確実なコミュニケーションのために
豊島区が実現した「情報共有における脱メール」 UCが変えたワークスタイルとは(1/2 ページ)
日本一人口密度が高い街である豊島区が2015年5月に新庁舎を開庁した。それに合わせて、コミュニケーション基盤を一新し、組舎内コミュニケーションの方法を変えてきたという。
東京の三大副都心である「池袋」を擁する豊島区は、日本一人口密度が高い街で、1ヘクタールに約200人が住む。商業都市である池袋から離れると閑静な住宅街が広がり、商業街と住宅街のバランスが取れている街でもある。その豊島区が、2015年5月7日の新庁舎開庁に合わせて組織内のコミュニケーション基盤を一新した。
「庁内の働き方をどうにかして変えて、区民サービスを向上したかった」と、豊島区 政策経営部情報管理課長 高橋邦夫氏はコミュニケーション基盤一新の意義を語る。
新庁舎に移転する前、豊島区はコミュニケーション基盤に対し2つの課題を抱えていたという。
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豊島区を悩ませた「2つの課題」
課題1:配線の維持管理に毎年約2000万円
1つ目の課題はコストだ。豊島区の旧庁舎ではアナログ電話と有線LANを使っており、その回線ケーブルやLANケーブルを庁内に施設していた。そのため、人事異動や組織改正があるごとに、配線工事をしなければならなかった。配線のための空間を設けたOAフロアを採用していなかったことや、区民サービスへの影響を避けるべく夜間に配線工事をする必要があったことから、配線工事や維持費に毎年約2000万円ものコストが掛かっていた。
課題2:メールベースの情報共有が限界に
豊島区は一般企業と同様、組織内外のコミュニケーション手段といえばメールが中心だった。連絡事項があると「取りあえず、メールで連絡する」という文化が根付いていた。当然ながら職員の手元には次から次へとメールが届くことになり、処理がしきないほどの量になる状況が常態化していた。こうしたことから、メールを使った情報共有に限界を感じるようになったという。
「今回、この新庁舎移転を機に、コミュニケーションの仕組みをどうにかして変えたかった」と高橋氏は話す。
コストの削減と情報共有の効率化を実現したツールとは
コミュニケーションに関する課題を解決するため、豊島区の情報管理課では2012年からコミュニケーション基盤の刷新の検討を開始した。そして検討の末、日本マイクロソフトのコラボレーションツール「Microsoft Lync(現Skype for Business)」を導入した。選定理由は、大きく2つあったという。
まずは、ライセンス制度の柔軟性だ。豊島区では、Lync導入に当たり、日本マイクロソフトが提供する中/大規模の公共機関向けボリュームライセンス制度の「Microsoft Enterprise Agreement(EA) for Government Partners」契約をした。これは、下記の4種類の製品を3年契約し毎年使用料を支払う形式のライセンスだ。Lyncの利用には、このうち「Core CAL」「Enterprise CAL」といったクライアントアクセスライセンスを活用する。
- 日本マイクロソフトの各種サーバ製品及びオンラインサービスのアクセス権「Core CAL」または「Enterprise CAL」
- Microsoft Officeスイート「Office Professional Plus」
- Windowsの法人向けエディション「Windows Enterprise」
EA for Government Partnersを契約した組織は、Lyncなどのサーバ製品へアクセスするクライアントPCを追加購入した場合、都度ライセンスを購入するのではなく、事前に一定数のライセンスを契約し、翌年に増えた分だけ追加でライセンスを契約すればよい。一般的なライセンス制度の場合、クライアントPCを追加するたびに一からライセンスを購入する必要があり、費用と手間が掛かってしまう。
2つ目は、機能面/性能面だ。「音質と映像が問題なく使えるレベルだった」(高橋氏)ことも、Lyncの導入を後押しした。コミュニケーション製品を選定する際、同氏は音質を重要視していた。区民事業所などにきた住民と本庁舎の職員間で通話し区民サービスを提供する際、音質が悪いことが原因でサービスが滞ることを避けるためだ。音質に対する懸念を拭い去るべく、Lync導入前に職員を50人ほど日本マイクロソフトに派遣し、実際に音質のテストをした。そして、派遣した50人全員が、Lyncなら音声に関して問題ないと判断したという。
映像に関しても、区民事業所などが耳の不自由な人の対応をするときに、本庁舎の手話通訳担当者とWeb会議で話せるようにするため、選定時の重要なポイントの1つとして挙げていた。音声と同様、Web会議で手話対応に支障がないかどうか手話通訳担当者にテストをしてもらい、「問題なし」とのお墨付きを得たという。このように、豊島区はライセンス制度の柔軟性や機能面/性能面の利点を総合的に判断し、Lyncの採用に至った。
Lyncの機能活用でアナログ電話を撤廃、配線管理の負荷から解放
Lyncの導入は、豊島区が抱えていた課題の解消に大きく貢献した。同区は新庁舎の移転に合わせて、アナログ電話をほぼ全て撤廃し、Lyncの機能を利用したIP電話に移行した。それにより、以前のように配線工事をする必要がなくなったと高橋氏は話す。「いつまでもアナログ電話の時代は続かないという思いがあり、2009年4月に課長の任に就いてからIP電話の導入を検討していた」(同氏)。結果として、配線の維持管理不可の軽減につながったという。
IP電話への移行と併せて、職員一人一人に電話機を配置するのではなく、課ごとに1台設置するようにあらためた。電話機に電話がかかると、職員のクライアントPCにポップアップが表示され、職員はそのポップアップのボタンをクリックすることで電話を受けることができる。
IP電話に不慣れな職員も
自治体の場合、職員個人ではなく組織として電話をかけ、組織として電話を受けることが多い。そのため、必ず担当者に電話がつながるわけではなく、転送することが多々ある。IP電話への移行直後、職員には転送の方法で戸惑いがあったという。「職員が転送に不慣れのため、転送中に電話が切れたり、操作に時間がかかり通話相手を怒らせてしまうことがあった。これに関しては、職員に慣れてもらうしかない」と高橋氏は話す。
ただし、全ての電話機をIP電話に移行したわけではなく、各課長席にアナログ電話を1台設置している。その理由として高橋氏は、停電やIP電話障害時のリスク分散に加え、災害時優先電話(災害時に発信制限が掛からない電話)としての利用を挙げる。
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