古くても捨てられないアプリをどうする?
化石級のレガシーアプリを無理なくモバイル化する「リファクタリング」のススメ
従来型のビジネスプロセスをモバイルアプリケーションに変換するのは容易ではないが、「リファクタリング」技術を利用すれば、モダンアプリケーションに作り直す作業が容易になる。
業務のモバイル対応を進める企業が増えているが、必要なアプリケーションの全てを刷新するのは不可能だと考えられているようだ。
多くの企業は、「Windows」アプリケーションや、デスクトップブラウザからアクセスすることを前提としたWebアプリケーションを多数抱えている。その多くは古いレガシーアプリケーションや自社でカスタマイズしたアプリケーションであり、ソースコードが既に存在しない場合もある。「iOS」と「Android」にネイティブ対応したアプリケーションをスクラッチから作成することによって、これらのアプリケーションのモバイル版を開発するには膨大な費用が掛かり、現実的でない。一方で、こういったアプリケーションは代替できる市販製品が存在しない場合も多い。
「リファクタリング」のススメ
こうした問題に対処するのが「アプリケーションリファクタリング」あるいは「アプリケーション変換」と呼ばれる手法だ。リファクタリングは既存のアプリケーションのユーザーインタフェース(UI)を維持しつつ、特殊なリモートプロトコルとソフトウェアを使って、これらのアプリケーションをモバイルデバイスに対応した現代型(モダン)アプリケーションに変換する。
リファクタリングを行うには、元のデスクトップアプリケーションが今でも動作していて、メンテナンスがされている必要があるが、この条件はリファクタリングのメリットでもある。リファクタリングされたアプリケーションは、元のデスクトップ版とバックエンドとの連係機能を利用できるのだ。リファクタリングされたのがWindowsアプリケーションであれば、物理デスクトップはもちろん、企業のデータセンターやデスクトップ仮想化を利用したクラウド上でも動作できる。Webアプリケーションであれば「ヘッドレスブラウザ」内で動作できる。ヘッドレスブラウザというのはグラフィカルユーザーインタフェース(GUI)を持たないブラウザのことで、コマンドラインからコントロールできるので、アプリケーションをテストするのに使われることが多い。
ステップ1:ソースアプリケーションの読み出し
ソースアプリケーションを読み出す手法はアプリケーションリファクタリング製品によって異なるが、基本的には、テキストフィールド、フォーム、メニューおよびその他のコントロールを含む全てのUI要素をソースアプリケーションから取り込み、そのコードをモバイルデバイス用のモダンアプリケーションに適したものに変換する。アプリケーションリファクタリング製品がこれを実行する方法は3つある。
- WebアプリケーションのHTMLコードとCSSコードからUI要素をブラウザ内で読み出す
- OSとWindowsアプリケーションとの間でやりとりされるUI命令を監視するエージェントを両者の間に挿入する
- リモートクライアント上でUIをレンダリングする命令が含まれるリモートディスプレイプロトコルを利用して、アプリケーションをHTML5に変換する(この手法はWindowsアプリケーションとWebアプリケーションの両方に有効)
開発者がどんなアプリケーションをリファクタリングできるかは、アプリケーションリファクタリングプラットフォームが用いる手法によって決まる。一般的に、メディアや画像を多用するアプリケーションよりもビジネスアプリケーションの方がリファクタリングに適している。
ステップ2:新しいクライアントアプリケーションの作成
アプリケーション変換ソフトウェアがソースアプリケーションからコントロールとUI要素を抽出したら、次の重要なステップはモバイルUIを定義することである。デスクトップアプリケーションの機能をタッチ操作に対応させるだけでは、満足できるモバイルアプリケーションはできない。どの機能をモバイルアプリケーションに組み込み、どれを外すかを決めることが重要だ。大規模なデスクトップアプリケーションを複数のタスク別モバイルアプリケーションに分割し、各アプリケーションが特定のワークフローに必要な基本機能を備えるようにすればうまくいく場合が多い。
アプリケーションリファクタリングプラットフォームには通常、ソースアプリケーションから機能を選択し、それらを新しいモバイルアプリケーションに組み込むためのデザインツールが含まれている。これらのデザインツールは、コード不要のドラッグ&ドロップ式インタフェースを採用しているものが多いので、開発経験のないITスタッフやエンドユーザーでもアプリケーションを作成できる。
リファクタリングによってHTML5アプリケーションを作成すれば、モバイルブラウザやハイブリッド型アプリケーションからアクセス可能だ。デバイス固有のUI要素を利用するアプリケーションを作成することもできる。これらのアプリケーションは通常のアプリケーションと同様、エンタープライズモビリティ管理(EMM)ソフトウェアを使って配布したり、セキュリティを確保したりできる。
リファクタリングによって新しい機能をエンタープライズアプリケーションに組み込むことも可能だ。複数のソースアプリケーションから機能を抽出し、これらを1つのモバイルアプリケーションに統合できる製品もある。これにより、アプリケーション間でのコピー&ペーストやアプリケーションの切り替えが不要になる。ダイヤラー、アドレス帳、カメラ、GPSなどのローカル端末フレームワークと連係させることによってアプリケーションの機能を充実させることもできる。
アプリケーションリファクタリングの将来
企業が所有しているレガシーアプリケーションの数を考えれば、アプリケーションリファクタリングは今後何年間も活躍するものと思われる。デスクトップ仮想化技術を使っている企業がアプリケーションリファクタリングの利用を検討するケースが多いかもしれないが、リファクタリングの用途はそれだけにとどまらない。既存のデスクトップアプリケーションを使っている企業であれば、モダンアプリケーションを導入する手段の1つとしてリファクタリングを検討すべきだ。
とはいえ、リファクタリングはエンタープライズアプリケーションをモバイル対応にするための手段の1つにすぎないことも事実だ。モバイルアプリケーション開発プラットフォームや、iOSやAndroidにネイティブに対応したカスタムアプリケーションを利用した方がいいケースもあるだろう。また、今後は市販のモバイル対応エンタープライズアプリケーションも次々と登場すると予想される。
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