テクノロジーの進化で使い勝手が向上
いち早くモバイルに到来した「パスワードのない世界」、生体認証普及の道筋は
近いうちに虹彩スキャンなどの生体認証方法が企業のモバイルセキュリティで採用され、古き良きユーザー名とパスワードによる認証が葬り去られるのは時間の問題だろう。これは驚くべき事実である。
顔スキャンや虹彩スキャンは、SF世界のテクノロジーであるように思えるかもしれないが、これらのテクノロジーは数十年存在している。今のところ、これらの生体認証方法が企業をあっといわせたことはない。しかし、モバイル生体認証がスマートフォンやタブレットに導入されることで状況は一変するだろう。
Hoyos Labsは生体認証をビジネスの世界に先導するべく尽力している企業の1社だ。2013年に設立した同社は、「Biometric Open Protocol Standard(BOPS)」を策定し、詐欺やなりすまし犯罪からユーザーを保護するためのID管理テクノロジーを提供している。BOPSには、サーバ側アプリケーションの開発ガイドラインが含まれている。具体的には、ユーザーの生体データをより安全に保存する方法だ。
本稿では、生体認証が将来のモバイルセキュリティで果たす役割と、生体認証が従来のユーザー名とパスワードによる認証にどのような意味をもたらすのかについて、Hoyos Labsで最高情報責任者(CIO)を務めるジェイソン・ブレイバマン氏の見解を紹介する。
――モバイル生体認証はセキュリティの確保にどう役立つと思いますか。
ブレイバマン氏 パスワードのリセットや銀行口座へのアクセスには電子メールが使用されている。だが、ハッカーは私たちのお金を盗むことができる。しかも、このようなことは日常的に行われている。つまり、もうパスワードには頼れないということだ。
現在、ほとんどネットワークの中心にサーバがある。全てのデータはデータセンターに保管され、あらゆるものがデータセンターにアクセスする仕組みになっている。毎月のように新しいサイバー攻撃を目の当たりにしている。例えば、Targetのハッキング事件だ。全ての情報が1つの場所に保管されていたがために、何百件ものユーザー名とパスワードが犯罪者の手に渡ることになった。BOPSでは、データを複数の場所に分配する。ユーザーの顔のデジタルデータは2~3つの場所に保存される。例えば、半分はスマートフォンの上、残りの半分はサーバアレイに保存されるという具合だ。
――生体認証の方法によって、従業員はセキュリティという名の下に自治権の一部を失うことになるのでしょうか。
ブレイバマン氏 最終的には、ユーザーのプライバシーに関わってくる。実際には、生体認証によって、ユーザーのプライバシーは強化される。そして、これは数年のうちに現実のものとなるだろう。生体認証によって、ユーザーは自分のデータを所有できるようになる。
今日プライバシーはほぼ存在しないに等しい。企業と政府は、私たちが購入しているものを1つ残らず追跡している。
ユーザーが自分のデータについて権利を持てるようにすることがBOPSプロトコルの最終的な目標の1つだ。つまり、ユーザーが作成したデータはユーザーのIDにタグ付けられ、クラウドサーバ側に保存されるようになる。それから、そのデータを閲覧できる人を選択できる。これが生体認証とID管理がユーザーのプライバシーと利便性に変更をもたらす未来だ。
――生体認証はどこに向かっているのでしょうか。
ブレイバマン氏 最近まで、生体認証はユーザーの操作性を向上するものではなかった。失敗率や使いづらさが、ユーザーによる早期導入を妨げていた。Samsung ElectronicsやAppleなどの企業にとって、ユーザーの受容率は非常に高くなければならない。また、生態認証は99%の精度で機能しなければならない。
2016年8月19日に発売されたばかりのSamsungの「Galaxy Note 7」のカメラには虹彩認証センサーが搭載されている。初めてSamsungのデバイスを使用したとき、顔認識センサーが機能するまで数秒の時間を要した。2秒以上かかるプロセスはユーザーに受け入れられないだろう。生体認証では、そこが課題となっていた。
虹彩スキャンは、ほぼ瞬時に行われる。画面上部にある小さな鏡に目を合わせると、両目の写真が撮影される。必要な操作は、これだけだ。このテクノロジー対応のカメラのセンサーとLEDエミッターは数年前に誕生したばかりである。だが、現在はスマートフォンに搭載できるほど小型化がなされており、ようやく日の目を見ることになった。
――Hoyos Labsではモバイル生体認証をどのように企業に導入しようとしていますか。
ブレイバマン氏 当社では認証とID管理の主要な基盤を構築している。ユーザーの登録方法を決めるのは企業だが、ユーザー登録にはさまざまな方法がある。銀行やヘルスケアなど高い安全性が求められるものについては、虹彩スキャンや顔面スキャンを行っているところを実際に確認できる場所に行くことをお勧めする。また、企業は登録ユーザーの身元を保証できるようになることを望んでいる。
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