企業をなかなか気にしてくれないApple
“iPhone使いたがり社員”がきっかけ、レガシーITはもう通用しない(2/2 ページ)
IT部門のニーズへの対応の遅さ
企業がApple製品を受け入れる上で大きな障害となってきたのが、コストの問題だ。前出のTech Pro Researchの調査では、「Apple製品は機器関連の支出増加を招いた」と答えた回答者は35パーセント、「IT部門の支出総額が増加した」と答えたのは22%だった。
またApple製品をサポート対象にするということは、ビジネス向けに設計されていない端末の管理とセキュリティにIT部門が対処しなければならないことを意味する。業界専門家の多くが「Appleは、iOSを本格的に管理するために必要なツールやサポートをIT管理者に提供するのが遅い」と指摘する。
「Appleが企業に役立つようにOSを根本的に改良することはない」と、前出Carlisle Construction Materialsのジャノビッチ氏は話す。例えば、同氏が勤務するCarlisleでは、米LogMeInのリモートサポートツールである「LogMeIn Rescue」を使っている。このツールを使うと、従業員のAndroid端末にアクセスして本格的なリモート管理が可能になる。ただしiOS端末の場合、Rescueは端末の情報とスクリーンショットを取り込むことしかできない。「Appleは管理者からのアクセスを制限し過ぎだ」(同氏)
企業のIT部門がApple端末を管理するために、Appleがこれまで提供してきたツールに関しても評価が分かれている。「Appleは本質的にITベンダーではない」と指摘するのは、米調査会社451 Researchのエンタープライズモビリティ調査ディレクター、クリス・ヘイゼルトン氏だ。「やればもっとできるはずなのだが、彼らは伝統的にコンシューマー市場をターゲットにしてきた」(ヘイゼルトン氏)
例えば、Appleが企業のモバイルアプリを管理するための機能「Managed Open In」をiOSに組み込んだのは、「iOS 7」が登場した2013年のことだ。この機能は、どのアプリが社内のデータにアクセスできるかをIT部門がきめ細かく管理することを可能にする。米VMwareをはじめとするEMMベンダー各社はそれよりも前に、iOS管理用に同様の機能を提供していた。
Appleはその1年後の2014年に米IBMと提携を結び、各業界に特化した100種類の企業向けiOSアプリを開発すると発表した。業界専門家によると、IBMとの提携は、金融業界や旅行業界などの主要分野でAppleの信用を高める可能性があるという。だがIBMとAppleが約束したアプリでこれまでにリリースされたのは、約30種類にすぎない。
2015年にリリースされた「iOS 9」では、端末管理機能を強化した。例えば、アプリの一括購入プログラムである「Volume Purchase Program」からAppleサービスのアカウント「Apple ID」を解除できるようにした。また、AppleはEMMベンダーの米MobileIronおよびVMware傘下の米AirWatchとの連係を通じて、「Box」「DocuSign」「MicroStrategy」などサードパーティー製のiOS用ビジネスアプリの配備とセキュリティ確保を可能にする方針だ。これらの新プラットフォームはまだリリースされていないが、アプリのラッピングやソフトウェア開発キットを使わなくてもビジネスアプリの設定と認証を可能にするのが狙いだ。
Appleがこうした取り組みにどこまで本腰を入れるかは不明だが、同社がエンタープライズセキュリティを真剣に考えていることを示す動きであることは確かだ。「とはいえ、Appleは何をやるにしても“組織としての辛抱強さ”を発揮する。IT部門は大きな変化が起きるまでしばらく待たされることになりそうだ」とオー氏は話す。
「Appleは、成功に必要な条件が全てそろうまで、新しいものをリリースしない主義だ」(オー氏)
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