダーは、3Dフラッシュメモリの垂直積層技術の開発も進めている。フラッシュの平面ダイサイズの縮小が追求されてきたが、その物理的な限界やデメリットが顕在化しようとしており、これらを克服する狙いだ。ダイが小さいほど、セル間干渉によってフラッシュメモリのパフォーマンスと信頼性が低下してしまうという問題がある。
Samsung Electronicsは2013年8月、3Dフラッシュメモリ「Vertical NAND(V-NAND)」の量産開始を発表した。3D積層のアイデアは、セルを垂直に積層することで、現行プロセスで製造されるフラッシュと比べて、書き込みパフォーマンスを2倍に、信頼性を10倍に高めることができるというものだと述べている。
「ストレージクラスのメモリという広いカテゴリーを見ると、3D NANDは、こうしたメモリの次の進化のステップだ」とギャレット氏は指摘する。「この進化は必ず起こるだろう」
3D積層型フラッシュを利用したデバイスの製品化は、NVMe対応デバイスほど早くは進まない見通しだ。3Dフラッシュ技術の開発は、NVMeに後れを取っているからだ。ギャレット氏は、2014年に3Dフラッシュ搭載デバイスが登場し、2015年に売り込みが本格化するだろうと予想している。ただし、フラッシュメーカーが、想定以上に早く物理的な“密度の壁”にぶつかったら、3Dフラッシュ搭載デバイスの開発にもっと拍車が掛かるだろうと、同氏は語る。
3Dフラッシュ搭載デバイスの製品化を早める可能性があるもう1つの要因として、コンシューマー向け機器もこの技術の恩恵を受けることが挙げられる。その開発にリソースを投入するのは、エンタープライズデバイスのメーカーだけとは限らないことになる。
2. プライマリストレージのデータ重複排除
データ重複排除がバックアップ製品の必須機能になって以来、ストレージマネジャーは、この機能がプライマリストレージに適用可能になるのを心待ちにしていた。
しかし、既存のプライマリストレージシステムで重複排除ができるようにするのは、バックアップストレージの場合よりもはるかに困難だった。
それから約10年後、プライマリストレージの重複排除は実用に耐えるものになった。われわれは2011年に、早まってプライマリストレージ重複排除をホットなデータストレージ技術の1つに挙げた。しかし、2014年の今、この技術はその評価にふさわしいものになっている。ストレージ分野における幾つかの逆行できない流れを踏まえると、プライマリストレージの重複排除は広く普及していきそうだ。
フラッシュストレージの台頭がそうした流れの1つだ。重複排除技術は、高価なSSDの空き容量を増やすのに役立つ。また、SSDのスピードのおかげで、インライン重複排除が円滑に実行され、本番環境に対応できる。クラウドも、重複排除の利用を促進する要因になる。データをネットワーク経由でパブリッククラウドに効率的に移動したい場合、データ容量を縮小しなければならないからだ。さらに、仮想化も重複排除の利用を後押しする。仮想マシン(VM)は冗長度が高く、高い効率で重複排除ができることが多いからだ。
2013年には、大手ベンダーが相次いでプライマリストレージ重複排除機能の提供に乗り出した。米Dellは、2010年にOcarina Networksを買収して得た技術をついにストレージアレイ「Compellent」で利用できるようにした。米Hitachi Data Systems(HDS)は、米PermabitとのOEM契約に基づき、「Hitachi NAS(HNAS)」に重複排除コードを追加した。米EMCは、刷新したユニファイドストレージプラットフォーム「VNX」に、固定長ブロック単位のポストプロセス方式のプライマリストレージ重複排除機能を追加した。
今では、ユーザーはストレージの購入時に、プライマリストレージ重複排除機能を求めるようになっている。
法律事務所の米Hedrick Gardner Kincheloe & GarofaloのITマネジャー、ジェレミー・デハート氏は、米Tegile Systemsのハイブリッドフラッシュアレイ「Zebi」を購入した際、重複排除機能の搭載は、製品を選定する上で重要な考慮点だったと語る。同事務所は、ノースカロライナ州シャーロットにある本部と、州内の別の場所にある支部にそれぞれ設置された同一のアレイ間で、データレプリケーションを行っている。アレイに搭載の重複排除機能のおかげで、空き容量の拡大とレプリケーションプロセスの高速化に成功している。
「重複排除とレプリケーションは、フラッシュの採用と並んでわれわれにとって大きなポイントだった」とデハート氏。「重複排除の導入は必須だった。われわれのIT環境は全面的に仮想化されているからだ。また、重複排除によって、データレプリケーションの大幅な高速化が可能になる」
EMCの顧客である米Beaufort Memorial HospitalのCIOを務めるエド・リックス氏は、重複排除とフラッシュの組み合わせに引かれて、新しいVNXアレイに大いに興味を持ったと語る。
