理想的なクラウド基盤を構築する方法【第6回】
運用がITの要になる日は近い? クラウド化で変わる情シスの運用業務(3/3 ページ)
3.ツール選定のポイント
運用の現場では、多数の管理ツールを利用している場合が多い。正しくは、ツールありきで運用している現場も多いだろう。まず、既存環境で利用している管理ツールが、利用したいパブリッククラウドに何処まで対応できるかを検討すべきである。ハイブリッドクラウドを検討する場合、既存ツールの流用が可能であれば大きな追加投資を避けられるはずだ。
監視ツール
運用業務の中核となるインフラ監視の場合、ツール視点で見ればオンプレミスでもパブリックでもネットワーク接続が取れればほとんどの監視が行えるはずだ。もちろん、パブリッククラウド側が用意する仕組み(AWSであれば「CloudWatch」など)との連係も比較的容易に行えるはずだ。
運用性や将来性を考慮すると、監視手法としては、エージェントレス監視が理想といえる。特に、サーバ監視の分野は長らくエージェント型が主流となっており、そのイメージが今でも残っているユーザー企業も多いかと思う。しかし、クラウド環境においてはエージェントレス型の監視が向いている。理由はエージェント型に比べ、監視対象の変更に対して容易に対応できるためだ。クラウド環境においては、監視する環境(構成)の変化が発生する可能性がある。ここに追従するには監視対象を簡単に変更できるエージェントレス型が向いているといえる。もちろん、運用自動化ツールの利用を工夫し、自動的に追従する仕組みを構築することも可能である。
ジョブ管理ツール
ジョブ管理ツールも運用ツールの中核をなすツールであるといえる。そもそもジョブ管理ツールを使うインフラは基幹システムが多いが、ここ2~3年ではパブリッククラウド環境にジョブ管理ツールを導入する例も多く聞かれるようになった。日立製作所の統合運用管理システム「JP1」などは、AWSに導入するジョブエージェントをオンプレミスから管理することもサポートしている。ジョブ管理ツールという視点では、ハイブリッドな管理を実現できるであろう。また、対応するパブリッククラウドも順次拡張されており、ビジネス要件に追従する製品選定が行いやすい。
構成管理ツール
構成管理は運用においては非常に難しい要素となる。結論を先に言えば、ハイブリッドクラウド環境においての構成管理は非常に難しいと言わざるを得ない。何を管理するかにもよるが、インフラ構成だけでなくその上で稼働するアプリケーションやその依存関係をリアルタイムに管理することによって、構成管理の効果が発揮される。今日の構成管理ツールは、リアルタイムでの構成変更の更新には完全に追従出来ない場合がある。また、管理できるアプリケーションにも制限がある場合が多い。ハイブリッドクラウドでは、インフラ構成管理の必要性は薄れるが、アプリケーションレイヤーの構成管理はオンプレミス同様に重要になるだろう。現時点において、構成管理の全てをツールに頼るのは難しい。
部分的ではあるが、パブリッククラウドにも対応する運用管理ツールも多くなってきており、既存資産の流用なども視野に入れて検討すべきである。また、運用プロセスを確立するという視点においては、「セルフサービスポータル」の導入はハイブリッドクラウド管理では無視できないだろう。異なる形態、異なるサービスレベルインフラを管理するためのオペレーションを一元化し、利用者(サービス部門)に対して見える形で提供するにはセルフサービスポータルは最適である。具体的には、管理者用ポータル、利用者向けセルフサービスポータル機能を提供し、そのバックグラウンドで運用自動化ツールを使い、各管理システムをコントロールする仕組みである。セルフサービスポータルにはワークフロー機能や課金機能が備わっている必要がある。HP Enterpriseの「Cloud Service Automation」などはこれに該当する製品である。
セルフサービスポータルから各管理システムとの連係には、運用自動化ツールを上手に利用するところがポイントである。この仕組みを有することで、将来的なスケール対応や新たなビジネスが起動する場合、もしくは新たなパブリッククラウドを採用する場合でも、利用者には大きなインパクトを与えることのないシステム基盤を提供できる。近い将来、マルチクラウド間でのマシン移行やシステム移行などが現実化してくると、セルフサービスポータルの存在は重要となる。
4.IT運用がビジネス貢献の表舞台へ
前回までの記事で細かく記載しているが、理想的なハイブリッドクラウド環境を構築するためには、幾つかのインフラ課題も存在する。運用・管理という分野に関しては、その性質からインフラの技術革新を超越することはないと思われる。ただ、将来を見越した運用環境準備は必須であるといえる。なぜなら、この先クラウドファーストの流れは徐々に加速をしていくだろう。長らく大きなスタイル変革が行われてこなかった運用現場に、どこかのタイミングでその在り方が問われることになるだろう。また、ツールという側面でも、運用自動化ツールやセルフサービスポータルなど、今すぐに効果を体感できる備えもある。良い意味で、IT運用がビジネス貢献の表舞台に足を一歩踏み入れる時が近づいているといえる。
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理想的なクラウド基盤を構築する方法
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