Googleは一歩及ばず?
パブリッククラウド市場の勢力図はSAPで変わる、「SAP HANA」に対応するAWSとAzureの狙いとは(2/2 ページ)
SAPが見つけたSAP HANA用クラウドの新たなよりどころ
SAPは独自のホスト型クラウドを「SAP HANA Cloud Platform」として提供している。だが、同社はInfrastructure as a Service(IaaS)事業には携わっていない。AzureとAWSでSAP HANAがサポートされたことで、SAPはアプリケーションに集中できる。それと同時に、新しい領域や市場に手を広げることも可能になる。そう話すのは、Gartnerでアプリケーションアーキテクチャおよびインフラ戦略部門で統括責任者と主任研究員を兼任しているマッシモ・ペジーニ氏だ。
パブリッククラウドプロバイダーからすればSAPは大規模な市場になる。Gartnerの試算によれば、3万5000社もの中堅企業や大企業が中核的なERPプロセスにSAPの製品を使用している。
「各社はできるだけ多くのワークロードを実行するために何十億ドルという金額を投資している。AWS、Microsoft、サードパーティーなど、ワークロードの実行先がどこでも同じことだ。これはまさに可能な限り多くのインフラを使用するというIaaSモデルの論理そのものだ」とペジーニ氏は指摘する。
また、ビジネスクリティカルなアプリケーションをパブリッククラウドに移行することが受け入れられつつあることも示されている。それも、アプリケーションの一部の要素だけではなく、スイート全体としての移行が許容されるようになっている。
「2、3年前に各社の最高情報責任者(CIO)と話をしたときには次のように言われたものだ。『電子商取引、電子メール、CRMなどについてはクラウドに移行しても問題ないが、私の目が黒いうちは中核技術をクラウドに移行することは絶対に許さない』。だが、この姿勢は変わりつつある」(ペジーニ氏)
今回の新しいサービスのユーザー層となるのは、ほぼ例外なく既存のSAPユーザーだ。だが、これは何十年にもわたって存在してきたようなホストオプションに対抗する、すぐに使えるサービスではない。そう話すのは、IDCグループでアプリケーションとクラウド部門の統括責任者を務めるロバート・マホーワルド氏だ。クラウドに移行することでハイパーバイザー以下の管理はある程度必要なくなるかもしれない。だが、こうしたアプリケーションにパッチを適用して更新するための監視はまだ欠かせない。また、顧客が従来のシステムを使用している場合、全てのシステムを移行するには半年から1年掛かる可能がある。
「顧客の多くはAzureまたはAWSを既に採用しているだろう。だが、この2つのプラットフォームには十分な能力があり、コスト効率に優れているとSAPが太鼓判を押すことは、顧客がSAP HANAアプリケーションをクラウドに移行する際の保証として必要なものになる」。マホーワルド氏はそう指摘する。
「今回の認定は大手企業の多くにとっては正当化プロセスの一部だ」と言い、同氏は次のように問いかける。「今回の認定で、中核技術をクラウドに配置して実行する重要かつ本質的な価値は提供されるのだろうか。それとも、リソースが浪費されるだけなのだろうか」
AzureとAWS以外のクラウドプロバイダーでもSAP HANAのサポートは取り入れられている。IBMは2015年11月に米国で「SoftLayer」にSAP HANAのサポートを追加している。Googleは第3の主要なハイパースケールパブリッククラウドプロバイダーと言及されることが多い。2016年5月中旬に開催されたSAPユーザーカンファレンスに合わせてSAPのサポートに関する発表があったが、その中でGoogleの名前は出てこなかった。また、Googleが近いうちにサポートの追加を計画している気配もない。
Googleが独立系ソフトウェアベンダー(ISV)およびパートナー向けに独自のエコシステムを構築する作業は難航している。今回のことはGoogleの苦難が続く兆しを示している。SAPをサポートすることが重要なのは、顧客がこうしたサービスをクラウドで利用したがっているからだけではない。関連するワークロードがある程度引き寄せられることもその理由だ。
「この大規模なクラウド戦争に勝つには、さまざまなアプリケーションをそろえなければならない。それから、知名度の高い顧客と大手ISVパートナーを獲得する必要もある。Googleはアプリケーションをそろえているが、やや足りないのが実情だ」とマホーワルド氏は語る。
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