「この製品は魅力的だ」と同氏。「フラッシュが手に入るだけでなく、重複排除機能も用意されている。エントリーレベルの7Tバイトアレイモデルを買えば、重複排除前換算で25~35Tバイト分のデータを格納できるかもしれない。しかも、フラッシュならではのスピードも利用できる」
今、重複排除の導入機運が高まっている背景には、通常、売れ筋のアレイのフラッシュストレージやクラウドゲートウェイ、OSなどにこの機能が搭載され、無料で提供されていることが挙げられる。
「データ重複排除は今や主流の機能であり、そのように扱われるべきだ」と、米Taneja Groupのコンサルティングアナリスト、アルン・タネジャ氏は語る。「従来の技術にとらわれてはいけない」
3. ハイパーコンバージドストレージ
周知のように、ストレージの複雑さと管理は、仮想サーバ環境の管理者が直面する2大課題となっている。従来のストレージシステムへのユーザーの不満が募るとともに、仮想マシン用に構築されたストレージへの関心が高まり、「ハイパーコンバージドストレージシステム」が勢いを増そうとしている。このシステムは、ストレージやネットワーキング、コンピュータなどで構成されるコンバージドシステムにハイパーバイザーも加わったオールインワン製品を指す。
現在、ハイパーコンバージドシステムは、少数の新興企業しか提供していない。米Nutanixが「Complete Cluster」(現在の名称は「Virtual Computing Platform」)で先陣を切り、米SimpliVityが2012年に「OmniCube」を発表。米Scale Computingが間もなく「HC3」をリリースした。しかし、米VMwareも「Virtual SAN(vSAN)」でこの分野に参入しようとしている。vSANはまだβ版だが、ハイパーコンバージドストレージへの関心と注目を高めることに一役買いそうだ。
仮想環境では通常、サーバとストレージを別々に管理する必要があるため、インフラが複雑になる。パフォーマンスを損なうボトルネックの根本原因を突き止めるのは厄介だ。「管理者が現場で何が起こっているかを把握しなければならなくなった場合、それは非常に困難な作業になる」と、Taneja Groupのシニアアナリスト、ジェフ・バーン氏は説明する。「従来のストレージの構造上にその仮想環境の構造をマッピングしようとしても、この2つの対応付けはあまりうまくいかない」
ハイパーコンバージドシステムでは、幾つかの方法でこの問題への対処が行われている。ストレージのプロビジョニングは、管理ポータルから直接行えるため、LUNとボリュームをマッピングする必要はない。また、環境の全ての構成要素を集約することで、一元的に管理を行うことができ、問題の特定も効率的に行える。
インフラと管理の簡素化が原動力となり、ハイパーコンバージドシステムは中小企業に人気の選択肢となっている。例えば、SimpliVityのOmniCubeは、サーバ、ソフトウェア、ハードドライブ、SSDが含まれており、キャパシティーの拡大は、追加ユニットを組み込むだけという手軽さだ。また、VMwareのvSANでは、ユーザーが既存のハードドライブとSSDからストレージプールを作成できる他、管理機能がハイパーバイザーに統合されている。
ハイパーコンバージド製品の1つの短所は、サポートされているハイパーバイザーのバリエーションが乏しいことだ。最も広く採用されているハイパーバイザーはVMwareであることから、ハイパーコンバージドベンダーが、最初にサポートする仮想化プラットフォームとしてVMwareを選んでいるのは理にかなっている。
Nutanix、Scale Computing、SimpliVityは、いずれもVMwareをサポートしており、NutanixとScale ComputingはオープンソースのKVMプラットフォームもサポートしている。しかし、業界アナリストによれば、ハイパーコンバージドシステムが大きな成功を収めるには、ベンダーは、サポートするハイパーバイザーを増やす必要があるという。
「複数のハイパーバイザーを利用している企業の方が多数派なので、VMware以外もサポートすることが、今後の発展にとって重要だと思う」と、ESGのシニアアナリストを務めるテリ・マクルーア氏は指摘する。
Nutanix、Scale Computing、SimpliVityはいずれも自社製品の次のバージョンで、サポートするハイパーバイザーを増やすことに関心を表明している。だが、明確な計画は示されていない。次回は、残りの3つの技術を紹介する。
※:本記事の執筆者は以下の通り
Rich Castagna, Todd Erickson, Ed Hannan, Sonia Lelii, Dave Raffo, Carol Sliwa and Sarah Wilson
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