理想的なクラウド基盤を構築する方法【第6回】
運用がITの要になる日は近い? クラウド化で変わる情シスの運用業務(1/3 ページ)
クラウド化で一番変わるのは運用担当者の業務かもしれない。ユーザー企業にとって、クラウド環境の運用は悩みの種となる場合が多いのだ。クラウド化に伴う理想的な運用の在り方とは?
ハイブリッドクラウドを実現するための技術や製品や技術を解説する連載。今回はハイブリッドクラウド運用に対する備えおよび運用管理製品の選定方法を中心に解説する。
- 運用部門はサービス提供者になるべき
- 運用自動化は必要か?
- ツール選定のポイント
- IT運用がビジネス貢献の表舞台へ
1.情報システム部門はサービス提供者になるべき
ハイブリッドクラウドを検討する前に、準備しておくべき重要な事柄を1つ挙げるとすれば、運用の在り方であると言っても過言ではない。これはハイブリッドクラウドに限らずプライベートクラウドでも同様だが、運用部隊を抱えるユーザー企業にとっては、クラウド環境の運用は大きな悩みとなる場合が多々見受けられる。まずは、クラウド化に伴う理想的な運用の在り方について考えてみる。
情報システム部門の担当者であれば、IT運用が担う仕事の必要性、重要性は理解しているだろう。ただ、これがビジネス部門の人であればどうか。「IT運用≒IT機器などの維持管理」という認識はあったとしても、その業務内容まで理解している人は少ないだろう。ましてや、その業務の必要性や重要性までを理解している人となれば、非常に少なくなるのではないか。
その一方で、大手調査会社の報告によると、企業のIT投資で運用関連に当てられる費用はIT投資全体の6~7割といわれている。もちろん、企業によってその比率は異なるが、IT資産を維持管理していくにはコストが発生しており、そのコストは決して安くないことが分かる。読者が情報システム部門の担当者であれば当然の話かもしれないが、ビジネス部門の人にはこの現状を理解することは非常に難しい。特に、リーマンショック以降はITの運用コストがフォーカスされることが増え、「IT運用は膨大なコストを費やすが1円の利益も生まない」と言われる始末である。
そもそもITは、「人が行ってきた業務の効率化を担保に導入する」ことが大原則であり、ビジネス部門にしてみれば「人の業務を肩代りするために導入したITシステムの維持管理に膨大なコストや人が必要」という主張は受け入れ難い。少々極端な言い方をしたが、情報システム部門(特に運用担当)の人たちは、運用に対する厳しい見方があることをしっかりと認識する必要がある。
なぜこのような厳しい目を向けられるようになったのか。それはパブリッククラウドの登場が関係している。オンプレミスの場合は、ビジネス部門がITを必要とすれば情報システム部門と調整する以外の手法がなかった。ITインフラが導入されれば必然的に運用が発生し、情報システム部門の運用業務が増えるというのが今までのユーザー企業の代表的なパターンだった。
それがクラウド化に伴い変化している。クラウドサービスであれば、ビジネス部門が情報システム部門を介さずに調達することも可能である。しかも、迅速かつ安価だ。
情報システム部門は、パブリッククラウドの登場によって、既存のITシステム利用者(ビジネス部門)の意識に変化が生じていることを認識する必要がある。基本的にクラウドの利用者は、ITインフラをサービスとして利用している。サービス提供を受ける側からすれば、プライベートなのかパブリックなのかが重要ではなく、支払う金額に対し適切なサービスが受けられるか否かが重要である。ビジネス部門は、サービス利用者という立場を明確に認識するようになる。すなわち、支払った対価に見合ったサービス提供を受けているか、もっと安くて良いサービスはないかという、今までは漠然としか考えてこなかった核心的な部分に対し具体的に考えるようになった。ハイブリッドクラウド環境の運用およびツールを検討する際には、このようなビジネス部門の意識変化を理解することからスタートすべきである。
では、情報システム部門は、クラウド化の流れに対しどのような準備をすべきか。筆者は以下3点をポイントとして考えている。
- ビジネス単位で提供サービス、運用コストを明確化する
- IT運用の知見による目利き力を養う
- サービス提供者となる
それぞれ簡単に説明しよう。
1.ビジネス単位で提供サービス、運用コストを明確化する
新規ビジネス立ち上げに際して、ITシステムを導入する場合を例にしてみる。
ITシステムの導入に当たり、各種機器購入費用、保守費用、導入・設置費用、ベンダー委託費用、運用管理ツール費用など、さまざまな費用試算を行うが、運用費用を試算に入れているだろうか。「このITシステムの維持管理にはXXX業務が必要となり、そのコストは年間XXX万円となる」といった試算までしている企業は、私の知る限りではあまり多くない。しかし、この試算をしない企業は、果たしてどこから運用費用を捻出しているのだろうか。これを続けている限り、クラウドファーストに対応することは難しいだろう。
先述の通り、情報システム部門も、ビジネスごとに求められるサービスレベルを提示していくべきである。そうでないと、運用担当者の立ち位置はなくなっていくだろう。各ビジネスで求められる運用が、自社の情報システム部門で対応できない場合は、外部サービスを使うなどの対応が必要だ。情報システム部門は、各ビジネスに必要なコスト、運用内容を明示し、ビジネス部門との調整を行っていき、ITスキルや知見、過去の経験はこのような場で発揮すべきである。
2.情報システム部門による目利き力を養う
情報システム部門は、ビジネス部門が企画するビジネスに必要とされるサービスレベルを的確に把握し、提案を行っていこう。そのためには、市場動向を含めた目利き力は必須である。市場にはどのようなサービスがどの程度の価格で提供されているのか、どのような技術スキルが必要なのかを常に情報収集し、専門家の視点にてビジネス貢献を行うことが肝要だ。
3.サービス提供者となる
ある外資系ベンダーは、「情報システム部門はサービスブローカーであるべきだ」と説いていたが、筆者も全くもって同じであると考えている。先にも述べたが、クラウド化した時点で運用もサービスとなる。すなわち、情報システム部門(特に運用担当者)はサービス提供者としての振る舞いが必要である。1で記述した通り、自社で運用するより外部サービスを用いた方が適切である場合も出てくるだろう。それを適切に判断できるのは情報システム部門であり、その適切な判断は最大の価値となる。
次章では、運用には具体的にどのような技術があるかを解説する。
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理想的なクラウド基盤を構築する方法
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