PCからモバイルへのシフトも加速
医療IT最新調査で明らかになった「セキュリティ対策が全ての投資対象を突き放す」
医療現場のIT活用で注目のキーワードが「ポピュレーションヘルス」だ。現場の効率化を実現する新しいプラットフォームだが、購買担当者は限りある予算を別なものに振り向けようとしている。
現代の医療データネットワークは、憂慮すべき頻度でサイバー攻撃を受けている。米国ではHIPAA(米国医療保険の相互運用性と説明責任に関する法令)に基づく監査の時期が迫っていることから、多くの医療機関では2016年に医療のデータセキュリティとHIPAAコンプライアンスについて重点的に投資する計画だ。
このあおりを受けて、これまで多くの医療関係者が切望してきたポピュレーションヘルス(総合的な健康情報活用プラットフォーム)とデータ分析用のソフトウェアシステムなどの購入計画は、延期になる可能性が高い。この原因は、医療IT購買担当者がデータセキュリティとコンプライアンスを重視していることにある。
米TechTargetが2016年に実施した医療IT担当者向けの調査では購買動機に関してポピュレーションヘルスとデータ分析用ソフトウェアシステムが特に目立っていた(調査の発行元はSearchHealthITだ。College of Healthcare Information Management Executivesの協力を得て行っている)
IT担当者181人を対象に行ったこの調査では、相互運用性を非常に重視していることも明らかになった。ITの全ての段階にクラウドテクノロジーを取り入れようとするなど、これまでの調査では例を見ないほど積極的で、かつ、モバイル医療や遠隔医療に向けた動きがあることも判明している。
医療におけるデータセキュリティと相互運用性
この調査結果を確認した医療IT関係者によれば、こうした全ての傾向は相互依存的な医療ITエコシステムを反映したものだという。具体的には、相互運用性の飛躍的向上とモビリティの普及が医療サービスの進歩をもたらすと同時に、セキュリティの脆弱(ぜいじゃく)性の増加にもつながっている。
同調査では、回答者の57.7%が2016年の医療ITで投資の中心になるのは、コンプライアンスとセキュリティのアップグレードだと答えている。また、相互運用性と統合と回答した担当者も51.2%となっている。
ここでもセキュリティが他の全ての投資対象を大きく突き放し、セキュリティを最優先購買項目に挙げた回答者は53.3%に上る。コンプライアンスについては、調査対象者の73.5%が所属する組織で投資を増やす予定だと回答している。
ビジネスインテリジェンス(BI)と分析用システムの購入をまだ計画していると答えたのは回答者の37.9%だった。この調査では、クラウド、ストレージ、モバイル医療、データセンターに対しても同等の関心を寄せていることが明らかになっている。
最高情報責任者(CIO)はサイバーセキュリティを最優先
Baystate Healthで副社長とCIOを兼任するジョエル・ベンゴ氏は、この調査結果が医療ITの状況を反映していると語る。「医療ITの基盤となるテクノロジーはサイバーセキュリティと相互運用性で、それが欠けていると他のテクノロジーは効率的に機能しない」(ベンゴ氏)
さらに続けて「全ての人にとってサイバーセキュリティは一種の最優先事項になっている。CIOなら誰でも目を向けざるを得ない。これまでサイバーセキュリティはあまり注目されてこなかったが、こうした攻撃が発生するようになって状況は変わった。今は進行中の戦いに向けて準備を進めている」とベンゴ氏は主張する。
ベンゴ氏によれば、HIPAA監査対策と、医療のデータセキュリティ強化は切り離して考えることができないという。だが、今後数年で直面するもっと大きな問題は、急増する医療データの保護の問題と警告する。これは、医療情報の交換や患者向けポータルを通じて、ウェアラブル端末やモバイルデバイスで医療データが大幅に増加しているためだ。
「データベースを相互に接続するだけでも攻撃の対象になる。しかし、だからといって相互運用性の追求をやめるべきではない」(ベンゴ氏)
アナリストもセキュリティを最優先
市場調査会社のFrost & Sullivanでコネクテッドヘルス部門の主席アナリストを務めるナンシー・ファボッツィ氏は次のように語る。「この調査結果は、医療ITの進展を表し、この数年間におけるMeaning ful Use(医療ITの有効利用)とICD-10(国際疾病分類第10版)の連係が進んでいる」
CIOの望みは、ポピュレーションヘルスおよび分析用ツールとデータセンターを大量に用意することで、付加価値を重視した医療サービスへの急激な移行を乗り切ることだ。だが、「サイバーセキュリティによって他の全てがねじ伏せられている。Payer(医療保険支払者)もProvider(医療提供者)も全員がこれまでサイバーセキュリティに対して投資してこなかった。病院では特にそうだ」とファボッツィ氏は指摘する。
医療ITにおける最近のクラウド採用については、ゲノミクス、プレシジョンメディスン、テレメディスンによって、クラウドストレージの大幅な増加と災害復旧の必要性が後押している。また、データ量の増加に対応するため、さらに高速な演算リソースも必要だ。
医療ITが行うクラウドへの投資増加
調査の回答者の約83%は、所属する組織が2016年にクラウドへの投資を増やす意向があると答えている。クラウドの対象になる領域については、災害復旧が44.9%、mHealth(モバイルヘルス)が34.7%、データセンターが28.6%という結果になっている。
今回の調査に参加したリンダ・キャリー氏は、医療マーケティングコンサルタントだ。キャリー氏は次のように語る。「クラウドの経済的な必要性は無視できないほど大きくなっている。一部の主要な医療提供者が、データに対する直接的な管理を手放すことに難色を示し続けている状況に変わりはない。しかし、誰もがクラウドに移行している。クラウドに移行する代わりに必要なものが使えるようになるためだ。借りるか、所有するかの二者択一だ」(キャリー氏)
この調査では、主要なEHRシステムと医療画像システムへの投資に対する関心が引き続き高いことにもキャリー氏は言及している。「画像診断は金もうけにつながるからだろう」(キャリー氏)
この調査では注目に値する結果がもう1つある。それは、医療IT役員が従来タイプのパーソナルコンピューティング端末から離れていることだ。87%の回答者がモバイルテクノロジーへの投資を増やす予定だと答えているにもかかわらず、ノートPCを購入する予定だと答えた回答者はわずか23.9%だった。回答者の半数近くに当たる47.8%がスマートフォンを購入すると答え、28.3%はタブレットを選択している。
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