活用が進むオープンソースSDN
Googleがネットワークベンダーになる? SDNで激変する業界地図
米AT&Tなどが「Open Networking Summit」でオープンソースSDNへの移行を表明。同イベントでは米GoogleによるSDNプラットフォーム「Jupiter」の発表もあった。
米AT&Tをはじめとする通信事業者はSDN(Software Defined Networking)においてオープンソーステクノロジーが重要な役割を果たすと考えている。だが、無償配布されるツールによってこれまでのベンダーとの関係がどのように変わるのかは未知数だ。
通信事業者は、オープンソースSDNとNFV(ネットワーク機能仮想化)が自社のネットワークの基盤になると確信している。AT&TのIT部門責任者を務めるアンドレ・フエッツチ氏は、2015年6月15~18日に米サンタクララで開催された「Open Networking Summit」の基調パネルディスカッションで「SDNとNFVに関して、全ての通信業者が取り組む意思がある」と発言した。このパネルディスカッションには韓国SK telecomや日本のNTTコミュニケーションズの幹部も参加している。
ネットワークベンダーの必要性
通信事業者は、SDNを利用することで事実上コストが下がり、ビジネス顧客向けの新たなサービスの開始や機能強化に向けて迅速に再構成できるネットワークを作り出せると考えている。通信事業者の間ではさまざまなSDN関連のオープンソーステクノロジーがテストされている。具体的には米Open Networking Foundationの「OpenFlow」、米OpenStack Foundationの「OpenStack」、米Linux Foundationの「Open Platform for NFV」(OPNFV)などが対象だ。
また、ネットワークベンダーの専用スイッチの機能の代わりに、オープンソースの同等の機能を利用できるかどうかもテストされている。SDNのOSを搭載したコモディティx86ハードウェア上でオープンソースSDNツールを実行できる通信事業者は、米Cisco Systems、米Juniper Networks、スウェーデンEricssonなどのベンダーとの契約交渉を有利に進められる可能性がある。
通信事業者はオープンソーステクノロジーによってネットワークベンダーが必要なくなるとは考えていない。ただし、オープンソース関連で事業を築き上げてきた企業は、ネットワークベンダーと全く同様に自社の実装に顧客を囲い込もうとする可能性がある。オープンソースだけで全ユーザーのニーズを満たせることはめったにない。そのためSDNの展開では恐らく一部専用テクノロジーを採用することになる。
「特定のベンダーに縛られることは避けたい。だが今のところオープンソースを利用することで今後囲い込みが行われるかどうかははっきりしてない」と韓国通信事業者SK telecomで研究/開発責任者を務めるカンウォン・リー氏は話す。
従来のネットワークベンダーもSDNプラットフォームをリリースしている。だが、まだ若い市場なので、AT&Tは新興企業に積極的に声を掛けて、そうした企業の製品の拡張性をテストすることを考えているとフエツッチ氏は言う。「当社は既存の価値基準を覆すような企業にも実際に門戸を開いている」
AT&Tは5年以内に同社のネットワークの75%以上をソフトウェアで制御することになると予測している。NFVのスタックをレイヤー1まで押し下げることも計画している。それによって、メトロ光伝送ネットワークの柔軟性が向上し、高価なハードウェアへの依存度が下がるとフエツッチ氏は話す。
AT&Tとそのパートナー企業はCORD(Central Office Re-architected as Data Center:データセンターとしての本部再構成)という概念実証プロジェクトのデモをONSで行った。CORDは、SDN、NFV、コモディティインフラを組み合わせて、データセンターのような柔軟性を備えた本部を作り出す。これをクラウドサービスプロバイダーが利用する。
リー氏によるとSK telecomは現在米Linux Foundationの「OpenDaylight」コントローラーと米Open Networking Labの「Open Network Operating System」(ONOS)をテストしているという。またOpenFlowを使用してコントローラーをSK telecomのワイヤレスバックホールを動作させる機器に接続するテストも行っている。
NTTコミュニケーションズはONOSとODENOS(O3 Orchestrator Suite)をネットワーク管理プラットフォームとして利用できるかどうかを調査中であると、同社のサービス基盤部長を務める伊藤幸夫氏は話す。ODENOSは、マルチレイヤー、マルチドメイン、マルチベンダーのネットワークを制御するオープンソースのオーケストレーションフレームワークだ。
専門家によると、SDNの実装において最大の障害となるのはテクノロジーではなく人だという。SDNを採用する通信事業者と企業は、ソフトウェア開発者のように考えるネットワークオペレータを雇う必要がある。そしてその逆もまたしかりだ。
「従業員と文化の歩調を合わせるために多くのことを実行した」とフエツッチ氏は言う。AT&Tは「包括的再トレーニングプログラム」を用意しており、ジョージア工科大学のオンライン講座も取り入れている。
Googleが「Jupiter」を発表
米Amazon、米Google、米Microsoftのような大手クラウドサービスプロバイダーは一般的にSDNの導入に関して通信事業者よりも先を行っている。例えばGoogleは自社開発したSDNを10年間も使用しているという。
ONSでGoogleは「Jupiter」を発表した。これは同社にとって第5世代のSDNテクノロジーに当たる。さらに同社はネットワークインフラを「Google Cloud Platform」を通じて社外開発者も利用できるようにすると発表した。
GoogleはJupiterのスイッチファブリックについて全般的な詳細を公開した。このスイッチファブリックによってデータを1Pビット/秒の速度で転送できる。Googleのネットワークは2等分されており、Jupiterはこの2つのセグメント間でデータを転送する。Googleによると1Pビット/秒という速度は、米国議会図書館のコンテンツ全てを0.1秒で転送できる速さだという。
同社のデータセンター設計では、一元管理されるソフトウェア制御スタックを利用して、小型で安価な数千個のスイッチを大規模な1つのスイッチファブリックとして機能させている。このソフトウェア制御スタックがスイッチファブリックの管理も行っている。
Googleはネットワークソフトウェアと、半導体メーカーのシリコンを利用したハードウェアを開発している。また同社のデータセンター用に調整したカスタムプロトコルへの依存度も増している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Excel至上主義」の終わらせ方 丸2日の手作業地獄から情シスと現場を救うには
-
2
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
3
「Microsoft 365のセキュリティ運用」に関するアンケート
-
4
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
5
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
6
「Salesforceのテスト自動化ツール」に関するアンケート
-
7
IT製品の導入に関するアンケート「サーバ&ストレージ」編
-
8
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
9
「AI時代の統合基盤・エンタープライズAI管理」に関するアンケート
-
10
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー