失敗しない「学校IT製品」の選び方:セキュリティ編【前編】
“目隠し型セキュリティ”は子どもをダメにする(2/2 ページ)
子どもを守ることが最重要
では、教育機関にはセキュリティ対策は不要なのかと問われれば、答えは当然ながら「ノー」だ。教育機関がIT活用を進める上で守るべきなのは、学習者の安全である。
学習者を取り巻く環境は、以前と比べてかなり危険になってきている。学校や学習者を物理的に襲う事件だけでなく、知らず知らずのうちに犯罪などに巻き込まれてしまうことが目立ち始めてきたからだ。
時にこうした事件を助長するのが、気軽にインターネットが利用できるスマートフォンや携帯ゲーム機の存在である。こうした端末で不用意にWebサービスを利用すれば、学習者のプライバシー情報が全世界へと簡単に流出してしまう。この情報流出がストーカーによる被害を招いたり、脅迫事件に発展する例も多い。さらに児童ポルノやネットいじめなど、多くの事件につながる可能性をはらんでいる。
見知らぬ人との交流の機会が多い都会よりも郊外が安全だという認識も、既に過去のものとなりつつある。全世界につながるインターネットの脅威レベルは、全国でほとんど変わらない。こうした環境の中で学習者をいかに守るかが、教育機関にとって最も重要になっているのだ。
「目隠し型セキュリティ対策」の是非
学習者がインターネットの脅威に直接さらされる状況を前にして、教員や保護者が憂慮しないはずがない。例えば、URLフィルタリングによる有害サイトの閲覧や、「LINE」に代表されるメッセージングアプリやSNSの利用を禁止して、有害なものを学習者の目に触れさせないようにしたいと考える教員/保護者も少なくないだろう。筆者も人の親でもあるので、こうした気持ちは十分理解できる。
ただし、学習者に“目隠し”をして、「有害なものは世の中にはない」かのように仕立ててしまうのは、結果として大きなリスクを学習者の将来に先送りしているにすぎない(図1)。学習者が純粋であればあるほど、有害なものがインターネットにあることを知らずに高校や大学を卒業し、免疫のない状態で社会人になってしまう可能性が高くなる。危険がないという認識でインターネットを使うのは、夏だからといって薄着でエベレスト山頂に行くようなものだ。
学習者をいつまでも“無菌室”に置いておくわけにはいかない。インターネットにまつわる事件に巻き込まれることがないようにするためには、教員や保護者が守っている間に、危ない場所に対する知識や勘を学習者に身に付けてもらう必要があるのだ。
併せて読みたいお薦め記事
教育ITの先駆者が議論、学校セキュリティ対策の課題とは
思考停止せず、学習者に脅威の存在を教える
怖いものや危険なものから大切な学習者を遠ざけたいと考えるのは、人間の心理として仕方がないことだ。さらに、教員や保護者が幼少のころには無かったインターネットが犯罪や事件と複雑に絡み合っている現状で、今起こっていることをきちんと理解し、学習者に教えることは非常に難易度が高い。
だが、単に「危険だから禁止する」「あたかも危険なものが存在しないように見せる」といった対処をしてしまうと、一時的に効果は上がるものの、学習者の将来に大きな禍根を残すことになる。学習者の将来を心配して一時的に目隠しをしたつもりが、その一時的な効果に自分たちもだまされてしまうのである。
学習者には、転んでも自分の足で立ち上がり、擦り傷を作りながら現実社会にある危険を一つ一つ覚えていってもらうべきだ。不用意に隠すのではなく、まずは経験させる。そして、危険が大きければ巧みに回避するスキルも併せて身に付けてもらう。こうした工夫が、IT化時代の教育機関に求められる姿勢だ。
教員や保護者が思考停止せずに現状を理解し、学習者に「そこに脅威がある」という事実を自覚させ、かつ“大けが”はしないように経験を積んでもらい、階段を一歩ずつ上らせて徐々に成長させる環境が必要なのだ。これにより、脅威を巧みに回避しながらも情報活用ができるスキルが身に付くと考えている(図2)。
次回は、SNSなどの具体的な脅威の内容や対処方法などを述べる。
執筆者紹介
武田一城(たけだ かずしろ) 株式会社日立ソリューションズ
情報セキュリティ、システムプラットフォーム、オープンソースなどさまざまな分野のマーケティング業務に従事。現在は特に学校IT分野における市場調査や企画に重点的に携わる。2011年より日本PostgreSQLユーザ会の理事を兼務し、代表的なオープンソースデータベース「PostgreSQL」の普及啓発活動も行っている。
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失敗しない「学校IT製品」の選び方
教育機関がIT製品を導入する際、どのような点に気を付けて製品選定を進めればよいのか。製品分野の基礎知識をおさらいしつつ、製品選びのポイントを伝授する。
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