学生支援の細かさには「顧客志向」が必要
デジタルハリウッド大学が「学校向けポータル」ではなく「Salesforce」を選んだ理由(3/3 ページ)
システム導入効果:中退数は減少傾向に
学生ポータルの刷新で、学生情報の一元管理やシステム運用負荷の軽減など、当初想定していた効果はおおむね実現できている。興味深いのが、学生の講義出席率の向上が見られたことだ。2015年入学の新入生のうち、大学側が設定した出席ボーダーラインに満たない学生は対前期比で3割ほど減少したという。中途退学する学生数も、2015年度は学生ポータル構築前の2014年度と比べ減少傾向にあった。金野氏は「学生ポータルを基にしたカリキュラムや講義内容の改善が功を奏したのではないか」と分析する。
デジタルハリウッド大学は、この効果を特に重要視する。その背景にあるのが、大学に期待される役割の変化だ。最近では「学生を無事に卒業させることが、大学の社会的責任の1つになりつつある」と金野氏は語る。もちろん、卒業要件に達しない学生を不正に卒業させる、という意味ではない。学力面や心理面、金銭面といったさまざまな理由で、中退の道を選ぶ学生を可能な限り減らし、卒業までサポートするということだ。
高等教育を中退した人のその後の進路を見ると、「初職が正社員の割合は、中退者のうちの7%にすぎない」というデータもある。つまり「大学を卒業できなかった」ことが、その後の人生のハンディキャップとなる可能性がある。学生を中退ではなく卒業に導けるかどうかは、学生の人生の選択肢を左右することなのだ。
金野氏によると、中退率の低減のためには「特に入学直後の1年生の前後期におけるきめ細かな対応が欠かせない」という。そのためにも「学生や学校側の対応状況をリアルタイムに把握し、対応の速度や質を高めていく必要がある」と同氏は語る。そのため学生ポータルには、講義への出席率が下がったという情報をキーにして学生の状況を把握する機能や、ワークフロー機能と組み合わせてスタッフ側の対応フローを設計/可視化できる機能などを設けた。こうした工夫が、講義出席率の向上という具体的な効果に結び付いた。
今後はSalesforceサービス群のレポート機能やダッシュボード機能などを用いて、学習効果の高い学生の学習パターンを分析、抽出し、学生指導に活用することも検討しているという。
サービスの課題と改善要望:UIに戸惑いも 豊富な機能を生かすヒントを
Salesforceサービス群の課題は、「慣れれば問題ないものの、Salesforce特有のユーザーインタフェース(UI)や用語、言い回しに慣れる必要がある」(金野氏)ことだという。海外ベンダーのサービスということもあり「ヘルプサイトを見ても理解しにくいことがある」(同氏)という。2015年10月に大学院への学生ポータル導入を担当した阿部氏も、「当初はUIや用語に戸惑った」と明かす。
「サービスの種類や機能が多過ぎて、使いこなせない面がある」(金野氏)こともSalesforceサービス群の課題として挙げる。FAQ(よくある質問)の拡充や他社でのシステム活用事例の共有など、活用を後押しする工夫を求める。
システム活用に込めた思い:「学生視点」でのIT活用を
今後の機能拡張としては、入学前の学生に関する情報の活用だ。出身の高等学校の出席率や評定などのデータに加え、入学試験の面接から得られた定性データなどを活用しながら、どのような学生が入学すると学習効果が高くなるのかといった分析への活用を見込む。
デジタルハリウッド大学のシステム活用の方針は「学生視点」がポイントだ。「大学、大学院とも、学生一人一人と向き合うコミュニケーションツールとしてITを活用している。学習指導だけでなく、在学中の学生を中心に考え、ITを使って利便性を提供していきたい」と金野氏は語る。
Salesforceサービス郡を活用し、「学生視点」で学内におけるさまざまな業務プロセスを自動化し、関連情報を一元管理することで、学生や教職員のさらなる利便性提供や満足度向上に寄与していくことができるはずだ。
執筆者紹介
阿部欽一(あべ・きんいち)
「キットフック」の屋号で活動するフリーランスのライター/ディレクター。社内報編集、編集プロダクション等を経て2008年より現職。「難しいことをカンタンに」伝えることを信条に、「セキュリティ」「マーケティング」など、企業のIT活用をテーマにした解説記事やインタビュー記事の執筆の他、動画やマンガやアニメーションを用いた学習コンテンツなどを多数プロデュースしている。
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