ビッグデータから価値を生み出すには
ビッグデータプロジェクトの成功にはHadoopだけでは不十分
多くの事例が紹介され、さらに注目が集まるビッグデータ活用。その成功のためにはデータの連係や仮想化、セルフサービス型分析、マスターデータ管理に関する戦略も考慮する必要がある。
米McDonald'sはハンバーガー用のパンの色、形、さらにはゴマの分散具合を検査するための新しい撮影システムを導入した。国連は戦争や深刻な貧困、健康被害などに対する早期警戒システムとしてTwitterの利用を検討している。米Heritage Provider Networkでは、患者の再入院の可能性の予測精度を上げるために、1万件の事例を収集した。
これらの組織は一見すると互いに何のつながりもないように見えるが、実は共通点が1つある。それは、今日のIT業界で大きな話題となっている技術を有効に活用しているのだ。そしてこの3つの組織は、コンサルティング会社の米Gartnerが最近開催した「Gaining Value from Big Data」(ビッグデータから価値を引き出す)と題されたWebセミナーで脚光を浴びた。
「流行語は必ずしもダメなものとは限らない」とGartnerのリサーチ担当副社長、ダグ・レイニー氏はセミナーのプレゼンテーションで語った。「流行語が興味深い技術や重要な技術を表していることも多い」
レイニー氏のプレゼンテーションでは、人気が高まっているHadoopの話題から、ビッグデータとは何か、そしてなぜそれが大きなチャレンジであるのかという問題に論点が移っていった。
ビッグデータとは何か
かつては目立たない存在だったビッグデータが一躍脚光を浴びるようになったのは、レイニー氏の言う“7つの要因”、すなわち各種の分析トレンドとビジネスインテリジェンス(BI)トレンドが融合したからだ。
7つの要因とは、「コンシューマー化」(ITの個人利用とビジネスユースの融合)、「気候の変動」(データの活用が競争優位に直結)、「文化の変化」(意思決定の基準が個人的判断から科学に)、「企業の認識の変化」(データに基づく決定が戦略的に重要)、「コラボレーションの拡大」「分析技術の改良」(データの連係と処理の効率化)、そして「コンテンツの膨張」(特に非構造型コンテンツ)だ。
ビッグデータがこれほど注目されるようになったのは、これらのトレンドが重なったということで説明がつくかもしれないが、この用語をシンプルに定義するのは業界にとっては難問のようだ。ベンダーやアナリストによってビッグデータの定義が異なることが一部で混乱を招いている。現時点では、「量的増加」「速度」「多様性」の3つがビッグデータの本質的要素であるという見方が大勢を占めている。
「これらは今後も主要な課題の中心要素であり続けるだろうが、われわれはその他にもビッグデータの多数の特質を定義した」とレイニー氏は語る。
レイニー氏によると、ビッグデータの包括的定義には、データに何が起きているかだけでなく、データをインテリジェンスに変える方法なども含まれるという。言い換えれば、企業が知見を得たり、意思決定を行ったり、業務を自動化したりできるようにビッグデータを処理するのに必要な新タイプのハードウェアを考慮しなければならないということだ。
「この定義には、ビッグデータのチャレンジと価値の両方が含まれている」と同氏は説明する。
技術だけでは不十分
今日のデータ環境は、企業がデータを取得するソースが多数存在するために複雑化している。レイニー氏によると、10年ないし15年前と比べると、データソースの数は5倍以上に増えたという。
「ほとんどのデータは無料あるいはごくわずかなコストで手に入る」と同氏は話す。
レイニー氏はこうしたデータの例として、顧客、パートナー、従業員、サプライヤーと良好な関係を構築するためのエコシステムの一部になっているデータ、サードパーティーから提供される信用度などのデータ、政府発表などの公的データ、ソーシャルメディアデータ、同氏の言う「ダークデータ」(主な役割を終え、コンプライアンスのために保存されたまま忘れ去られているデータ)などを挙げている。
レイニー氏は、企業は新しい(最新という意味ではない)データソースを活用すべきだとアドバイスする。まず社内にある未利用のデータからスタートし、それから他のデータソースの活用へと進むことで、新たな知見が得られる可能性があるという。
「データ量が少なかったころは、そこに何らかの価値が存在するだろうといった大ざっぱな認識だけで十分だったかもしれない。しかし今日では、情報の価値を高め、それを測定することを考慮する必要がある」(同氏)
Gartnerによると、Fortune 500企業の85%は、2015年までにビッグデータを競争優位のために活用することはできないだろうとしている。
企業がビッグデータを活用するには、データをどのように保存、管理するのか検討する必要があり、それには新たな技術への投資が必要になる可能性が高い。今日、ビッグデータをめぐる議論の多くは、そうした技術(Hadoopなど)を中心に展開されているが、「企業がデータから知見を引き出そうとすると、ストレージのニーズよりも深い問題に直面するだろう」とレイニー氏は話す。企業はデータの連係、データの仮想化、セルフサービス型分析、マスターデータ管理に関する戦略も考慮する必要があるという。
データ量の増大と格闘している企業は、機密情報の不適切な取り扱いというリスクの増大にも対処しなければならない。レイニー氏によると、企業はデータガバナンスプログラムやデータ管理者を配備することにより、データをめぐるポリシーと手続きを確立すべきだという。さらに同氏は、電子データ保険への加入も推奨する。
データ管理の問題に加え、そのデータを分析するためのツールも必要であり、それにはソフトウェアとスキルの両方にさらなる投資が必要になる可能性がある。レイニー氏によると、いずれもベーシックなBIの枠の中にとどまるものではないという。
「先進的な企業はベーシックなBIの先に目を向け、予測分析、データ/テキストマイニング、さらにマルチメディアマイニングの導入を検討している」と同氏は語る。「また、具象化と階層化が進む仮想化技術、複雑なイベント処理、ルールエンジン、自然言語なども彼らの視野に入っている」
Gartnerでは、2015年までは、情報インフラの拡張と刷新への投資の70%はビジネス分析へのニーズに促されたものになると予測している。
しかしビッグデータ環境を本格的に立ち上げるためには、強力なリーダーシップが必要とされる。レイニー氏によると、それは技術的スキルと同じくらい重要な要素だという。
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