IoTに必要なOSの条件
新OS「Windows 10 IoT Core」の謎に迫る どのデバイスで動いて何ができる?
昨今、「IoT」(モノのインターネット)が話題になり、注目されている。IoTを開発するときに必要となる条件とは。また、Windows 10への期待とは。
展示会や見本市では、品質が良い状態の製品を見ることができ、問題なく動くデモが見ることができる。そのため、展示会や見本市の後はベンダーの宣伝に感化されやすい状態になる。
「Microsoft Ignite 2015」からの帰路。筆者は米シカゴのオヘア空港のベンチで、米Microsoftの組み込み機器向けOS「Windows 10 IoT」のチームの取材内容に、いささか驚きを隠しきれなかった。彼らは数百個もの「Raspberry Pi 2(※)」をばらまいていた。展示会や見本市後のベンダーの宣伝に感化されやすい状態の補正の除いたとしても、MicrosoftがIoTのシェアを奪い取るかもしれないということを私は認めなければならない。
※2 ARM v7チップセットを搭載した低価格マシン。
2クラスのシステムがIoT開発を独占
米Nestのサーモスタットは、IoTの代表的な例としてしばしば取り上げられる(関連記事「GoogleのNest買収は「モノのインターネット(IoT)」への賭け」)。だが、実際は本物のIoTではない。それらは確かにインターネットを利用している。だが、IoTデバイスは199ドルもしないからだ。コンピュータと同じ値段で売られているクライアントデバイスは、IoTデバイスとは言わない。言い換えれば、Chromebookやタブレット、スマートフォンなどのデバイスは全てIoTから除外される。Nestや米ecobeeなどの話題のガジェットはIoTのほんの一部にすぎない。
IoTは、2つの価格帯に分類される。まずは高価格デバイス(クラス1)。これは5ドルから25ドル前後の価格で提供されているデバイスを指す。また、本来インターネットで利用することを目的としない高価なガジェットに埋め込まれているデバイスも対象だ。例えば、400ドルのインターネット対応コーヒーメーカーは、インターネット経由で制御できるが、その本来の目的は、コーヒーを作ることである。
一方、低価格デバイス(クラス2)が組み込まれているIoTガジェットは、5ドル以下で提供され、その多くは人の目に見えない。例えば、荷札や電球の中などに隠されている。明らかに、それらはクラス1と同じく正当なIoTではあるものの、使い捨てであるためにあまり話題にならない。
つまり、IoTを考えるとき私たちが心に思い描くのは、自分で
- コントロールできるモノ
- 見ることができるモノ
- やりとりできるモノ
- 人々が魅了されるモノ
なのである。そのために、私たちはユーザーインタフェース(UI)を必要とする。そこにMicrosoftのチャンスがある。
開発者たちにとってはおなじみのもの
私は「いつもMicrosoftがJerryWorldにいる」という発言が好きだ。米テキサスにあるJerryWorldとも呼ばれているフットボールスタジアムAT&Tスタジアムの巨大なスコアボードが再起動するときにブルースクリーンになることを笑っているのだ。システム管理者として、私たちはブルースクリーンになることのおかしさに反応する。しかし、LinuxやAppleではそうはならない。その理由は、過去20年間、私たちが利用してきたデバイスのほとんどで、Windowsが稼働していたからだ。
恐らく読者は「でも、NestはLinuxじゃないか」と考えるだろう。確かにその通りだ。だが、そうしたデバイスはIoTのごく一部だということを思い出して欲しい。米NCRのエンジニアがATMのOSにWindowsを選んだのは、このOSをよく知っていたからだ。彼らはネットワークやソフトウェアの専門家ではない。彼らの頭にあったのは、直射日光下での視認性であり、ユーザーエクスペリエンスであり、データソースの統合化であった。Windowsは使い慣れたOSであり、彼らの領域のさまざまなニーズに合致するライブラリ群があったのだ。
さて、ここからIoTの開発スケールに視野を広げる。数千、数万の小さな企業がIoTガジェットを開発している。彼らはそれぞれの分野で専門性を持っているが、決して高給取りのRailsやJava、オープンソース開発者を雇うことはしないだろう。そうした企業の25ドルのIoTガジェットには、下記が必要となる。
- 誰もが知るネットワーク
- UI
- 接続性ライブラリ
- 使い勝手も良いデバッグツール
さらに、それらのガジェットは安価であっても、
- ユーザーエクスペリエンスの改善
- 使用状況の監視
- パッチの適用
- エージェントの実行
- セキュリティの確保
- モニタリングや管理機能
が欠かせない。Windowsにはこれらのツールのサードパーティーエコシステムが確立されており、一般の開発者たちにも広く知られている。そんな開発者たちが独自のオープンソースで新しい心配事を抱え込みたいと思うことはないだろう。
「Windows 10 IoT Core」は、恐らく無料で提供される。そのため、コストの障壁も取り払うことになるだろう。よく知られたOSと開発ツール、膨大なライブラリ、慣れ親しんだリッチなUI、そして無料。IoTにとって、それらは非常に魅力的なものになるに違いない。
この状況は見応えのあるものになる。果たしてMicrosoftはIoTでもリーディングカンパニーになるのか。あるいは、Linuxが再び立ち上がり、クライアントPCで実現できなかったことをIoTで実現するのか。
恐らく、Microsoft Igniteが開催される前まで、Windows 10 IoT CoreをRaspberry Piに、コードエディタである「Visual Studio Code」を米Appleの「iMac」にインストールすることは、それほど多くの開発者が選ぶ選択肢ではなかった。もしかすると、筆者はまだ展示会の余熱にうなされているだけなのかもしれない。
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