人工知能、セキュリティ、ブロックチェーンなど
医療IT担当者が2017年に注目する“6つのITトレンド”
医療業界における2016年のITトレンドは、サイバーセキュリティとブロックチェーンに多くの注目が集まった。医療機関のIT管理者は2017年も引き続きこの2つのトレンドから目を離すことはできないだろう。
2017年、医療機関のIT管理者は、既存の価値を破壊する新しいテクノロジーを取り入れ、試すようになるだろう。IT管理者が医療ITの新しいトレンドに上手く順応すれば、その結果として医療の質が改善され、効率化が進み、データ保護が強化される。本稿では、医療機関のIT管理者が2017年に注目すべき6つのITトレンドとテクノロジーを取り上げる。
人工知能の進歩
人工知能(AI)は飛躍的な進歩を遂げている。例えば、IBMの「Watson」は、がんの診断を支援している。また、Babylon HealthはAIを使ったアプリを通じて患者とやりとりし、患者の症状に関するデータを集めている。このような進歩により、IT管理者は自分たちの病院にAIの導入を進めることが可能かどうかを検討するようになっている。導入に関する手段は、よりスマートなアプリやサービスの採用だ。これは患者が利用できるAIを組み込んだモバイルアプリという形を取る場合もあれば、特定の高度な分析や予測タスクを実行できる機械学習の形を取る場合もある。
サイバーセキュリティと次世代の保護ツール
2016年に医療業界が見舞われたセキュリティの脅威によって、サイバー攻撃がより大胆で高度なものになっていることが明らかになった。こうした攻撃ではウイルスの特徴が頻繁に変化するため、多くの攻撃は、大半のウイルス対策製品では検出されない可能性がある。マルウェア、身代金要求型マルウェア(ランサムウェア)、データ漏えいの対策では、ずっと先まで見越した非常に高度な保護システムが必要になる。そのため、機械学習、挙動検出、ブラウザ保護、URLデトネーション(危険なURLを識別する機能)を活用して疑わしいアクティビティやコンテンツを適切に分類し、ブロックできるセキュリティ製品やサービスへの関心が多くの病院で高まっている。こうした製品やサービスを導入することにより、病院はリスクを軽減し、組織のセキュリティとデータ保護を強化できる可能性がある。
医療用bot
2016年には複数の「bot」(注1)が企業で使用された。例えば、Taco BellやMicrosoftが実験的にbotを採用している。AIが進歩していることもあって、botを本格稼働して、医療機関で活躍する可能性が示されている。つまり、2017年には病院が院内へのbot導入を押し進める可能性が高いと考えられる。予約のスケジュール管理や患者教育などのタスクを支援する目的や、病院の案内役として、さらには患者の基本的なデータや症状を記録する臨床アシスタントとして導入される。
注1 ボット。チャットボットとも。WebサイトやSMS(ショートメッセージサービス)などの手段を通じてテキストでエンドユーザーと通信し、ユーザーにサービスを提供できるインテリジェンスシステムのこと。
クラウドサービスの需要増加
これまでのクラウドサービスと比較して、本稿執筆時点で利用できるクラウドサービスは成熟度が増し、信頼性と安全性も向上している。また、医療、生活、科学に関する各種法令にも準拠するようになっている。病院は今後もハイブリッド環境への移行を目指すことになるだろう。これまでに投資してきた既存インフラを活用しながら、一部のワークロードをクラウドに移行してメンテナンスとサポートのコストを削減することで、オンプレミスとクラウドの両方の長所を生かすことができる。医療情報部門は、SaaS(Software as a Service)モデルで提供されるコラボレーションツールや、セキュリティ、医療アプリを中心とした人気クラウドサービスの管理業務をこれからも続けることになるだろう。
モノのインターネット(IoT)
患者が使用するインターネット接続型デバイスやウェアラブルデバイスは増加している。こうした状況が、これまでセキュリティの懸念からモノのインターネット(IoT)の採用を控えていた病院のIoT採用を後押ししている。IoTは多くのユースケースで付加価値を提供することが示されている。例えば、患者をリモートで監視できる医療機器を在宅医療環境で使用したり、IoTを使用して病院にスマートベッドを用意したり、といったことだ。スマートベッドは自動的に調整され、患者の動きを継続的に観察できる。どのデバイスを最優先で検討するかは病院によって見解が異なる可能性はある。ただし、多くの病院では既に何らかのインターネット接続型スマートデバイスが採用されている。IoTを導入すれば、テクノロジーのコストが削減し、リアルタイムでデータを記録できるようになり、患者の監視機能が実現する。
医療現場でのブロックチェーン
ブロックチェーンは2016年に話題を集めたテクノロジーである。だが、このテクノロジー自体は2009年から利用されており、デジタル通貨「ビットコイン」の取引で基礎を成す要素の1つになっている。ブロックチェーンテクノロジーは医療現場で多くの注目を集めており、国家医療IT調整室(Office of the National Coordinator of Health Information Technology)からのサポートも受けている。その理由はブロックチェーンテクノロジーが、医療業界が直面している複数の重要課題を解決できる可能性を秘めているためだ。ブロックチェーンテクノロジーを使用して電子医療データの管理と転送ができるようになれば、セキュリティ、相互運用性、普遍的な共有インフラ、世界規格が実現できるようになるのではないだろうか。医療現場ではまだ黎明(れいめい)期にあるが、ブロックチェーンは2017年にIT管理者が注目することになるITトレンドの1つだ。
テクノロジーの展望は絶えず変化しており、医療現場でも継続的に革新がもたらされている。このような状況の中で、適切な医療ITトレンドとテクノロジーを確実に採用することが自分たちの役割だとIT管理者は認識している。だが医療機関のIT管理者は、患者の健康を危険にさらす未熟なテクノロジーを早期採用するという危険を冒さぬよう注意しなければならない。セキュリティへの懸念や、現在見通しがつかない政治情勢に関する懸念の高まりは、2017年に真っ先に採用されるITトレンドとテクノロジーにも影響を及ぼすだろう。
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