高速インメモリBIツール「QlikView」をAWSで稼働
顧客単価の向上はこうすべし 「らでぃっしゅぼーや」のBI活用法(1/2 ページ)
安全・安心を旗印に掲げる宅配業者の「らでぃっしゅぼーや」は、利益を大きく左右するBIツールを2013年に刷新した。狙いは、より精緻な分析の実現。では、果たして何が変わったのか。
売り上げを左右する分析基盤の刷新の狙いとは
「持続可能な社会の実現」を理念に掲げる環境NPOによって設立され、現在はNTTドコモグループの一員として有機低農薬野菜や無添加食品などの宅配事業を手掛けるらでぃっしゅぼーや。食の安全、さらに環境保護への消費者意識の高まる中、同社は安心・安全を担保する独自の商品取り扱い基準や、積極的なリサイクル/リユース活動などにより消費者の信頼を獲得し、事業規模を堅調に拡大させてきた。宅配拠点となるセンターは全国に6つ、会員数は14万世帯に及ぶ。
そんな同社は、事業活動を通じて収集されるデータの分析基盤を整備し、以前からデータ分析によるLTV(顧客生涯価値:1人の顧客が取引期間を通じて企業にもたらす利益)の向上に早くから取り組んできた。その目的は、各種コストを支払い獲得した会員に、より多くの商品を、できるだけ長期にわたり購買してもらうことを通じた利益の底上げである。
この、売り上げに大きな影響を及ぼす分析環境を、同社は2013年4月に米QlikTechが開発し、国内ではアシストが取り扱う高速インメモリBIツール「QlikView」をオンプレミスで刷新。併せて半年後には、QlikViewのインフラを「Amazon Web Services」(AWS)へ移行することで、より安価かつ容易な運用体制も整えた。
関連記事
QlikViewに関する記事
BI/BIツールを知る
AWS事例
では、この取り組みの意図は果たして何か。データ活用の焦点を絞ったセミナー「QlikとAWSで実現するビジネスアナリティクス」に、らでぃっしゅぼーや 経営企画部で課長を務める西根 渡氏が登壇。システム刷新の舞台裏と刷新によってもたらされた効果を説明した。
14万世帯の購買動向をより深く知るために
らでぃっしゅぼーやが分析環境を見直した理由。その点について、西根氏は「社内システムとのデータ連係の困難さ」と説明する。
LTVを最大化するには、社内に蓄積された情報を一元化し、「商品」「時間」「地域」など多様な切り口から、売り上げ拡大の糸口をつかむための高度な分析が重要である。ただし、同社には「顧客属性」「商品マスター」「営業」「販促計画」など各種データは存在したものの、分析目的ではなく「集客」や「販売管理」などの各業務システムで管理されていた。分析に当たっては、各業務システムから抽出したデータをひも付けする必要があり、少なからぬ手間と時間がかかっていたという。
西根氏は、「14万世帯の会員を抱え、管理するデータは多岐にわたり膨大な量になる。しかも分析に当たっては、まず分析するためのデータを多大な労力を掛けて抽出するところから始める必要があり、そのことがリアルタイムでの高度な分析を妨げる最大の“壁”となっていた。データ作成に時間がかかればデータの鮮度が古くなり、精度の低下は免れない」と指摘する。
数あるBIツールの中からQlikViewを選択したのも、まさにこの課題解決に最も有効だと判断したためだ。具体的には、QlikTechが独自開発したQlikViewの核となる技術の1つである「連想技術」を高く評価したのである。
連想技術は次のように説明できるだろう。まず、「地域と車種」「車種と色」「地域と色」の関係性についてまとめた3つの表があると仮定する。これらの表には、「地域」「車種」「色」という3つのデータの切り口がある。連想技術は、この切り口を基にデータの関連性を認識し、表データを自動統合する技術。これにより、例えば「東京の自動車に多い色」といった込み入った分析が可能となるとともに、共通軸があれば必ず統合されるため、表の数が多くなるほど、一見すると無関係な軸同士の関係性も把握できる。
つまり、連想技術によって、手作業でのデータのひも付け作業が自動化され、その結果、よりリアルタイムに近いデータ分析が可能になることが、QlikViewを採用する決め手となったのだ。
なお、QlikViewは分析ツールやデータウェアハウス(DWH)、データマート(DM)、ETLツールなど、データ分析に必要なコンポーネントを全て含んだ製品である。インメモリでの処理によって、処理速度も極めて速い。QlikViewはデータ分析にある程度精通したユーザー向けの製品だが、BIや分析を意識した層に対しては、より直感的なインタフェースを用意した「Qlik Sense」も用意している。販売パートナーはアシストなどが手掛ける。
日次でのデータ分析処理の基盤にAWSを採用
QlikViewの導入を機に、らでぃっしゅぼーやではデータの一元化が実現し、今では営業や販促企画、マーケティングなど全社にまたがって活用が進み、現場主導でのデータ分析が行われているという。もっとも、利用が軌道に乗るまでには課題もあった。実は、現場からは導入当初、レスポンスの低さに対する指摘が相次いだのだ。
その原因は、ユーザーが全国5拠点と本社の複数部署と多岐にわたり、かつ、各分析に用いるデータ量も極めて大量であったことだった。そして、その解決策が冒頭に述べたAWSへの移行であった。
「週当たり数十万件というデータベース(DB)側の大量のトランザクションが処理のボトルネックとなっており、さらに複数のユーザーが同時にアクセスすることでレスポンスの低さを招いていた。この改善の切り札としてAWSの利用に乗り出した。結果的に、レスポンスが大幅に改善したことでユーザビリティが向上し、その使い勝手の高さをあらためて痛感させられた」(西根氏)
同社の現在のデータ分析を通じた代表的な取り組みが、「顧客のセグメント分け」と、「既存顧客のフォロー施策」である。
まず前者の顧客のセグメント分けは、「購買頻度」と「購買単価」により顧客をセグメント化することで、顧客の現状把握を目的とするものだ。同社にとって、最も望ましい顧客セグメントは頻繁に高額な注文を行う「高単価/アクティブ」。望ましくないセグメントは、長期間注文がなく、1回の注文額も低い「低単価/長期離脱」である。その他、「低単価/アクティブ」「短期離脱」「高単価/長期離脱」などのセグメントを設定し、同社では顧客からの注文額を基に、週次で顧客の動向を追っているという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
2
「Excel至上主義」の終わらせ方 丸2日の手作業地獄から情シスと現場を救うには
-
3
「Microsoft 365のセキュリティ運用」に関するアンケート
-
4
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
5
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
6
「Salesforceのテスト自動化ツール」に関するアンケート
-
7
IT製品の導入に関するアンケート「サーバ&ストレージ」編
-
8
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
9
「AI時代の統合基盤・エンタープライズAI管理」に関するアンケート
-
10
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー