予測分析で「ベテランの勘」を強化
“クルマ離れ”時代に新車販売数を伸ばした、中堅企業のビッグデータプロジェクト(1/2 ページ)
新車販売の予測分析サービスを立ち上げた日産東京販売ホールディングス。しかしスタート時、現場はベテランの勘を重視し、懐疑的だった。同社はどのように壁を乗り越え、成果を積み重ねることができたのだろうか。
日産東京販売ホールディングスは、東京日産自動車販売、日産プリンス東京販売、日産プリンス西東京販売という中堅規模の日産自動車ディーラー3社を中心に、東京都を地盤とした自動車販売事業グループを統括している持株会社だ。
人口減少と“若者のクルマ離れ”が叫ばれて久しい昨今では、自動車販売ビジネスは厳しい状況が続いている。そこで日産東京販売ホールディングスは、同社傘下の情報システム会社である東京日産コンピュータシステム(以下、TCS)と共同で、ビッグデータを活用した予測分析システムを構築した。その成果として、グループ全体の営業活動効率化を図ることができ、実際に売り上げも上がったという。
だがトライアルの過程では、ディーラーの店長や営業スタッフの勘や経験をベースにした従来の手法をどう変化させ、どのように予測分析システムを利用させるかが大きな壁となった。特にトライアルの初期は、ベテランの営業スタッフが予測分析のデータに懐疑的で、自分の経験や勘ではなく、データによって行動を変化させることに抵抗を示したそうだ。
ベテランの経験を重視するあまり業務が属人化する問題は、中堅・中小企業で少なからず発生しやすい。TCSは、この問題をどのように解決し、信頼を獲得してシステムを浸透させたのだろうか。予測分析システムの立ち上げからプロジェクトを担当する、TCS マネージドサービス事業部の岡田 健太郎氏に詳しい話を聞いた。
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個人が管理していた顧客売り上げ情報を全員で棚卸し
2012年ごろ、日産東京販売ホールディングス傘下のカーディーラー(以下、グループ販社)の営業担当者の多くは、それぞれ「Microsoft Excel」などの表計算ツールを使って営業活動を管理していた。重点顧客の抽出についても、各営業担当者の経験が基になっていた。同社の経営陣はその状況に課題を感じており、営業・販売力の底上げを狙った事業計画を立てていた。
岡田氏は、こうした日産東京販売ホールディングスの経営陣の要望に応えるツールとして、ビジネスインテリジェンス(BI)がうってつけではないかと考えた。かつて東京日産自動車販売の営業スタッフだったこともある同氏は、「お預かりしているグループ販社のお客さまデータをうまく使えば、効率的な営業に生かせるはず」だと判断。その手段として白羽の矢を立てたのがBIだった。同氏はBIのプロトタイプを「IBM Cognos」で構築し、経営陣に提案した。
IBM Cognosは、財務パフォーマンス分析、戦略管理などで使われることが多い定番のBIツールだ。しかしグループ販社の現場で働く営業スタッフからのプロトタイプに対する反応は「それほど良くなかった」と岡田氏は振り返る。「『グラフ化できるのは便利そうだけど、ここで得られた情報をどう活用すればいいのか分からない』というのが、現場の営業からの意見でした」(同氏)
現場の営業スタッフの意見は「レポートを見ただけでは、次にどんなアクションを取ればよいのかすぐ判断するのが難しい」ということだ。紙ベースの表やグラフに見慣れていて、BIツールのレポート形式に戸惑いを感じていたのかもしれない。岡田氏は、この現場に必要なのはBIツールではなく、次の営業アクションを指示する「予測分析ツール」だと考えた。
“モノ売りからコト売りのシフト”で予測分析に注力
TCSは1982年に東京日産自動車販売のコンピュータ事業部として創業し、1989年に分社独立して日本アイ・ビー・エムの特約店として事業を開始している。年商65億3000万円(2016年3月実績)、従業員数141人(2016年3月末現在)の中堅規模のITベンダーだ。さまざまな業種・業界向けに業務システムを提供しているが、中でも自動車業界向けの製品、サービスに強みを持ち、電子商取引(EDI)関連システムや、部品サプライヤー向けの在庫適正化システムなどを手掛けてきた。
TCSの中心的な業務は、ハウジング、ホスティングを含めたクラウドサービスをグループ会社に提供するというものであった。2012年ごろ、ビッグデータのビジネス活用が社会的に注目を集め始め、TCSの経営計画の中でもデータセンタービジネスからクラウドやビッグデータといった“モノ売りからコト売りへのシフト”が立ち上がっていた。そこで、データセンターとして顧客のデータを預かるだけでなく、まずはグループ販社にデータを役立ててもらえるサービスを立ち上げよう――このような思いが予測分析システムとサービス構築のきっかけとなった。
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