Facebook、Amazonにも負けないインフラ
Google並みのデータセンターが構築できる意外な方法
SDNを筆頭にソフトウェア中心のシステム構築アプローチが脚光を浴びている。Google、Facebook、Amazonのようなインターネット関連の大手企業並みのシステムを、より低コストで簡単に構築可能な手法の開発が進められている。
米EMCは、企業が新たなデータセンターを計画する際には、米Google、米Facebook、米Amazonといった大手ネット企業のこれまでのアプローチを踏襲してほしいと考えている。それが、2013年5月上旬に米国ラスベガスで開催された「EMC World 2013」での同社のキーメッセージだった。このイベントでEMCは「Software Defined Storage」(ソフトウェアで定義されたストレージ)プラットフォーム「EMC ViPR」を発表した。企業はViPRにより、Googleなど大手ネット企業が採用しているストレージモデルへの大きな第一歩を踏み出せるとしている。
「博士号取得者やロケット科学者を1000人雇わなくても、インターネットスケールのデータセンターを構築できる」と、EMCのプロダクトオペレーション&マーケティング担当上級副社長、ジェレミー・バートン氏は語った。「GoogleやFacebook、Amazonのような企業は、自社の目指す環境を実現するために独自のデータセンターを構築した。われわれは、企業がこれら大手ネット企業に倣ってデータセンターを構築するために利用できるソフトウェアを開発している」
「ViPRは、Googleのようなデータセンターを運用したいが、独自のカスタム環境を構築し、メンテナンスするのは避けたいという企業向けに作られている」と、EMCの社長を務めるデビッド・ゴールデン氏は説明した。
Googleなど大手ネット企業が使っているようなストレージを構築するには、同社やFacebook、Amazonが採用しているHadoopや同様のフレームワークが必要になる。ViPRは、あらゆるタイプのストレージをプール化し、これを使ってデータを管理する他、Hadoopワークロードも扱うと、EMCは約束している。EMCはクラスタNAS(Network Attached Storage)プラットフォームのEMC Isilonでも、HDFS(Hadoop Distributed File System)を堅固にサポートしている。
しかし、新しいデータセンターに関するEMCのメッセージは、ストレージ分野の枠に収まらない。EMC子会社の米VMwareと米Pivotal Labsは、EMC World 2013で大役を務めた。全てがソフトウェアで定義される世界における自らの役割を強力にアピールしたのである。
EMCのジョー・トゥッチCEOは、ユーザー端末とITインフラの組み合わせが、従来のPCとサーバ中心のデータセンターから、モバイル端末と「モバイル、クラウド、ビッグデータ、ソーシャルネットワーク」といったアプリケーションを支える新しいデータセンターへと移行していると述べた。こうしたデータセンターでは、ソフトウェア定義(Software Defined)のコンピューティング、ネットワーキングおよびストレージが必要になると、同氏は指摘した。「抽象化、プール化、自動化が新たなバズワードだ」と同氏。「これらは、ソフトウェア定義のデータセンター(Software Defined Data Center)の最上位の目的だ」
Pivotalのポール・マリッツCEOも、新しいデータセンターがどのようなものになるかを説明するため、Googleのような大手ネット企業のストレージモデルを引き合いに出した。「大手の消費者向けインターネット企業は、極めて大規模な情報ストアを持っている」と同氏。「Googleは、インターネット上の全情報のインデックス作成に着手したとき、アーキテクチャのイノベーションを実現しなければならなかった」。新アーキテクチャ(Google File System)の鍵を握っているのは、一種のオブジェクトストレージだと、マリッツ氏は述べた。
Hadoopによるベンダーロックイン回避には代償も
ドイツのDeutsche Telekomの法人顧客向けITサービス事業部門として年商130億ドルを稼ぐT-Systems。同部門のビッグデータおよびクラウドアーキテクチャ担当副社長を務めるユルゲン・アーバンスキー氏は、そうした新タイプのデータセンターを構築している。このデータセンターでは20P(ペタ)バイト以上のデータを保有しており、「今ではわれわれのストレージ運用形態は、以前よりも格段に進化している。その大きな原動力はHadoopだ」と同氏は語った。
アーバンスキー氏は、T-Systemsと大手インターネット企業のデータセンターの違いは、T-Systemsのワークロードの方がはるかに多種多様であることだと語った。T-Systemsの顧客企業は幅広い業種にわたっているからだ。
同氏は「T-SystemsのデータセンターはHadoopに大きく依存している」と述べ、その理由をこう説明した。「われわれとしてはベンダーロックインは困る。だが、Hadoopはオープンソースだ。業界標準のハードウェアと安価なストレージの上で動かせる」
アーバンスキー氏によると、T-SystemsはVMwareの大口顧客だが、EMC製ストレージはあまり使っていないという。同氏は「T-Systemsは以前からNetAppユーザーだが、全種類のベンダーのストレージを保有している」と語った。しかし、顧客のワークロードの一部は、Isilonを使って実行しているという。Hadoop機能が目当てだ。
「われわれは2015年までに、われわれが入手する新しいデータの80%が、まずHadoopに渡されるようになると確信している」とアーバンスキー氏。「その下層の物理インフラが何か、例えば、DAS(Direct Attached Storage)なのか、Isilonなのかは分からない。いずれにしても、データ管理層と分散ファイルシステムはHadoopが担うことになる」
アーバンスキー氏は現在、エンタープライズストレージのHadoopクラスタにもたらす価値が、コモディティホワイトボックスよりも高いこうしたストレージの価格に見合うかどうかを見極めようとしている。
例えば、Isilonは優れたデータ保護とパフォーマンスを提供することに加えて、Hadoopでは望めないコモディティストレージ上でのマルチテナンシーを実現する。
「マルチテナンシーはわれわれにとって重要な意味を持つ」と同氏。「(独自動車メーカーの)Daimlerは、自社のデータをBMWと同じクラスタに置きたいだろうか。そんなことはないはずだ。しかし、われわれは両社を顧客に抱えている。このため、マルチテナンシーは、われわれが設計で押さえるべき重要ポイントとなっている。だが現在、Hadoop自体はマルチテナンシーをサポートしていない。では、オープンソース(お望みなら、コモディティ)と、設備投資の増加およびベンダーロックインにつながるが、オープンソースにはないメリットを提供するといえるものの間で、どのようにバランスを取ればよいのか」
アーバンスキー氏は、こうしたバランスはViPRでも問題になるだろうとの見方を示した。ViPRはEMCのアレイに加え、コモディティやサードパーティー製ストレージも完全にサポートすると、EMCは強調している。
「ViPRでは1つのコントロールプレーンが用意されており、これは、ストレージをプール全体にわたって管理するのに役立つ」とアーバンスキー氏は語った。「この点は気に入っている。だが、最も厄介な問題は『ストレージプール全体のうち、どのくらいの割合がホワイトボックスになるか』だ。これはEMCにとっては、ビジネスモデル上のかなり大きな問題に行き着く。例えば、ストレージの営業担当者に2000万ドルのノルマがあるとして、今後は個々の案件でソフトウェアの占める金額だけで数十万ドルに上るとしたら、どのように他のコストを抑えて提案を行い、そしてそれらを積み上げてノルマを達成するのか。こうした売り方は業界にとって大きな転換であり、人々はそれに直面しようとしている」
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