フィリップスはブロックチェーンの開発研究所を設立
大手企業が熱い視線を注ぐ、医療分野のブロックチェーンの“光と影”(1/2 ページ)
ブロックチェーン技術が金融分野で次第に存在感を示す中、多くの医療IT開発者もその利用を考えている。医療分野のブロックチェーン技術は、理論的構想の段階をとうに過ぎ、ビジネスになるという期待を集めている。
最近、医療IT全米調整官室(ONC)が、開発者や医療IT識者に医療分野におけるブロックチェーンの使用法を考案するよう促したとき、当局はその回答の力強い可能性に驚いていた。
ブロックチェーンベースの暗号通貨である「ビットコイン」は賛否両論を呼ぶ世界的な現象になっている。だが、医療分野でのブロックチェーンに関する考察は理論的な段階を過ぎ、大手企業やベンチャー投資会社から後押しがあるほどに成長していることは、あまり知られていない事実だろう。
家電や医療機器の大手ベンダーであるPhilipsは、ブロックチェーンの開発研究所を設立し、ブロックチェーンベンダーのGemが主導する新しい医療分野ブロックチェーンネットワークに参加している。また、会計関連のサービスとコンサルティングサービスを提供するDeloitteは、医療分野ブロックチェーンについて楽観的なレポートを幾つか発表し、複数のブロックチェーン新興企業とパートナーシップを結んでいる。
本質的に、ブロックチェーンは公的な分散型台帳で、ブロックチェーン技術の支持者からは「ほぼ侵入不可能な暗号化チェーン」と表されている。支持者によれば、医療ITが抱える解決困難な問題のほとんどをブロックチェーン自体が解決できるという。具体的には、相互運用性の不足、医療記録の整合性、完全性、プライバシーの確保などだ。
ONCの医療分野ブロックチェーン推進活動に最近提出されたレポートの共著者であり、米国コネチカット州の医療保険取引所でIT部門の主任を務めていたピーター・ニコル氏は次のように語る。「非常に明快なブロックチェーンのユースケースの1つは、データ操作が行われた時間や、操作の流れが途絶した時間を特定できることだ」
関心を集める今と今後予想される混乱
医療分野のブロックチェーンが強い関心を集めているもう1つの証拠がある。2016年の夏の盛りに、わずか数週間という提出期限にもかかわらず、ONCは70件を超えるブロックチェーンに関するユースケースの詳細な概念化案を受け取っていた。
医療分野におけるブロックチェーンの支持者は、ブロックチェーンが「すぐにとはいかないが数年以内には、クラウドやEHR(電子カルテ)と並ぶ破壊力を持つテクノロジーになる可能性を秘めている」という主張を一貫して続けている。
現在はPA Consulting Groupで医療専門家として働くニコル氏は次のように予想している。「2019年までの短期間で、事態はゆっくりと動くだろう。2016~2020年の間も、さらに期待が膨らむのは確実だ。その後は、製品やソフトウェアによって消費者が購入できる領域に参入し、ブロックチェーンテクノロジーは普及するだろう」
医療IT開発者であるジェフ・ブラント氏とニコル氏が共著した10ページの論文では、医療分野のブロックチェーンが「革命的で従来の医療ITシステムに破壊的な影響を与える不可避のテクノロジー」だと記していた。
このONCに提出した論文で、両氏は次のように主張している。「ブロックチェーンの応用法は非常に幅広い。応用法の1つとして、2016年までの20年間で約300億ドルあったと予想されるメディケア詐欺の抑止が挙げられる。ブロックチェーンなどのオープンな台帳テクノロジーは、トランザクションの完全な追跡記録を提供し、薬の処方、請求、患者のIDを悪用するセキュリティ侵害に関係する詐欺を抑止したり排除したりすることで、詐欺による損失を減少させることができる」
さらにTechTargetのインタビューで、ブラント氏は次のように話している。「ブロックチェーンの上には何も存在しないため、そこにハッキングを仕掛けるのは非常に困難だ。チェーンの上には、記録の場所を示す参照ポインタが格納されているにすぎない」
ブロックチェーンのノード上に存在する参照ポインタは、“ハッシュ”と呼ばれる。個人や組織は、閲覧する権限のある記録のロックを解除するキーを保持している。また、チェーン内のデータに対する全ての変更は、チェーン上にいる全員の総意によって許可される必要がある。
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