中堅・中小企業を先手必勝へと導く「一歩進んだIT活用」を学ぶ【第4回】
大企業だけのもの? 中堅・中小企業も無関係ではない「IT活用の新領域」とは(2/2 ページ)
新たなIT活用領域は「規模」ではなく「内容」で考えることが大切
SNSを用いた「自社の知名度向上」や「顧客との対話」への取り組みは初期投資負担も最小限で済む。そのため、中堅・中小企業にとっては最も踏み出しやすい新たなIT活用領域の1つといえるだろう。だが、SNSには日々膨大な数の情報が流れており、大企業と比べ知名度の低い中堅・中小企業が注目を集めることは容易ではない。そのため、ネット上とは別に対面での交流機会を増やすなどといった別の施策を併用しない限り、得られる効果もあまり高くないのが実情だ。今後3年間で見た場合のソーシャルへの取り組み意向がやや低い点にはこうした背景があるものと考えられる。
では、ビッグデータやIoT/M2Mへの取り組み意向がソーシャルと比べて高い理由は何だろうか。実は、この結果はIT活用の新たな領域において「規模」よりも「内容」に着目している中堅・中小企業が既に存在していることを示している。2つのキーワードについて順に詳しく見ていくことにしよう。
ビッグデータというと、「大企業が膨大な量のデータを収集し、高性能なコンピュータを用いて集計、分析を行う」というイメージが強い。その名の通り、データが大規模であることが暗黙の前提となっているわけだ。だが、大企業と比べてデータ量は少ないが、高度なデータ活用を行っている例は中堅・中小企業にも存在する。
例えば、「過去の気象データと売り上げデータの関連性を分析し、気象予報に基づいて商品在庫を調整する」などだ。この例を見ても分かるように、ビッグデータ活用の本質は単にデータ量が多いということより、「社外のデータ(例の場合は気象データ)と社内のデータを組み合わせる」ことにあるといえる。こうした視点に立てば、中堅・中小企業にとってもビッグデータを活用する機会が大きく広がってくる。インターネットには「人口動態データ」(どの地域にどれくらいの人々が居住しているかなど)をはじめとするさまざまなデータが存在する。こうしたデータと自社のビジネスとの接点を探ることで、「いつ、どこに注力すべきか」を知ることができる。
中堅・中小企業としては「ビッグデータとは膨大なデータを扱う大企業のためのもの」という先入観にとらわれず、社内外に存在するさまざまなデータを有効活用するという観点からビッグデータというキーワードを捉えておくことが大切だ。
次にIoT/M2Mについて見ていこう。IoTとは「Internet of Things」の略、M2Mは「Machine to Machine」の略だ。冒頭の定義にも記載したように機器同士がセンサーなどから得たデータをやりとりすることを表している。キーワード自体が新しいため、IoT/M2Mも大企業に限られた先進的・実験的な取り組みと捉えられやすい。だが、「センサーとネットワークによって機器を効率的に管理する」といった取り組みは以前から存在する。
例えば、「自動販売機やエレベータの稼働状況をネットワーク経由で遠隔監視する」といった取り組みはIoT/M2Mというキーワードが登場するずっと前から行われてきた。これを「製造業における製造装置」や「ヒトが身に着けるデバイス」まで拡大しようというのがIoT/M2Mの本質といえる。
そうすると、「製造装置の稼働状況を把握することで故障を予知したり、寿命を延ばしたりする」(主に製造業における活用シーン)、「店舗に設置したセンサーと消費者が持つスマートフォンを通信させ、個々の興味に合致した情報をスマートフォンに表示することで店舗内へと誘導する」(主に小売業やサービス業における活用シーン)などといったさまざまな取り組みが考えられる。他社との差別化を図るためには、こうした新たな取り組みも必要であり、実際にそう考える中堅・中小企業が既に存在していることを上記のグラフは示しているといえるだろう。
投資規模の観点からもIT活用の新領域は「近い将来」における検討項目
昨今では中堅・中小企業でも無理なく導入可能な集計・分析ツールなども登場してきており、ビッグデータに取り組むハードルは下がりつつある。とはいえ、従来の業務システムとは異なるため、相応の投資は必要となる。IoT/M2Mについても、データを取集するための各種センサーに加えて、そこから収集したデータの分析も必要となる。つまり、IoT/M2Mはビッグデータとも深く関係してくるわけだ。さらにデータの取得や授受においてはセキュリティやプライバシーにも十分な配慮が必要だ。
では、中堅・中小企業全体で見た場合、こうしたIT活用の新領域に対しては今後どれくらいの投資が予測されるだろうか。それを示したものが以下のグラフである。年商5億円以上~100億円未満の中堅・中小企業に対し、ソーシャル、ビッグデータ、IoT/M2Mに対する投資(ハードウェア、ソフトウェア、サービス利用、システム構築・運用といった社外に対して拠出するIT関連投資全般を含む)の総額を算出したものだ。
全体の投資規模で見た場合にも、ソーシャルと比べてビッグデータやIoT/M2Mの方が大きいことが分かる。この結果が示すように、IT活用の新領域は大企業に限ったものではなく、中堅・中小企業にとってもごく近い将来の検討項目となっている。日々の業務をこなす上では、どうしても従来の業務システムを維持することだけに目が注がれてしまいがちだ。だが、それと並行して今回示したような新しい領域にも注意を払うことが非常に大切となってくる。
これまで全4回にわたり、中堅・中小企業のIT投資概況(第1回)、法制度への対応(第2回)、クラウド活用(第3回)、IT活用の新領域(第4回)とさまざまな観点から、中堅・中小企業がIT活用を考える上でのポイントについて考察してきた。本連載がさらなる成長を目指す中堅・中小企業の方々の一助となれば幸いである。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社MatrixFlow] 「物流リソース最適化」ガイド:人員・配車・傭車を出庫依頼の確定前に決めきる -
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
3
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
4
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
5
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
6
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
7
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
-
8
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
9
「結局使わなくなる」Microsoft 365 Copilotを半年で定着 キリンの3施策
-
10
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー