事例で分かる、中堅・中小企業のセキュリティ対策【第6回】
被害者が加害者になるケースもあるWebサイト改ざん、有効な対策は?(1/2 ページ)
広報や通販などへのWebサイト活用は一般的になったが、セキュリティ対策は万全だろうか。Webサイトの更新や管理に広く利用されるCMS(コンテンツマネジメントシステム)の意外な落とし穴と、お勧めの対策を解説する。
連載について
情報セキュリティ対策をしたくても、ITに詳しい人が社内外にいなくて困っている中堅・中小企業は多いのではないでしょうか。「知識不足」と「ヒト、モノ、カネ不足」の問題が目の前にあっても、対策は待ったなしの状況。予算を握る上司を説得するために、サイバー攻撃の事例を紹介しながら、その効果的な対策につながる情報セキュリティ製品を分かりやすく解説します。
Webサイトの改ざんやサイト経由での個人情報漏えい事件は後を絶ちません。実際にどれだけ被害があるかを簡単に確認する方法があります。検索エンジンを使って「改ざん おわび」といったキーワードで検索してみてください。有名企業や業界団体、学術機関から中小企業などの“おわびサイト”が多数ヒットするでしょう。
インターネットの世界は既に、「仮想のバーチャル空間」ではなく「リアルな現実空間」と同等になりました。Webサイトで自社をアピールし、集客し、商品を販売し、採用まで実施することができます。クレジットカードで決済を済ませ、数日後に注文したものが届きます。スマートフォンを使っていれば、毎日のようにインターネットの情報記事に触れ、検索をして、知りたい情報を入手できます。一昔前には考えられなかったほど、インターネットはわれわれの社会生活に浸透しています。
しかし、セキュリティ対策が甘いWebサイトやセキュリティに無知なインターネット利用者は、いまだに少なからず存在しています。インターネットは人類史上まれに見る発明であり、急速に発展してきました。一方で、利用者であるわれわれが変化のスピード(特にセキュリティ面において)に付いていけていないのが実情です。
特に日本人は「インターネットは、さほど危険ではない」という思い込みから抜け出せておらず、「自分は被害に遭わない」と思い込んでいる人が少なくありません。セキュリティ対策に甘い日本は、世界中の攻撃者から格好のターゲットとなっています。
Webサイトに適切なセキュリティ対策を施していないとどうなるのか、事例とともに、解決策を見ていきましょう。
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中堅・中小企業のセキュリティ対策の課題
事例:自社のWebサイトが改ざんされて、顧客情報が漏えいしたかもしれない
従業員100人を超える自動車販売業。展開している自社ブランド車両のヒットにより、業績がどんどん向上している。株式上場を視野に入れ、さらなる業績向上に向けてブランディングや商品開発、営業力強化と多面的に力を入れている。リスティング広告や検索エンジン最適化(SEO)にも力を入れており、その結果として車両購入に関するWebサイトからの問い合わせも50件/月に増加。まだまだ業績が伸びそうだ。
順風満帆だったある日、自社の営業スタッフから「わが社のWebサイトがおかしい」とシステム責任者宛てに連絡が入った。Webサイトを見てみると明らかに日本語ではない文字が並んでいた。即座にWebサイトが改ざんされてしまったと理解した。Webサイトの構築には、分かりやすく使えて簡単に更新や管理ができるCMS(コンテンツマネジメントシステム)の1つである「WordPress」を使っていた。
改ざんが発覚してすぐにWebサイトを停止。改ざんの原因と対策のための調査と復旧をセキュリティ会社に依頼した。セキュリティ会社によると、WordPressの脆弱(ぜいじゃく)性を突いた攻撃が仕掛けられたようだった。そこで、メインWebサイトは閉鎖した。
原因を究明し、対策を打つために1カ月を要した。前述の通り、以前は月に50件以上、車両購入に関するWebサイト経由での問い合わせが発生していたが、被害に遭遇した月はもちろんゼロ。翌月以降の営業実績にもマイナスの影響を及ぼした。セキュリティ会社によると、問い合わせをしてきた顧客情報が漏えいしている可能性があるが、アクセス履歴が消去されているためどれだけの被害に遭遇したのかは分からない、とのことだった。
