半導体の需要拡大を見込んだ業界再編
IoT時代到来で半導体業界はどう変わる? 5件の大型買収を振り返る
モノのインターネット(IoT)用のデバイスには、新しいタイプの半導体チップが必要になると予想されることから、半導体業界には企業買収の波が押し寄せている。半導体業界の動向を振り返る。
IT系Webサイト『AnandTech』はQualcommのNXP Semiconductors買収について次のように報じている。
「合併後の会社は、汎用(はんよう)半導体を提供する世界最大規模のサプライヤーの1つとなる。売上高はSamsung ElectronicsやIntelと肩を並べることになるだろう」。
QualcommによるNXP Semiconductorsの買収の他にも、半導体業界ではモノのインターネット(IoT)時代に備えた大型買収が相次いでいる。この2年間に発表された大型買収のうち、主な5つの案件は以下の通りだ。
- NXP SemiconductorsがFreescale Semiconductorを118億ドルで買収(2015年3月発表)
- Avago TechnologiesがBroadcomを370億ドルで買収(2015年5月発表)
- IntelがAlteraを170億ドルで買収(2015年6月発表)
- ソフトバンクがARM Holdingsを310億ドルで買収(2016年7月発表)
- QualcommがNXP Semiconductorsを470億ドルで買収(2016年10月発表)
調査会社451 Researchによれば、2015年から現在までに半導体業界で発表された150億ドル以上の買収案件は以上の5件だという。もっと小規模な案件を含めると、半導体業界全体での企業買収の総額は過去最高を更新している。
「半導体業界における2015年の企業買収総額は900億ドル近くと、それまで4年間分を合わせた額を上回った。さらに現在、驚くべきことに、2016年に入ってからの買収総額は2カ月を残して既に1000億ドルに達している」(451 Research)
IoTがもたらすビジネス価値
こうした買収のいずれにもIoTが影響を与えている。各社が語った買収理由を資料とともに紹介する。
NXP Semiconductorsによる118億ドルでのFreescale Semiconductor買収(2015年3月発表)
NXP Semiconductorsは2015年、「Secure Connections for A Smarter World(よりスマートな世界を実現するセキュアコネクション)」の提供を目標に掲げ、Freescale Semiconductorの買収を発表し、業界再編の口火を切った。NXP Semiconductorsが投資家向け説明会で指摘したように、この買収にはIoTが大きく影響している。IoTを広義に捉え、コネクテッドカー、ポータブルおよびウェアラブルデバイス、セキュリティを含めれば、まさにIoTのための買収だったといえるだろう。
Avago Technologiesによる370億ドルでのBroadcom買収(2015年5月発表)
Avago TechnologiesによるBroadcomの買収は、本稿で取り上げる5案件の中で2番目に大規模な買収だが、IoTへの直接の言及が最も少なかった案件でもある。メディアは当初、無線LAN市場でのBroadcomの確固たる地位に注目した。だがAvago Technologiesは買収に関する説明資料において、長期的な成長傾向の1つとして「コネクテッドホームとIoT」を挙げている。
それ以降は、投資家市場もIoTとの高い関連性に注目するようになった。信用格付け機関Fitch Ratingsは最近、次のようにコメントしている。
「Avago Technologiesによる2016年2月2日の370億ドルでのBroadcom買収の狙いは、Broadcomの先進的なWi-Fi技術をIoTに活用することにある」(Fitch Ratings)
Intelによる170億ドルでのAltera買収(2015年6月発表)
Intelは、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)大手のAlteraを買収すると発表した際、産業オートメーション制御と先進運転支援システム(ADAS)という2つの分野を例に挙げ、FPGAがいかにIoTのニーズに合致するかを説明した。Intelは、プロセッサ、メモリコントローラー、セキュリティ、I/Oを統合した「Intel Architecture」(IA)にAlteraの技術を組み合わせた統合ソリューションをとして提供する計画だという。
IntelはAltera買収に関するニュースリリースにおいてIoT分野との融和性の高さに言及している。
「両社の技術を組み合わせることで、データセンターとIoT市場の顧客ニーズに応える新たなクラスの製品を提供できる」(Intelの投資家向けニュースリリースPDF)
ソフトバンクによる310億ドルでのARM Holdings買収(2016年7月発表)
ソフトバンクグループは2016年7月にARM Holdingsの買収を発表した際、直接の要因としてIoTを挙げた。ソフトバンクグループ 代表取締役社長の孫 正義氏は当時、次のようにコメントしている。
「当社はこれまで、ARMを世界的に名高いテクノロジー企業であり、この分野における圧倒的マーケットリーダーとして高く評価してきた。今回の投資の目的はIoTがもたらす非常に重要なチャンスをつかむことにあり、ARMは当社グループの戦略において重要な役割を果たしていくだろう」
ソフトバンクは投資家向けのプレゼンテーション資料でも、ARM HoldingsがモバイルからIoTという次なるパラダイムシフトをけん引し、IoT時代の主要な推進力になるとの見方を示している。
Qualcommによる470億ドルでのNXP Semiconductors買収(2016年10月発表)
QualcommによるNXP Semiconductorsの買収は一番最近の大型買収だ。IoTをめぐる買収のトレンドはこれでピークに達した。Fitch Ratingsは次のように指摘する。
「近年、従来のPCやスマートフォン向けの半導体市場が成熟期に入る中で、自動車やIoTといった成長市場の有力企業を買収するチップ企業が増えているが、QualcommによるNXP Semiconductorsの買収はその最新の事例だ。今後は自動車用半導体の需要増、IoT市場におけるインターネット接続端末の急増、クレジットカード向けセキュリティ技術の採用拡大などが予想される。そうした中、Qualcommが参入可能な市場の規模はこの買収によって40%拡大することが予想される」(Fitch Ratings)
Qualcommは投資家向け資料で成長計画を具体的に紹介し、「自動車やIoTなど」の売上高がNXP Semiconductors買収以前の19億ドルから、買収後は102億ドルに増加するとの見通しを示している。
今後の展望
IT業界はIoTとその可能性に大いに期待を寄せ、半導体業界はそうした可能性の実現に必要となるチップの提供で競い合っている。市場がこの動きを支持しているのは確かだ。
IoTプラットフォームやコネクテッドカーも注目の分野だ。だがどちらの分野でもまだ企業買収の動きは進んでいない。恐らくこの先も半導体業界では企業買収の動きが続くだろう。あるいは2017年には、IoTをめぐり他の業界で企業買収の動きが活発化することになるのかもしれない。
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