佐野日大学園がIT活用で目指すもの【前編】
「iPadは簡単すぎる」 佐野日大学園がWindowsタブレットを選んだ予想外な理由(2/2 ページ)
Android端末の試験運用を経て、Windowsタブレットを選択
東日本大震災の翌年の2012年、佐野日大学園は131台のAndroid端末を導入してタブレット活用の試験運用を開始した。大手予備校の協力を得て、デジタルキャンパスから予備校の動画講座を配信するなどさまざまな試みを実施し、生徒からもタブレットを用いた学習に関して好評を得た。この試験運用で手応えを感じた佐野日大は、2014年度からタブレット1人1台環境の本格実施を決定する。ただし、機種選択に至っては試験運用で用いたAndroid端末ではなく、デルのWindowsタブレット「Dell Venue 8 Pro」を選定した。
試験運用していたAndroid端末ではなく、Windowsタブレットを選択したのはなぜか。安藤教諭は、「2012年ごろのAndroid端末は、教育現場への本格導入となるとセキュリティ面に不安要素があった。専門知識がない初心者レベルでも比較的root化(注)しやすかったことなどを考慮し、導入を見送った」と語る。
iPadは「操作性が良すぎた」
2012~2013年ごろといえば、先駆的にタブレットを導入した私立中高一貫校の間では、iPadを選択する動きが広がりつつあった。こうした中、なぜWindowsタブレットを選んだのか。「iPadは操作性が良すぎた」と、安藤教諭はその理由を語る。「生徒のITスキルを向上させるためには、比較的操作が簡単なiPadよりも、マルチタスクが可能で、拡張子の概念などコンピュータの知識や特徴を学びやすいWindowsタブレットの方が適していると考えた」(同教諭)
端末の選定当時、佐野日大学園の生徒の6割は、iPadと同じくiOSを搭載するスマートフォン「iPhone」を所有していたという。こうした状況も考慮して安藤教諭は、「学校で与える端末までiOS端末に統一するよりも、異なる端末を与える方が生徒の将来にとっても役立つと考えた」と語る。特定の製品に依存しない、同学園の姿勢が垣間見える。
「スマホに慣れている」から8インチでも問題なし
数あるWindowsタブレットの中からVenue 8 Proを選定した理由について安藤教諭は、「省電力でバッテリーが長持ちすること」「薄型ボディで生徒が持ち歩きしやすいこと」を挙げる。
タブレットの中では比較的小さい、8インチというVenue 8 Proの画面サイズについては、「生徒はスマートフォンの小さい画面に慣れており、8インチでも問題なく使いこなせている」と同教諭は語る。佐野日大学園ではタブレット導入以前から、コンピュータ教室のクライアントPCにもデル製品を採用しており、デルのサポート体制の良さも決め手になったという。
一方、教職員向けには10.8インチのWindowsタブレット「Dell Venue 11 Pro」を214台導入した。全教員のVenue 11 Proに、MetaMoJiの手書きノートアプリケーション「MetaMoJi Note(旧Note Anytime)」と、米TechSmithの画面キャプチャー/動画編集ソフト「Camtasia Studio」を導入。さらにはスタイラスペンも配布し、教師がVenue 11 Proの画面に書き込みながら画面をキャプチャーし、解説動画などのデジタル教材を作成できるようにした。
佐野日大学園が端末の配布だけに終わらず、教員がデジタル教材を自作できるようにソフトウェアやハードウェアを整備したのは、東日本大震災から得た教訓である「いつでもどこでも学習できる環境」に向けた取り組みだといえる。デジタル教材をインターネット経由で配布すれば、仮に学校に登校できなくても、生徒に学習の機会を提供し続けることができるからだ。
後編では、佐野日大学園のタブレット活用を支える無線LANを中心としたネットワークインフラと、同学園が構築したデジタルキャンパスの詳細を説明する。
執筆者紹介
神谷加代(かみや かよ)
フリーランスライター/ブロガー。結婚を機にサンフランシスコに移住し、日本語の絵本を扱ったECサイトを運営。その後、10年の在米生活を経て帰国し、主婦ブロガーとして「家庭×教育IT」に関する話題をメインにした「主婦もゆく iPad一人歩記」を執筆。家庭や教育におけるITの在り方を主婦目線で描き、教育関係者をはじめとする多くの読者から支持を得ている。現在は教育ITの分野を中心にライター業、子ども向けプログラミング教室の講師として活動中。著書に『iPad教育活用 7つの秘訣』。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
事例
[日本オラクル株式会社] ピンチをチャンスに変えたEPR製品は? 先行企業の導入事例3選 -
技術文書・技術解説
[日本オラクル株式会社] 無自覚なリスク 秘伝Excelファイルが監査の壁、不正・ミスの温床となる理由 -
製品資料
[日本オラクル株式会社] 戦略的経理の第一歩 失敗のない「脱Excel」を実現する秘訣とは? -
技術文書・技術解説
[日本オラクル株式会社] いまさら聞けないオンプレERPとクラウドERPの違い 最適な製品をどう見極める? -
事例
[株式会社ビザスク] 連結売上高が約2倍に成長、富士フイルムが実践した新規事業創出の戦略とは?
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
3
「ノートPC派」は損をしている? Dellと考える“自作PC”のメリット
-
4
「業務改善とツール活用」に関するアンケート
-
5
LINEヤフーはなぜ「社内の管理者」すら信用しないインフラを作ったのか
-
6
慶應義塾が「Notion」を選んだ理由 AI導入の盲点になる“情報のサイロ化”
-
7
1200万円のSaaS導入を回避 スギ薬局「運用費10万円」のAIエージェント構築術
-
8
「GitHub Copilot」3000人に配布も基本機能しか使われない 保険大手が得た教訓
-
9
「Copilot」はなぜ放置される? “議事録要約止まり”を脱する処方箋
-
10
IBM iのブラックボックス化を打破 資産継承と進化を実現する「IBM Bob」の実力
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
DX/AI投資の壁を突破、現代の最高財務責任者が直面する課題と克服のヒント
-
2
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
3
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
4
バックアップは“取っているから大丈夫”なのか? ランサムウェア時代の備え方
-
5
システムの保守がモダン化を阻む? 「変えない判断」から脱却する方法とは
-
6
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
7
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
8
5分で分かる Microsoft 365のデータ損失に備えるためのバックアップの仕組み
-
9
ネットワーク遅延の原因、「パケットロス」の基礎知識と効果的な解決策
-
10
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー