コンシューマーの「オムニチャネル」化が進行
オンライン売上高が感謝祭商戦で過去最高に、それでも「実店舗」がなくならない理由(2/3 ページ)
CIOの役割
クリスマスギフトの話に戻るが、アルバレス氏をはじめとするアナリストによれば、2016年のオンライン販売の傾向は、販売戦略を決定してコンシューマー行動を方向付ける上で、IT部門が果たすべき役割を浮き彫りにしているという。2005年ごろからサイバーマンデーという言葉が使われるようになって10年がたった。もはやこの日は、特別な1日ではなくなっている。
実際、サイバーマンデーは「よくある販売促進日の1つにすぎない」とアルバレス氏は語る。現に2016年は、ブラックフライデー(感謝祭翌日の金曜日)のオンライン売上高がサイバーマンデーの売上高に、わずかな差まで迫った。小売り業者は「感謝祭セール」と銘打ち、感謝祭翌日から週明けのサイバーマンデーまで大型セールを実施し、それが今も続いている。
「需要を分散させる狙いがあるのだろう。ブラックフライデーやサイバーマンデーにシステムがまひしないようにするためだ」とアルバレス氏は指摘する。ピーク時のオンライン処理をサポートするには膨大なITリソースが必要であり、コストもかさむ。「年に一度のことのために、残りの期間ただ待機させておくわけにはいかない」と同氏は語る。ITシステムに対する需要や発生するコストを複数の日に分散させれば、ITリソースやコンシューマーの負担を軽減できる。
CIOの観点からすると、こうした販売戦略の転換は、ビジネスの結果を出すためにIT部門が担うべき役割を一層明確にする。アルバレス氏によれば、「こうした傾向は、CIOが今後もビジネス部門の責任者とより緊密な関係を構築していく必要性を示唆している」という。何かしらの技術を活用した戦略を立案する際、ビジネス部門の責任者は、その技術の限界や代償も認識している必要があるからだ。
需要を分散させ、利益率を高め、ITリソースを節約する方法を見極めることは、ブラックフライデーやサイバーマンデー以外のビジネス場面にも有効だ。「ITに費やしたコスト分のビジネス価値が得られるかどうか。今後IT部門やCIOは、こうしたビジネスの視点を持つ必要がある」と同氏は語る。
方法論は未確立
オンライン販売の拡大に備え、オムニショッパーに関する評価指標を設定するのは簡単ではない。1つには、そのための方法論がまだ固まっていないからだ。例えばコンシューマーが「3秒なら待つ」のであれば、レスポンスタイム短縮のために膨大な数のサーバを購入する必要があるだろうか、といったことだ。
オンラインショッピングには依然として地域差があるということも、評価指標を設定しづらい理由の1つだ。「結局、全ての小売り業者に共通する成功の形はないということだ」。英国と西ヨーロッパでオンライン売上高を計測しているForrester Researchのアナリスト、マイケル・オグレディ氏はそう語る。
例えばオンラインで食料品を販売したいと考える小売り業者は多い。だがオグレディ氏によれば、オンラインで食料品を購入したいというニーズは国によって異なり、欧州内でさえ異なる。人口密度が高い英国では、食料品のオンラインショッピングが定着している。国土が狭いので配送料がそれほど高くならず、クリック&コレクトのオプションも豊富だ。
英国よりも国土が広いフランスでは、小売り業者も客も配送料を嫌がる。食料品のような重い荷物であれば、なおさらだ。だがクリック&コレクトのオプションが登場したことで、最近は食料品のオンライン販売が広まりつつある。一方でディスカウント食料品店が多数あるドイツでは、食料品のオンライン販売はごくわずかしかない。オンラインストアがいくら便利でも、実店舗で購入する安さには勝てないからだ。
「結局、『末端のコンシューマーに何をもたらせるか』ということ。ビジネスの事例は無数に浮かぶかもしれないが、最終的に重要なのは、コンシューマーに価値を認めてもらえるかどうかだ」とオグレディ氏は語る。提供できる価値が大きければ大きいほど、コンシューマーがオンラインに移行する可能性は高まる。「逆に、提供できる価値が小さければ、コンシューマーの行動は変わらないだろう」(同氏)
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