学生支援の細かさには「顧客志向」が必要
デジタルハリウッド大学が「学校向けポータル」ではなく「Salesforce」を選んだ理由(2/3 ページ)
システム刷新のいきさつ:「インフラ」と「学生支援」の課題解消がきっかけに
デジタルハリウッド大学が学生ポータルの見直しを進めるきっかけとなったのが、インフラと学生支援の課題だ。
従来の学生ポータルは基幹システムと同様に、パッケージシステムを使ってオンプレミスで構築・運用してきた。だが課題も見えてきた。「履修登録時にトラフィックがピークを迎え、対処しきれなくなるのではという懸念」(金野氏)が、その1つだ。オンプレミスのシステムでは、安定稼働を実現するためには自前でサーバを増強したり、冗長構成を取ったりする必要がある。ただし、ピーク時のためだけにこうした投資をするのは効率的とはいえない。
多様な目的を持つ学生に的確なフォローをしたいというニーズの高まりも、学生ポータルの再構築を後押しした。デジタルハリウッド大学の学生は、デジタルコンテンツに関する専門知識や表現技法、ビジネス理論などを学ぶ。デジタルコンテンツと一言で言っても、Webサイトのデザインからアニメーション制作、ゲーム開発などさまざまだ。必然的に学生の目標も、目標実現までの道筋も多様になる。こうした中、「学生の個性や嗜好に合わせた最適なサポートをしていく仕組みが必要だった」と金野氏は話す。
進路相談などの学生対応履歴はこれまで、各教職員がローカルのファイルにまとめて保管し、都度共有する仕組みを取っており、学生に関する情報を一元管理する仕組みがなかった。そこで学生一人一人の情報を“学生カルテ”のようにして整理し、教職員が学生のサポートに生かしやすい仕組みを整備したいというニーズが高まっていたのだ。
こうした課題を解決すべく、デジタルハリウッド大学は学生ポータルの見直しに着手。2014年頃に具体的なシステム刷新の検討を開始した。
選定の決め手:「学生管理」より「顧客志向」を重視
学生ポータルのシステム選定を進めたデジタルハリウッド大学は、教育機関向けパッケージ製品については早々に選択肢から外した。「学生一人一人の状況を一元管理する考え方自体が、最近出てきたこと」(金野氏)という事情もあり、現状のパッケージ製品では同大学が考える学生カルテの具現化は難しいと判断したからだ。
教育機関向けパッケージ製品は「『教育機関が学生を管理する』という視点で開発されていることも、採用の見送りにつながった」と金野氏は説明する。「学生を『顧客』だと考え、学生の満足度を高めるためにできることを検討するという、当大学の方針とは合わないのではないかと考えた」(同氏)
基幹システムとして利用してきたシステムディの「キャンパスプラン」をはじめ、学務システムのパッケージ製品をカスタマイズすることも検討した。だが標準機能でカバーできない要素が多ければ多いほど、当然ながらカスタマイズに掛かるコストも増大することになり、これがネックとなった。
こうした中、デジタルハリウッド大学の方針である「顧客志向」の発想を持つシステムとしては、教育機関向けではなく企業向けシステムの方がより合致するのではないかという考えに至り、2014年秋ごろに具体的な製品/サービス選定を進めた。金野氏は比較検討の結果、「コスト面を含めて柔軟性がある」(同氏)と判断し、Salesforceサービス群を選定した。「標準機能が充実しており、かつカスタマイズが容易で、導入後の改修もスピーディにできるのが決め手だった」と同氏は話す。
今回採用したSalesforceサービス群は、「Force.com」を中心としたPlatform as a Service(PaaS)群の「App Cloud」、社内情報共有サービスの「Community Cloud」。システム開発はアジャイル開発の体制を評価し、システムインテグレーター(SI)のランドコンピュータに依頼した。本格稼働後の機能追加や改修などを迅速に実現できることを重視した形だ。まずは2015年4月にデジタルハリウッド大学に導入。翌年の2016年4月には同大学院に導入範囲を拡大した。
デジタルハリウッド大学がSalesforceサービス群を選んだ背景には、運営元のデジタルハリウッドでの導入実績がある。デジタル領域のクリエイター養成スクール運営などを手掛けるデジタルハリウッドは2010年、顧客関係管理(CRM)システムとして「Salesforce CRM」(現「Sales Cloud」)を導入。スクールへの入学を検討する社会人、既にスクールを受講している受講生などの見込客/顧客情報を一元管理する仕組みとして利用してきた。こうした実績が、Salesforceサービス群の採用を後押しした形だ。
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