攻撃者が狙うWebサイトとは
この事例のようなケースはWebサイトを保有する全ての企業で起こる可能性があります。常に攻撃者からの脅威にさらされている、という事実を認識しなくてはいけません。攻撃者は例えば以下のような特徴を持つWebサイトに攻撃を仕掛けます。
- 広告出稿やSEO対策をしており、露出頻度が高いWebサイト
- コンテンツの更新頻度が高いWebサイト
- いまだにセキュリティ被害が明るみに出ていないWebサイト
1. 広告出稿やSEO対策をしており、露出頻度が高いWebサイト
クリック課金広告サービスの「Google AdWords」の広告やバナー広告、動画広告、アフィリエイトプログラムなどに積極的に登録しているWebサイト、または「Google」「Yahoo! JAPAN」などの検索エンジンで上位に表示される露出頻度が高いWebサイトは、インターネット利用者の目に止まりやすい半面、攻撃者からも狙われやすいのです。なぜなら攻撃者は、Webサイトに積極的に投資している会社を「価値のある情報資産を持つ可能性の高い会社(Webサイト)」だと認識するからです。特にアクセス数が多いWebサイトであれば、自分たちの攻撃に気付かず、見逃す可能性が高いことも攻撃者は認識しています。このようなWebサイトは個人情報や重要情報などを保有している可能性が高く、攻撃が成功した場合は、有益な情報を効率的に収集できます。
2. コンテンツの更新頻度が高いWebサイト
Webサイトのマーケティングを積極的に実施している会社なら、自社サイトをGoogleやYahoo! JAPANの自然検索(広告を含まない検索結果)で上位表示させたいと思っていることでしょう。そのための取り組みの1つとして「コンテンツの更新頻度を高める」という方法があります。(1)でも述べましたが、人目に止まりやすい、露出頻度の高いWebサイトであればあるほど、攻撃者の格好の餌食になる可能性が高まります。閲覧者が多く集まる可能性があるWebサイトには、それだけ有益な情報が蓄積されている、と攻撃者は認識するためです。
Webサイトの更新頻度が高いということは、簡単に更新や管理をしている可能性が高くなるため、WordPressに代表されるようなCMSを利用している可能性が高いと攻撃者は認識します。実はCMSは、攻撃者にとっても都合の良いシステムなのです。CMSやプラグインには頻繁に脆弱性が見つかっています。最新バージョンへの更新を怠り、こうした脆弱性を放置していると、攻撃者にとっては簡単に攻撃が成功してしまいます。脆弱性が残っていることを知らずに古いCMSやプラグインを使い続けているWebサイトはゴロゴロと転がっており、攻撃者のターゲットになりやすいのです。
脆弱性を残したままのWebサイトが攻撃者に改ざんされ、ウイルスが貼り付けられてしまい、結果として閲覧者にウイルスをばらまいてしまうケースも起こっています。これがGoogleなどの検索エンジンのクローラーに引っ掛かってしまうと、そのWebサイトが表示すらされなくなってしまうケースも考えられます。検索しても表示されないということは、Webサイトそのものがインターネットに存在していないのとほとんど同じです。通販サイト事業者など、Webサイトを主戦場としてビジネス展開をしている場合は、突如として倒産リスクが生じることになり、注意が必要です。
3. いまだにセキュリティ被害が明るみに出ていないWebサイト
「うちはセキュリティ被害に遭っていないから安心」と思っている方は、今すぐに認識を改めなくてはいけません。攻撃者にとって、いまだにセキュリティ被害が明るみに出ていないWebサイトは、まだ流出していない“新鮮”な情報を保有している可能性が高く、その分攻撃する価値が高いためです。世の中に出回っていない情報資産には高い価値があるため、ブラックマーケットで高値で売買できることを攻撃者は知っています。高値売買の秘策は、新鮮な情報であるか否か、ということです。既に情報流出してしまったデータの場合、その価値は新鮮な情報と比べて相対的に低くなります。
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